国の天然記念物に指定されている羊蹄山山頂付近などの高山植物帯で、本来生えていないはずのコマクサが繁殖している。登山者が持ち込んだとみられ、地元の山岳ガイドら有志が5年ほど前から駆除作業を行っているが、根絶には至っていない。専門家は「安易な持ち込みは生態系を崩す」と話している。

 コマクサはケシ科の多年草で高さ10〜15センチまで成長し、夏にピンク色の花を咲かせる。ガーデニングなどでは人気の品種という。

 羊蹄山でコマクサが最初に確認されたのは1998年。それまでの調査と照らし合わせて「羊蹄山にはもともと生えていなかった」ことが分かり、倶知安町教委や環境省などが駆除を行った。

 近年、また増えてきたため、羊蹄山麓の自然や歴史を伝える町立倶知安風土館がニセコ羊蹄山岳会などと、2011年に駆除ボランティアを始めた。山岳会によると、当初は数百株が見つかったが、昨年までに50株程度に減っているという。

 羊蹄山は約400種に及ぶ植生の豊かさが評価され、1921年(大正10年)に山頂付近などが天然記念物に指定された。コマクサによる生態系への影響は今のところ確認されていないが、「数メートルの深い根を張るため、他の高山植物の成長を阻害する可能性がある」(倶知安風土館)という。

 道によると、種子の入手が容易なコマクサは登山者が勝手に種をまく例が多く、道内では天塩岳でも繁殖が確認されている。環境省自然公園指導員の矢吹俊男さん(65)=倶知安町=は「長い時間をかけてできた植生も壊れるのは一瞬。あるがままの自然を楽しんでほしい」と話している。(堀田昭一)