水泳の飛び込みで、美女アスリートとして注目される馬淵優佳(22)=JSS宝塚=は、2011年の世界選手権に出場するなど、実力もワールドクラスだ。今年5月24日に、競泳のリオ五輪男子400メートル個人メドレー銅メダリストの瀬戸大也(だいや、23)と結婚。今月下旬には初めて夫婦そろって出場する大会・ユニバーシアード(台北)を控え、「メダル獲得」を目標に掲げる。競技にかける思いとともに、素顔にも迫った。

 飛び込み―。国内ではまだまだ、“自分でやる競技”として接する機会は多くないかもしれない。馬淵の場合も始めるにあたっては、やはり日本代表コーチも務める父・崇英氏の影響が大きかった。

 「父が指導者なので、3歳の頃からプールにいました。“きっかけ”とか特になくて、物心ついたときから生活の一部でした」

 板飛び込みの種目では、高さ1〜3メートルの板から跳ね上がって、プールに飛び込む。恐怖心との闘い。新しい技で初めて飛び込む時は、常に憂鬱(ゆううつ)だったという。

 「失敗するとすごく痛くて、(体が)アザだらけになる。新しい技をやると、まだ感覚もなくて『今、何回転していて、どこに伸ばせば上手に(水に)入れるか』っていうのが全然分からなくて、本当に怖い。板の上で(踏み切れずに)粘る子もいます。私ですか? コーチに怒られるし、練習時間が長くなるので、スッと飛ぶしかないです(笑い)」

 同じ「見せる競技」として、バレエは幼稚園、体操も小学校低学年から習った。

 「バレエはしなやかさとかすごく大事で、ガチガチより滑らかな動きをすることが(飛び込みと)共通している。体操は空中での回転が似ています。忙しくて1年ちょっとでやめてしまいましたが、鉄棒の前回りは結構、延々とできたりします」

 長時間に及ぶ厳しい指導、休みなしの毎日…。やめたい気持ちとの葛藤が続いたが、中学3年生の時、国際大会でメダルを獲得。努力が喜びに変わった。

 「中3の東アジア大会で銅メダルを取って、やっとこれまでの練習が成果として出てきた。そこから少しずつ良くなってきた感じです。小さい頃から、誰よりも(練習を)やってきた自信はある。それがやっぱり、心の落ち着きというか、精神面の安定につながりました。この先、競技から離れて、つらいことがあっても、全然、乗り越えられそうな気がします」

 食べたい時期の体重管理も、つらかったことの一つ。たった何グラムかの体重変化が演技の完成度を左右するとまでいわれる世界にいながら、大好物は甘いもの。ひたすら我慢の日々だった。

 「300グラムでも増えたら、練習で怒られます。例えば、500グラム増えると、回る時のスピードがちょっと違う。落ちる速度に対しての回るスピードが遅いとか。回っていると自分の今の体重も分かります。甘いものも我慢してました。(好きなものは)アイス、ケーキ…。太るものばっかり」

 努力や我慢を積み重ね、ようやく板上に立っても、1回の失敗や小さなミスが大きな命取りになる。緊張感をやわらげるために、とっておきの方法がある。

 「歌を歌います。何か落ち着く歌があって。(米歌手)ブルーノ・マーズの『Just the Way You Are』です。海外の選手って(試合前に)ヘッドホンをつけて、踊り出しそうなくらいノッているので『楽しんでいるな〜』って感じて。やってみたら、落ち着きました。でも、その曲以外はダメ。ピンとこない」

 高校生になると、父の指導を受けるようになった。プールでは「コーチ」、家では「お父さん」。いわゆる反抗期とも重なって気持ちの整理がつかなかった。

 「うーん、嫌でした。すごく嫌でした。気まずいというか…。家でまで飛び込みの話をしてほしくなかったので、私は全然しなかった。本当に口をききたくないみたいな(笑い)」

 転機となったのが、瀬戸との出会いだ。14年11月から付き合い始めたが、瀬戸のいる埼玉県と、関西との遠距離恋愛。会うためには家族の理解も必要となり、それが父との距離感を少しずつ縮めてくれた。

 「それまで、あまり恋愛の話はオープンに話さなかったですけど、お付き合いしてからは、(父に)話さないと会いに行ったりできないので、大也とも『しっかりしよう』と話し合いました。だから結構早くお互いの両親に紹介して。(父に)今後のことや、いろんな悩み事も相談するようになったら、(瀬戸に会うために)練習時間を調整したりしてくれました。『結婚』ってなった時はちょっと別でしたが(笑い)。2人で報告したんですけど、ビックリしていました。『まさか、こんな早く』って。でも喜んでくれました」

 まだ拠点が別々のため、同居はしていない。近い将来は一緒に暮らすことになるが、夫の前向きかつ大胆すぎる発想に驚かされることもあるという。

 「『馬が飼いたい』って言われて…大反対です(笑い)。私も馬に乗りましたし、好きですけど。どこに置くのか聞いたら『車はいらんから、駐車場に馬』って。たまにトンでるんで。それが一緒にいて面白いです」

 今年2月、他競技にも友人が多い瀬戸に誘われ、同じ年齢のアスリート会に参加。交友関係が広がり、新たな刺激を受けている。

 「最近、(バドミントンの奥原)希望ちゃん=写真右=と、(元新体操の畠山)愛理ちゃん=同左=と、3人でお食事に行きました。2人とも五輪を経験した選手なので、競技に対する姿勢がすごい。希望ちゃんは休みの日でもバドの動きしているって言っていたので、やっぱり毎日やらないと感覚がなくなってしまうんだな〜って。いろんな方の考え方が聞けるので、(自分に)プラスになっています」

メダル取る   20年には東京五輪を控えるが、来年以降のことは未定という。今季の最大目標は、15年の韓国・光州大会に続いて出場するユニバーシアード。今は目の前にある大会で、着実に結果を積み重ねていく。

 「2年前はメダルを取れなかった(1メートル板で4位が最高成績)。でも取れる位置にいるっていうのは分かったので、今年はいい色のメダル取りたいなと思います。今年終わってからのことはまだ考えていなくて、とりあえずはユニバーシアードに向けて頑張っています」(ペン・小林 玲花、カメラ・谷口 健二)

 ◆馬淵 優佳(まぶち・ゆか)1995年2月5日、兵庫・宝塚市生まれ。22歳。6歳から飛び込みを始める。2008年日本選手権は辰巳楓佳とのシンクロで、高と3メートル板の2冠。09年東アジア大会(香港)は3メートル板で銅メダル。11年世界選手権(中国・上海)は2種目出場で予選敗退。日本代表・馬淵崇英コーチの次女。中国出身の崇英氏は五輪5大会出場の男子・寺内健らを育てた。163センチ、52キロ。