◆報知新聞社後援 プロボクシング「ワールドプレミアムボクシング」▽WBC世界バンタム級(53・5キロ以下)タイトルマッチ12回戦 山中慎介―ルイス・ネリ(15日・島津アリーナ京都)

 WBC世界バンタム級王者・山中慎介の代名詞でもある“神の左”。2006年のデビュー2戦目からトレーナーとしてコンビを組む、元東洋太平洋スーパーバンタム級・元日本バンタム級王者の大和心氏(42)の証言から、世界でも類を見ない左ストレートの凄(すご)さに迫った。

 数々の強敵を仕留めてきた「神の左」。12度の防衛を重ね、日本記録のV13に挑む山中の最大の武器だ。最も身近にいて、その威力を知りつくす大和氏は「一点を貫く貫通力が凄い。まさにアイスピックのよう」と語る。

 潜在能力に驚かされたのは06年12月の佐藤祐太(横浜光)との3戦目だ。2回に相手の口元を左ストレートが捉え、プロ初のKO勝利。試合後に左グラブを見ると「(ナックル部に相手の)歯形が残っていて、そこが破れていた」という。すさまじい破壊力。「自分の知る中でこんなことをしたのは山中だけ」と振り返る。

 以前はナックルの人さし指と中指の部分で相手を捉えていたが、今は人さし指だけで捉え、鋭さが増した。練習用のミットグラブは、左ストレートを受ける右手の一番下の部分だけが激しく傷んでいる。相手の顎に見立てている部分で、ミット打ちでは大和氏が思わず苦悶(くもん)の表情を浮かべる時がある。「ドンという感じじゃなくキーンとしびれる。一瞬遅れて痛くなる。それを顎に入れるのだから、そりゃ倒れる。記憶ごと飛びますよ。教えてできるものではない」と舌を巻く。

 山中は多彩なパンチを打つタイプではない。ほぼ左ストレートで勝ち続けてきた。「中学まで野球をやっていたので背中と肩が強い。遠投ができる選手は大体、パンチが強い。ストレート系は背中や肩で打つんです。一方でフック、アッパー系は胸で打つが、山中は胸筋があまりない」と解説。左ストレート中心のボクサーになったのは、必然だったのかもしれない。

 世界王者になって5年9か月。その間、左は研究し尽くされていると思いきや、大和氏は絶対の自信を見せる。「ワンツーの中にも種類が山ほどある。右の使い方やタイミング、目線だったり、無数に。面と向かった時、初めて対戦者は分かる。でも気がついたときにはもう遅い」。「神の左」は常に進化を続けているのだ。(特別取材班)