◆第99回全国高等学校野球選手権大会第4日 ▽1回戦 広陵10―6中京大中京(11日・甲子園)

 広陵(広島)は今秋ドラフト上位候補捕手・中村奨成(3年)が2発の活躍で、夏の甲子園では1931年以来となる中京大中京(愛知)との名門対決に勝利。86年ぶりに雪辱し、9年ぶりに初戦突破した。2点を追う6回、右中間ソロで打線を勢いづけると、8回は右翼席へ2ラン。巨人・岡崎スカウト部長は「1位の12人には入る。入札もある」と絶賛した。智弁和歌山は代名詞の強打で6点差を逆転し、6年ぶりの甲子園白星。2度目の春夏連覇に挑む大阪桐蔭は、エース・徳山壮磨(3年)が7回1失点の好投で初陣を飾った。

 4万7000人の大観衆に衝撃を与える、ド派手な聖地デビューだ。2点を追う6回1死。中村が外角高めの直球を強振した。歓声と悲鳴が交錯する中、打球は逆方向の右中間席へ飛び込んだ。反撃ののろしを上げる高校通算39号ソロだ。「今まで打った本塁打の中で、一番気持ちよかった」。逆方向へのアーチは自身初。夏空に右の拳を突き上げた。

 火のついた打線は、主砲の一発から4連打で2点を追加し逆転。そして8回だ。今度は右翼ポール際に2ランをたたき込んだ。高校通算40号で自身初の1試合2発。5打数4安打3打点の大爆発だ。07年夏の甲子園。野村祐輔(現広島)とバッテリーを組んで広陵を準優勝に導いた憧れの小林はあの夏、決勝までの6試合で14打数3安打2打点だった。初の甲子園でいきなり“小林超え”をやってのけた。

 捕手が夏の甲子園で1試合2発を放つのは、13年の大阪桐蔭・森友哉(現西武)以来5人目。打てる捕手にはプロのスカウト陣も目を見張った。巨人・岡崎スカウト部長は「逆方向に2本はプロでもあまりいない。(ドラフト1位の)12人には入るだろう」とスター候補の出現を喜んだ。

 90年から同校で指揮を執る中井哲之監督(53)が「高校時代なら小林よりも上。モノが違う。化け物」と認める逸材。6回無死一塁では、捕前のバントを遠投120メートルの「鬼肩」で二塁封殺に仕留めた。9回は球場全体が相手を応援するかのような異様な空気の中、左脚をつりながらも投手を鼓舞し続けた。

 打撃は巨人の師弟コンビから学んだ。広陵ナインは阿部が自主トレで小林を指導する映像に注目。2人の練習法を参考にした。ロングティーで軸足の付け根にためた力をボールにぶつける打法。打球の威力が増した中村は、広島大会準決勝から公式戦3戦連発と覚醒。大舞台での勝負強さはWBCで“ラッキーボーイ”となった先輩譲りだ。「あの舞台で打てるのはすごい」。寮のテレビでは小林の奮闘に興奮し、刺激を受けた。

 憧れの人がチームに贈ったレガースは、寮で大切に保管。常に目標として意識する。10年前。07年夏の決勝・佐賀北戦は、8回に逆転満塁弾を浴び準優勝に終わった。「小林さんの代の借りを返せるように、日本一を目指したい」と中村。次戦は強豪・秀岳館。先輩が逃した同校初の夏制覇へ。将来の夢に「日本代表の4番・捕手」を掲げる未来の侍。燃えないはずがない。(浜田 洋平)

 ◆広陵単独8位春夏通算67勝

 広陵は春夏通算67勝で、早実を抜く単独8位となった。中京大中京とは、甲子園大会の同一カード春夏通算最多の7試合目で68年春から4連勝。両校計200勝の名門対決を制した。10―3で迎えた9回には4点差に迫られ、中井監督は「佐賀北を思い出した」と冷や汗。6回から出場し、7回に甲子園春夏通算2300号となる2ランを放った佐藤勇治は「素直にうれしい」と笑顔だった。

 ◆中村 奨成(なかむら・しょうせい)

 ★生まれとサイズ 1999年6月6日、広島・廿日市市生まれ。18歳。181センチ、78キロ。右投右打。

 ★球歴 広島・大野東小1年から軟式野球を始める。大野東中では大野シニア(軟式)に所属。広陵では1年春からベンチ入りし、同夏から正捕手。甲子園出場は今夏が初めて。

 ★俊足強肩 大柄ながら、50メートル走は6秒0。二塁送球の最速は1・74秒とプロのスカウトも絶賛。

 ★母との約束 啓子さん(44)に甲子園での本塁打と日本一を約束。「ホームランボールは親にあげたい」

 ★ド根性 広島大会は、初戦の崇徳戦で右手首に死球を受けた影響で17打数3安打、打率1割7分6厘。負傷時は「大丈夫じゃけぇ」と気丈に振る舞う。

 ★洋楽好き 寮の部屋では洋楽を流しっぱなし。同部屋のエース左腕・平元銀次郎は「歌っている時はテンションが高い」。

 ★家族 母と妹。