◆広島1―0巨人(12日・マツダスタジアム)

 巨人・阿部が史上49人目の通算2000安打へ、ついに王手をかけた。3打席無安打で迎えた9回の第4打席で、広島先発の薮田から左前安打を放った。プロ17年間で積み上げた安打数は1999。13日の試合で、一気に金字塔を打ち立てられるか。チームは最後に見せ場をつくるも、4安打で3併殺と抑え込まれ、薮田にプロ初の完封勝利を献上。菅野は7回1失点と踏ん張ったが、今季5敗目を喫した。

 勝利目前でどんどん大きくなっていく敵地の歓声にも、かき消されなかった。1点を追う9回1死。打席でバットを構える阿部の後ろ、バックネット裏からは、3人の子供たちと悠夫人が背番号10のユニホームやタオルを掲げ、必死で声をからしていた。

 薮田の初球、外角シュートを見送り、2球目は低めをファウル。2ストライクからの3球目、再び高めに来たシュートを、今度は鮮やかにバットに乗せた。低いライナーが左翼線へ落ち、スコアボードに「H」がともる。得点にはつながらず、本人は「勝てなかったことが悔しい。智之が粘って、粘って、一生懸命投げていたから」と言葉を絞り出したが、これで通算1999安打。ついに、ついに王手をかけた。

 2000安打へあと2本で迎えたこの日、“小さな大応援団”は急きょ、広島に駆けつけた。お盆休みと重なり新幹線のチケット手配も簡単ではなかったというが、昼過ぎに都内を出発。試合開始ギリギリで、マツダスタジアムに到着した。初回2死一塁は、外角149キロで二ゴロに倒れた。4回無死の第2打席。ネクストバッターズサークルで素振りをしながら、家族の声援に軽く左腕を上げて応えた。ここは四球。続く6回1死では、低めのボール球に手を出して投ゴロに打ち取られたが、これで終わるはずがなかった。

 最終回の最終打席で、きっちりカウントダウン。子供たちも「かっこよかった!」「うれしい!」と大喜びで跳びはねていた。試合後、宿舎へ戻るバスに乗り込む直前には、駆け寄ってきた3人を見ながら「こいつらが一番せかしてくるから、早く打たないと…」と照れ笑いし、一瞬だけパパの顔に戻った。

 打線は4安打で今季8度目の0封負けとなったが、タダでは転ばなかった。高橋監督も「結局は、抑えられたというか打てなかった。それしかない」と厳しい表情で振り返りつつ、「(阿部に)1本出たことで最後、雰囲気も変わったからね」と3戦目に期待した。阿部は「王手? あまり意識せず、勝って、(阪神と広島の)上位2チームに勝ち越して帰りたい」と冷静に前を見据えるが、相手先発も今季9の3で相性のいい岡田と、舞台は整っている。最愛の家族が見守る前で、今日、決める。(尾形 圭亮)