1964年の開業以来築き上げられた、新幹線の安全性への信頼を根底から揺るがす事態である。

 JR西日本が約千人の客を乗せて今月11日に運行した博多発東京行きのぞみ号で異臭が発生。名古屋駅で停止させたところ、台車の枠に亀裂が確認された。

 国の運輸安全委員会は、新幹線では初めて、事故につながる重大インシデントに認定した。

 亀裂の広がり具合から、破断して脱線する可能性さえあった。

 最大の疑問は乗務員らが数々の異変に気付きながら、3時間以上も走らせ続けたことだ。台車という重要部位に亀裂が生じたことも深刻に受け止める必要がある。

 JR西日本は原因を徹底解明し、説明する責務がある。安全第一の原点に立ち返り、再発防止の努力を尽くさなければならない。

 運行中、乗務員らは異臭、車内のもや、異常音などを次々に確認したが、東京の指令員とやりとりした結果、停止はしなかった。

 新大阪駅でJR東海の乗務員に交代する際もJR西日本は「異臭はあったが異常はない」と引き継いだという。結局、名古屋駅で運休させ、床下点検で亀裂や油漏れが見つかった。

 より早い段階で列車を止めるべきだった。JR西日本には、乗務員らの対応から運行マニュアルまで、克明に調べてもらいたい。

 問題になったN700系車両の台車の強度の検証も必要だ。台車は客が乗る車体と車軸を支える極めて重要な部分だ。亀裂は底面、側面に広がり、上側に3センチを残すだけで破断寸前だった。

 目視頼みの検査のあり方も含め、製造した川崎重工業とともに、精査するよう求めたい。

 「判断に迷ったときは、最も安全と認められる行動をとらなければならない」。JR西日本は2005年の福知山線脱線事故後に定めた安全憲章にこう記した。

 事故の教訓が薄れ、安全より定時運行を優先する当時の気風がはびこってはいないか。社員全体の意識に目を向けることも大切だ。

 国土交通省は新幹線を運行する5社に台車の緊急点検を求め、JR北海道はH5系車両に異常がないことを確認した。

 北海道新幹線は、東京―新青森間はJR東日本、新函館北斗まではJR北海道が担う。両社の乗務員の引き継ぎを含め意思の疎通は十分か、チェックしてほしい。

 貨物列車と共用で日本一長い青函トンネルを走ることも考え、安全最優先を胸に刻むべきだ。