福井県若狭地方最大の秋祭り「放生祭(ほうぜまつり)」は9月15日、小浜市男山の八幡神社で神事が営まれた。新型コロナウイルス感染拡大で出し物の巡行は中止となり、2年連続で市内からにぎわいが消えた。国重要無形民俗文化財指定を目指す中での苦渋の見送りに、関係者からは「市制70周年を盛り上げる機会だったのに」「来年こそは開催を」との強い思いがにじんだ。

 放生祭は同神社の例大祭。300年以上の歴史を持ち、県無形民俗文化財に指定されている。小浜地区の24区が半数ずつ隔年で出番を務め、神楽、獅子、大太鼓、山車(やま)の4種の出し物を披露しながら巡行。2日間にわたって次々と同神社に宮入りし、中心市街地は祭り一色に染まり約3万人の観光客らが訪れている。

 祭りは昨年、新型コロナ禍で祭礼委員会が戦後初めて出し物を中止することを決定。今年も6月下旬に中止が決まった。祭礼委員会の会長は「市制70周年を祭りで盛大に盛り上げたかった。非常に残念」と声を落とす。

 この日は神事のみが営まれ、地区民や観光客の姿はなく総代9人が玉串を奉納し約30分ほどで終えた。

 祭りを支えてきた住民にも無念の思いがにじむ。50年以上参加している男性は「太鼓や笛などの練習をするとどうしても密になってしまうので中止は仕方ない。地区の子どもたちの祭りへの関心が薄れないか心配」と危惧する。

 出し物が中止となった昨年と今年、関係者にとっては特別な意味合いも含まれていた。県と市では2015年度から国重要無形民俗文化財の指定を目指し、5カ年の調査を開始。19年度には祭りの歴史や出し物をまとめた報告書を文化庁に提出した。昨年、今年の祭りには同庁視察が予定されていたが、新型コロナ禍で見送りに。国指定への格上げは足踏み状態が続く。

 祭礼委員会では、来年度の祭りの開催や文化庁による視察に向け議論を進めている。関係者は「放生祭は疫病退散の思いも込められている。来年こそはコロナ収束を願い開催したい」と強い思いを打ち明ける。

 会長は「放生祭を全国にアピールするためにも、国の指定に向けた取り組みは今後も進めていきたい」と語った。
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