18年平昌五輪の開幕まで9日であと半年。2枠を争う女子フィギュアスケートは昨季四大陸選手権金メダルの三原舞依(17)=神戸ポートアイランドク=と、世界ジュニア3位で今季からシニアに転向する坂本花織(17)=神戸ク=の親友コンビが初の五輪を目指す。

 1つだけ年の離れた2人は、初めて会った時の印象を鮮明に記憶している。スケートを先に始めたのは坂本だった。

 三原「初めてリンクに行った時に、めっちゃ回っていた子がいて。その子を見て『私もできるようになりたいな』って思った。その子がかおちゃん(坂本)だった」

 坂本「私が小1の時に舞依ちゃんが入ってきて。その時はまだ勝っていたんですけど…。舞依ちゃんの伸びが早すぎて。あっという間に超されました」

 坂本は3歳の時にNHK連続テレビ小説「てるてる家族」を見てスケートに憧れ、4歳でスケート靴を履いた。三原は小学2年生の時に浅田真央の滑りに心を動かされたことがきっかけだった。中野園子コーチのもとで切磋琢磨(せっさたくま)し、友人として励まし合ってきた。三原の力みのない美しいジャンプ。坂本のダイナミックな高さと幅のあるジャンプ。個性が異なるスケーターに成長した。

 神戸市内に住む三原と坂本は、夏の間は西宮のリンクへ通っている。週に5日、朝練がある日は三原は午前3時40分、坂本は3時50分に起床する。2時間ほど滑り高校へ。放課後はリンクに戻り、午後6時まで中野コーチの指導を受ける。多忙な日々にも「やめたいと思ったことはない」と声をそろえる。スケートが好き。そして大好きな友人がいるから頑張れる。

 昨季世界ジュニアで3位に入った坂本のもとに、すぐに三原から「おめでとう!」とLINEが届いた。2週後の世界選手権。三原はショートプログラム15位と出遅れながらフリーで盛り返し5位に。「君はよくやった!」。今度は坂本からだ。最近もオフには一緒に映画を見に行った。

 三原「本当にかけがえのない存在。ずっと一緒にいるので発言とかも一緒で。ずーっと隣にいてほしい。一番落ち着きます」

 平昌五輪の今季は、共にこれまでのイメージとは異なるプログラムに挑戦する。三原のSP「リベルタンゴ」、坂本のフリー「アメリ」はフランス人の振付師ブノア・リショー氏が複雑なステップを組み込んだ高難度プログラムだ。5月の米国合宿中、悩み苦しむ2人の姿があった。「私にこれができるのだろうか」。涙が頬を伝う日もあった。中野コーチの怒声が飛んだ。「泣くなら帰れ!」。歯を食いしばり、ステップを踏み続けた。

 「リベルタンゴ」で大人の女性を演じる三原には、表現力向上のための日課がある。目力をつけるために、毎日鏡の前の自分とにらみ合う。「鏡の中の自分がにらんでくるので、それに負けないように(笑い)」。時には歯磨きをしながら、にらみ合うことも。フリーは「ガブリエルのオーボエ」。7本のジャンプのうち基礎点が1・1倍になる後半のジャンプを昨季の4本から5本に増やした。

 今季がシニア1年目の坂本は映画「アメリ」の世界観を滑りに込める。気を抜くと太りやすい体質だが、栄養士のもと「朝は腹九分目、昼は八分目、夜が六分目」を徹底している。「非常に体力がいるプログラムだけど、彼女なら頑張って作ると思う」と中野コーチ。まずは作品としての完成度を最優先させつつ、シーズン中の3回転半ジャンプ(トリプルアクセル)の投入を目指していく。

 三原「かおちゃんがいなかったら、今の私はいないと思う。ノービス(12歳以下)の頃、かおちゃんに負けないようにと思って練習していた」

 坂本「かけがえのない存在。舞依ちゃんがいるから頑張れる。自分一人だったら、みんながどれだけ頑張っているのか分からないから」

 14年ソチ五輪では羽生結弦の金メダル、浅田真央の伝説のフリーに心は震え、五輪の舞台に憧れた。3年半で夢は目標に変わった。「一緒に行けたらうれしい」。かけがえのない存在と認め合う2人の思いは同じだ。(高木 恵)

 ◆三原 舞依(みはら・まい)1999年8月22日、兵庫県生まれ。17歳。芦屋高3年。ジュニア時代の2015年12月に若年性特発性関節炎と診断された。15―16年シーズンはジュニアGPファイナル6位。シニアに転向した昨季は初出場の四大陸選手権優勝、世界選手権5位。全日本選手権は3位。4月の国別対抗戦ではフリーで日本歴代最高得点146.17点、合計で同2位の218.27点を記録した。154センチ。

 ◆坂本 花織(さかもと・かおり)2000年4月9日、兵庫県生まれ。17歳。神戸野田高2年。15―16年シーズンは9月に右すねを疲労骨折し、10月末まで氷に上がれない時期を過ごしたが昨季に復調。ジュニアGPシリーズ日本大会で優勝し、ファイナルと世界ジュニアで3位に入った。全日本ジュニアでは白岩優奈、本田真凜を抑えて初優勝。全日本選手権は7位。特技は水泳と折り紙。158センチ。

 【展望】女子フィギュアスケートは2枠を争う大激戦。頭一つ抜けていた全日本選手権3連覇中のエース宮原が、左股関節の故障で昨季後半を棒に振った。浜田美栄コーチは「10月くらいから追い込んでいけたら」と話しており、まずは11月のGPシリーズNHK杯に照準を合わせていく。  四大陸選手権覇者の三原は安定感が光る。SPは「リベルタンゴ」。フリーは「ガブリエルのオーボエ」。曲調の異なる演目で表現力の向上をアピールする。2年連続全日本選手権2位で昨季世界選手権11位の樋口はスピードとジャンプが持ち味。シニア2年目のシーズンは「本当に崖っ縁」と巻き返しを誓う。  シニア転向1年目のルーキー勢は層が厚い。世界ジュニア2位の本田は荒川静香が金メダルに輝いた2006年トリノ五輪と同様にオペラ「トゥーランドット」をフリーで滑る。華のある滑りと、ここ一番での勝負強さは秀逸。坂本は跳び幅のある豪快なジャンプが最大の武器になる。潜在能力が高く、3回転の連続ジャンプを得意とする白岩にも期待がかかる。