◆第23回秋華賞・G1(10月14日・芝2000メートル、京都競馬場)

 アーモンドアイの馬房で、助手の根岸と話す男がいた。脚もとを確認して厩舎を出てきたのは、装蹄師の牛丸広伸(43)だ。「これだけの馬だから寝られないよ。毎回、馬は戻ってくるたびにトラブルがあったけれど、それを乗り越えて2冠を取った」。破竹の4連勝は、常に蹄との戦いだった。

 圧倒的なパフォーマンスを生み出しているのは、トモ(後肢)の推進力。「蹴る力が他馬と比べものにならない。激しい時は、後ろ脚がドーンといっちゃう」と、前脚にぶつけることも多い。最終デモをWコースから坂路へ変更したのも、そのダメージを軽減するためだった。

 「爪の上の方でぶつかりやすい」。3戦で特徴をつかんだ牛丸は、エクイロックスという白い保護素材を手に取った。爪と同じくらいの硬さで、厚さは1センチ。それを5センチの幅に加工し、両縁をキュッととがらせた。この形は――。「四角くてもいいんだけど、アーモンドアイ状がいいかな、って」。最も当たりやすい両前脚の内側に、その“アーモンドアイ”を取り付け、蹄壁を強化した。

 その予防策が桜花賞、オークスの2冠達成に導く一つの要因になった。さらに、トモの踏み込みによるケガから守るための工夫は、蹄鉄にも表れていた。両前脚の蹄鉄の内側の角を取って滑らかにすることで、後肢と接触した際の事故を防ぐ対策も施していた。

 そもそも爪の厚さが「想像できないくらい薄い」というアーモンドアイ。蹄鉄が取れる可能性も高いが、これまで落鉄が一度もないのは、牛丸の高い技術に他ならない。祖父・森男さんから受け継いで3代目。その確かな目によって施された“アーモンドアイ”によって脚もとは守られている。=敬称略=(取材、構成・石野 静香)

 ◆牛丸 広伸(うしまる・ひろのぶ) 1974年12月31日、千葉県生まれ。43歳。土浦日大高卒業後、社団法人日本装蹄師会(現公益社団法人日本装削蹄協会)の装蹄教育センターで資格を取得。94年に父・牛丸森伸装蹄所に入り、09年3月に独立して開業。現在は300頭以上を受け持ち、島川隆哉オーナーやゴドルフィンの担当装蹄師でもある。これまで手がけたG1馬はクィーンスプマンテ、ロゴタイプ。祖父・牛丸森男さんから続く3代目で、伯父は加藤修甫元調教師。家族は妻と2女。モットーは「不惜身命」。「体と命を惜しまず、馬のために働きたい」。