18年平昌五輪の開幕まで9日であと半年。フリースタイルスキー・ハーフパイプ女子で17年世界選手権代表の渡部(旧姓・山崎)由梨恵(28)=白馬ク=は、14年に結婚したノルディックスキー・複合男子の渡部暁斗(29)=北野建設=と夫婦で躍進を誓った。

 最高の戦友と、最高の舞台を楽しむ。由梨恵は夫・暁斗に「一番の応援団。一番背中を押してくれているのは彼だと思います」と感謝している。昨季の実績などから初出場が濃厚な平昌は、夫婦で活躍を思い描く大会でもある。「今できることをしっかり出せば(五輪で)決勝(現行ルールでは上位6人)には行ける。とにかく決勝に上がらないと話にならないので」。都内などの拠点で自らを追い込む日々だ。

 早大まではアルペンスキーに打ち込み、11年4月の卒業後から本格的にハーフパイプに転向した。同年に14年ソチ五輪からの正式種目入りが決まり、目標は定まった。冬季は群馬・尾瀬を拠点とし、夏季は東京で体づくりをしながら派遣などのアルバイトも両立させていた。「販売とか接客業とかいろいろやりました」。ソチ五輪は右膝靱帯(じんたい)損傷で出場できず、先輩の小野塚彩那(29)=石打丸山ク=が銅メダルに輝く姿を「正式種目になったばかりのタイミングでメダルを取るのは、本当にすごいな」と見ていた。

 ちょうどその頃、自身の人生も大きな転機を迎えた。ソチで銀メダルに輝いた暁斗からプロポーズされた。2人は早大スキー部の同級生。「(暁斗は)一言で言えば自由な人。適当なように見えて、しっかり考えているのがすごい」。たわいもない話をしたかと思えば、ブレない信念や芯の強さをのぞかせる姿にひかれて、大学3年時から交際を続けていた。一番身近に五輪銀メダリストがいる生活は「メリットはすごくある。自分に必要なものを瞬時に察知する力があるし、切り替えが早い。ダメなら次、というか。自分もやり方を変える勇気が持てます」。

 一見、競技に関係なさそうなものでも練習に取り入れる夫に刺激され、ボルダリングをメニューに加えた。「やってみると力だけでは登れなくて。体の連動や使い方が大事だな、と気づかされた」。結婚後は17年世界選手権(スペイン)で10位に入った。暁斗も妻に対して「妥協が苦手で、決めたことはとことんやるから無理をしている場面も多い。ただ、階段を1段ずつ踏みしめて上るように、着実に成長して一心に目標へ向かう姿から気づかされることもある」と刺激を受けている。

 もちろん苦労もある。種目が違うため互いの遠征日程はバラバラ。長野市内の自宅で一緒に過ごすのは、少ない年では年間30〜40日ほどだ。「だからこそ、なるべくリズムを崩さないように気をつけています。会っていない時と、同じようにトレーニングできた方が良いから」と由梨恵。たまに会えた時くらい、2人で買い物にも行きたい…。でもそんな気持ちは、グッとこらえる。食事は自分の分を自分で作るのがルール。それでも冷蔵庫には、休日にまとめて作った常備菜を入れて、できるだけ夫に手料理を食べてもらう工夫をしている。サツマイモの甘露煮、ニンジンとレーズンの酢の物。五輪を控えた現在の生活リズムの中で、最善の形を模索してきた。

 「(22年)北京はないですね」。29歳で迎える平昌が、五輪の集大成だと決めている。「悔いを残さないために、ソチで辞めなかった。悶々(もんもん)としたままでは、全力で素直に(暁斗を)支えられなかったかもしれないから」。最初で最後の五輪で、競技人生を完全燃焼させるつもりだ。自身初の金メダルに挑む暁斗も「妻がスキーに取り組む姿を見て、自分の親のことを思うようになった。自分が社会人になるまでの十数年、どんな気持ちで私を見ていたのだろうと。今、同じような気持ちで、妻が目標へ向かう姿を眺めている」と優しく見守っている。夫婦であり、親子のようでもある。互いを尊敬し高め合う渡部夫妻に、勝利の女神はきっとほほ笑むはずだ。(細野 友司)

 ◆夫婦での五輪同時出場  ▼冬季 10年バンクーバー大会の皆川賢太郎はアルペンスキー男子回転に出場(途中棄権)、妻の上村愛子はモーグル女子で4位入賞。64年インスブルック大会スピードスケートの長久保文雄・初枝夫妻、02年ソルトレークシティー大会バイアスロンの菅恭司・弘美夫妻が知られる。  ▼夏季 夫婦で同一競技に出場し、ともにメダルを獲得した64年東京五輪体操の小野喬(団体金)・清子(団体銅)夫妻が有名。04年アテネ大会では柔道女子の谷亮子が金メダル、夫の佳知が野球で銅メダル。  ▼世界では 02年ソルトレークシティー大会バイアスロンに出場したポワレ夫妻は、異なる国の代表で出場し、ともにメダルを手にした。ノルウェー代表の妻、リブ・グレテは15キロで銀、フランス代表の夫・ラファエルも12・5キロ追い抜きで銀。

 ◆フリースタイルスキー・ハーフパイプ 14年ソチ五輪から正式種目入り。円筒形のパイプを半分に切ったようなU字形の斜面を滑り、左右の壁からパイプの上に飛び出した際に空中で繰り出す演技の難度や出来栄えを採点して競う。スノーボードにもハーフパイプ種目があり、98年長野五輪から正式種目に入っている。

 ◆ノルディックスキー複合の展望 代表選考基準は右下イラストの通り。17年世界選手権銀メダリストの渡部暁は、これまでの成績から代表選出が確実な状況。個人ノーマルヒル、同ラージヒル、団体の3種目での金メダルが目標だ。ルゼック、フレンツェルらドイツ勢がライバルとなる。

 ◆フリースタイルスキー・ハーフパイプの展望 代表選考基準は複合と同じ。渡部由は16―17年季にW杯で8位を1度マーク。17年世界選手権でも日本勢では金メダルの小野塚彩那に次ぐ10位に入ったため、選出が濃厚だ。メダル争いは世界選手権女王の小野塚のほか、14年ソチ五輪金メダルのボーマンら米国勢、ソチと17年世界選手権でともに銀メダルのマルティノ(フランス)らが有力。