私事で恐縮だが、先日、小学4年生の長男の囲碁大会に同行した。学生時代からサッカーに励んできた自分とは、全く畑違いの習い事。さぞかしおとなしい子どもたちが集まるのかな、と思っていたら想像とは違っていた。

 相手を敬う気持ちを見せながらも、勝った子は白い歯を見せている。一方で放心状態になって、悔しがる敗者。そして、母親の胸に飛び込み、泣きじゃくっている女の子もいた。どうやら我が息子は、トイレでこっそり泣く派のようだ。

 「でも、悔しいと思う気持ちが何よりも大事なんです。やっぱり泣いている子ほど強くなるんですよ。これはスポーツと同じかもしれませんね」とプロ棋士の先生が教えてくれた。

 取材する上でも、忘れられない涙がある。10年8月21日の伝統の一戦(東京D)。阪神のドラフト4位ルーキーだった秋山は、初登板先発の舞台で勝利投手の権利を手にしていた。だが6回に逆転を許し、敗戦投手に。試合中にもかかわらず、降板後に三塁ベンチで泣き出した時には驚かされた。

 当時の巨人は小笠原、ラミレス、阿部、坂本…。超強力打線だった。堂々と渡り合ったにもかかわらず涙を流したのは、ある意味、自信のある証拠。この後、シーズン終盤だけで4勝を挙げた時には、ハートの強さを思い知らされた。

 だが、その後は6年間でわずか2勝。体つきは大きくなり迫力は増したが、結果が出ない日々が続いた。何より青年から大人になった秋山は、良くも悪くも落ち着き始めていた。喜怒哀楽を出さない選手になったと思っていたが、本質は変わっていなかったようだ。

 秋山が中日を相手に7回無失点の好投を見せた翌日の7月29日。ナゴヤドームで中日・荒木に呼び止められた。

 「昨日の秋山は、調子はあまり良くなかったと思う。甘い球も来たし。でも、気持ちが強いし、マウンドから押し込まれるんだよね。ああいう姿勢をうちの若い投手も見習って欲しいよ」

 この言葉を秋山に伝えた。今季2000安打を達成したライバルチームの先輩の賛辞に、秋山も力強くうなずいた。

 「やっぱり気持ちって大事だと思うんです。それで捉えられたと思った球が空振りになったり、ファウルになったりするんです」

 苦労を重ねた末に、今季はここまで9勝を挙げ、エース級の働きを見せている。もちろん人前で泣くことはなくなった。だが、秋山の体内には18歳の時と同じような熱い血が流れているのだ。(記者コラム・表 洋介)