◆巨人8―2中日(5日・東京ドーム)

 通算2000安打が迫る巨人・阿部が3回、中日を突き放す13号右越え3ランを放ち、偉業達成まで、あと6本とした。チームのアーチ攻勢も止まらない。2回に長野、4回に陽岱鋼が放って、プロ野球新記録となる6試合連続3本塁打以上を達成した。エース菅野は今季自己最多となる12三振を奪ってリーグトップの12勝目を挙げた。上位追撃へ、巨人よ、打ちまくれ!

 雰囲気を楽しむかのように、慎之助はすっ飛んだボールを最後まで見届けた。右翼席のカウントダウンを告げる“阿部メーター”に向かって、大きな放物線を描いた。通算1994安打目は、全盛期をほうふつとさせる豪快な一撃だった。「1打席目(中飛)『少し力み過ぎたなあ』と思ったんです。軽打に徹したのが良い結果につながったと思います」。バットを一握り短く持ち、頭の中で「コンパクトに〜」と唱え、38歳のおじさんがパワーを見せつけた。

 試合を決定づける一撃は3回に出た。坂本勇の左翼線二塁打で勝ち越し、なおも1死二、三塁。小笠原の低め138キロを引っぱたいた。3試合ぶりの13号3ランは、菅野には十分すぎるプレゼントになった。4回に陽岱鋼がチーム3発目を放ち、6試合連続3本塁打以上のプロ野球新記録を達成。4番が打ち、エースが抑え、新記録まで樹立した快勝劇に、由伸監督も「前半戦からは信じられないような形になっているね」と苦笑いするほどだった。

 大記録目前の阿部を見ようと、各地から知人や友人が東京Dまで足を運んでいる。慎之助は「何か、本当にすごいことをやろうとしているんだな」と実感が湧いてきたという。周囲の期待は自然と重圧になり、口数も減ってきた。そんな中、父・東司さんに「このプレッシャーとしっかり闘ってきます」とLINEした。

 すると「2000安打は一度しかない。闘うんじゃなくて楽しむもんだろ」と返ってきた。自分のことを一番知っている厳しい父からの「楽しめ」という思いがけない一言。「一生に一度だからな」と心を改め、場内の異様な雰囲気や同僚からの期待も全て受け止めることにした。これが精神面の“後押し”となった。8月は計20打数9安打、打率4割5分と絶好調だ。

 もう一人。安田学園高時代のチームメートで、常にサポート役として一緒に行動する岩館善広氏の存在も大きい。毎打席ごとの動画を携帯電話で撮って、阿部に送る。岩館氏の「打っても打たなくても、フォームチェックの足しにしてくれればと思って…」という気遣いからで、阿部も「記録を達成したら、真っ先に報告したい」と感謝する。プロ入り時から二人三脚でスター街道を駆け上がり、今、その集大成にいる。

 偉業達成はもうすぐだ。由伸監督は「やっぱり、ファンのみなさんの期待で球場中の雰囲気は変わっているし、みんなもつられて乗っているところはあるね」と相乗効果に感謝した。慎之助も「引っ張って、勝ち続けた中で2000本を打ちたいね」と欲も出てきた。YGマークのユニホームに袖を通した時からの、夢へ。さあ、本当のカウントダウンが始まる。(水井 基博)