◆ロンドン世界陸上第7日(10日、英国・ロンドン競技場)

 【ロンドン10日=細野友司】男子200メートル決勝に史上最年少の18歳157日で出場したサニブラウン・ハキーム(18)=東京陸協=は、20秒63(向かい風0・1メートル)で7位となり、今大会の日本勢入賞第1号となった。同種目の入賞以上は03年パリ大会銅の末続慎吾(37)=SEISA=以来、14年ぶり2人目。レース中に右脚を痛めた影響で、12日(日本時間同日夜〜13日未明)の男子400メートルリレーは欠場する見通しとなった。

 顔が急にゆがむ。前半100メートルでトップ争いを演じたサニブラウンの右太ももが、今大会5本目のレースでついに悲鳴を上げた。「気にしていたハム(ストリング)が最後に来てしまって」コーナーの出口で失速。200メートル予選(7日)で違和感を覚えた脚が痛くて動かない。それでも意地で7位に食い込み、今大会日本勢初の入賞。でも「あそこからもう一段上げればメダルに食い込めたんじゃないか。悔しい世陸になった。こんなんで満足していたらダメ」。表彰台が見えたから、反省ばかり口をついた。

 師事するオランダ代表のレイナ・レイダー・コーチは「彼の潜在能力の一端が見えたと思う。調子はすごく良かったから、コーナーで痛みを感じずに(最後の直線に)出てこれていたら、いろいろな人を驚かせていたと思う」と明かす。今季は首のブレ、地面を蹴った脚が後方に流れて動きの無駄を生じる癖などを、一つ一つ修正。8か月間で世界に通用する走りの基礎は作り上げた。「(今後の)成長は青天井だ。(20年)東京五輪の後には、すごく有名で、お金持ちになっているだろうね」と笑った。

 オランダ修業を支えたのは“男の会話”だった。約25年前。サニブラウンの父・ラティフさん(49)は、友人の誘いでガーナから日本へ移住。いろいろな仕事をしたが、語学上達のため1つだけルールを決めた。「日本人だけの店でしか働かなかった。外国人がいたら、どうしても英語を使うから」。単身オランダで暮らす息子は、英語漬け。異文化に溶け込む苦労は身に染みている。週1度、国際電話でコミュニケーションを続けた。父が「何やってるの?」と言えば「うん、これから練習〜」。1回2〜3分、たわいもない話が気分転換だった。今は流暢(りゅうちょう)な英語を操るサニブラウンは「親にも感謝したい」と頭を下げた。

 今月中旬に米国入りし、フロリダ大での生活が本格的に始まる。「100メートルは通用している。200メートルはラスト100メートルで伸びていく選手についていける練習をしたい。勝負できないと、全然面白くない」。19年ドーハ(カタール)世陸を経て、20年東京五輪。最高の舞台は整う。「五輪のレベルでも決勝に出て戦えるようにしたい。まだまだ、満足できない」。誰もが憧れるだけだった世界最速の座を、本気で狙える男が現れた。