◆ロンドン世界陸上 第4日(7日、英国・ロンドン競技場)

 【ロンドン7日=細野友司】男子200メートル予選で、16年リオ五輪男子400メートルリレー銀メダルの飯塚翔太(26)=ミズノ=が“大珍事”を経験した。20秒58(追い風0・7メートル)の7組4着で敗退かと思われたが、同組の1着と3着が失格となって順位が2つ繰り上がり、2大会ぶり準決勝進出。「これは初めて」と驚きを隠せなかった。サニブラウン・ハキーム(18)=東京陸協=も、20秒52(向かい風0・5メートル)の1組2着で突破した。

もう1回走りたい―歓喜 驚き過ぎて、妙な声が出た。「がっ、入ったぁ…」。取材エリアで「(リレーで)挽回しないと日本に帰れない…」と肩を落としていた飯塚の目が、突如輝いた。モニターの表示画面を見ると、名前の横に「Q」(Qualified)とあった。上位2人がレーン逸脱のため失格。2つ繰り上がり、7組2着で準決勝進出だ。「これは初めて。運があるのかなと思う。もう1回走りたいと思っていたので」と喜びをかみしめた。

 16年リオ五輪400メートルリレーで第2走者を務め、銀メダルに貢献。一方、個人種目は日本歴代2位の20秒11の持ちタイムがありながら、20秒49の3組4着で予選落ち。栄光と挫折を同時に味わった。何かが足りない。今季は自己記録10秒08を出した6月の布勢スプリントなど、本職外の100メートルにも積極参戦。150メートルまでの加速力を磨こうと、もがいてきた。「リオより手応えがある。結果に出ていないけど、シーズンベストは少なくとも出せて、20秒3台が出るような感覚だった」。あともう1本走れれば、結果が出せるのに―。飯塚の念が、天に通じた。

 日頃から礼儀正しい飯塚は、遠征先で習慣にしていることがある。「僕、いつもトイレを磨くんですよ」。毎年、数か国を転戦。その土地に感謝を込めつつ、次の人が気持ち良く使えるように便座を拭き上げてから個室を後にするのが流儀だ。この日レース前も、会場併設のサブトラック付近にあるトイレを磨いて臨んだ。「いつも(トイレに行くのが)1回だけど、今日は珍しく2回磨きましたね」。“トイレの神様”が運をつけてくれたのかもしれない。

 過去、日本勢の200メートル決勝進出は03年パリ大会銅の末続慎吾(37)の1例のみ。飯塚が前回出場した13年モスクワ大会は、20秒61の2組7着で壁にはね返された。今大会予選の全体8位は20秒26で、自身の今季最高記録(20秒40)から一段の底上げが求められる。“和製ボルト”と呼ばれて将来を嘱望されてきた大器は「課題をクリアできれば、チャンスはある」。運は味方につけた。あとは、完全燃焼するだけだ。

甲子園出場藤枝明誠卒 ◆飯塚 翔太(いいづか・しょうた)1991年6月25日、静岡・御前崎市生まれ。26歳。小学3年から競技を始める。藤枝明誠高3年時の09年に高校総体200メートル優勝。10年世界ジュニア選手権200メートルで、男子日本勢初優勝し“和製ボルト”の異名をとる。12年ロンドン五輪代表。14年ミズノ入社。16年リオ五輪男子400メートルリレー銀メダル。186センチ、80キロ。