◆広島2―9巨人(11日・マツダスタジアム)

 偉業達成はもうすぐだ。巨人・阿部が2点を追う5回2死満塁、左翼線へ走者一掃の逆転二塁打。通算2000安打まで、あと2本とした。勢いづいたチームはこの回、打者11人で今季最多の1イニング6得点を記録し、首位・広島に逆転勝ち。2失点完投の田口は2年連続で10勝に到達した。試合用アンダーシャツなどを運ぶ車両がお盆休みの渋滞で遅れるハプニングにも動じず。3位・DeNAに3ゲーム差に迫った。

 今までとは、雰囲気が変わった。G党からの歓声の中に、敵地の拍手もわずかに交じっていた。二塁上、阿部は軽く手を上げて応えた。「細かいことは考えずに、積極的にいこうと思っていました。コースに逆らわずに打ち返すことができました。勝ちにつながる一本が打ててよかった。あと2本か」。2点を追う5回2死満塁。福井の初球、外角直球をさばいた打球は、広く空いた左翼線を転がった。一塁走者の坂本勇まで生還し、走者一掃。通算1998安打目は、試合をひっくり返すV打となり、村田、亀井、田口にもタイムリーが飛び出す一挙6点の猛攻につながった。

 朝から異変続きだった。「あれ? 今日はこっちか。珍しいな…」。広島へ向かうため羽田空港に到着すると、搭乗口の変更が告げられ、いつもとは違うゲートに案内された。広島空港到着後には、マツダスタジアムへの高速道路が事故で大渋滞。迂回(うかい)ルートで、通常の倍の2時間ほどかけて球場にたどり着いた。さらに道中では、10日の試合で放った投手強襲内野安打が右足を直撃した阪神・メッセンジャーの骨折を知った。「マジか…」。真剣勝負の中で起きたこととはいえ、胸中は複雑だった。

 球場では真っ先にグラウンドに姿を現し、黙々とジョギングを始めた。異変は続く。打撃練習を始めたところで、広島ファンから大歓声を受けた。「あべーっ! 2000安打、頑張れーっ!」。打撃ケージ横で少し驚いたような表情を浮かべながらも、ヘルメットを取って頭を下げた。さらに、巨人選手の試合用アンダーシャツなどを乗せた車の到着が遅れ、試合開始も30分遅れた。大記録を前に、阿部を取り巻く様々なものがザワついているようだったが、本人だけは冷静。いつも通りのスイングでまた一本、安打を積み上げた。

 Xデーが近づくにつれて、ホームやビジター関係なく、たくさんのファンがオリジナルの「アベ・メーター」を掲げてくれている。「グラウンドからもしっかり見えているし、本当にありがたい。小学生くらいの子供まで、一生懸命手書きで作ってくれたボードを持っていたりしてね」と目尻を下げる。「0」へとカウントダウンしていくタイプもあれば「2000」へ迫っていくタイプもある。そんな中でもチームの勝利に貢献する一打を放った。高橋監督も「ぜひ、阿部のヒットで勝てれば、それも記念のいい日になるのかなと思う」と話した。その瞬間を、誰もが待っている。(尾形 圭亮)