歴史考証に基づく復元画を専門とする画家、末松智(さとし)さん(63)=金沢市末町=が、金沢城の辰巳櫓(やぐら)と大鎬(おおしのぎ)櫓を一幅に収めた油絵を制作している。二つの櫓は本丸に隣接する「東ノ丸」にあり、1759(宝暦9)年の大火で焼けるまで、石垣上に威容を誇った。史料から得た知見を総動員して精細に描いた労作は、間もなく完成予定で、しいのき迎賓館で25日に始まる個展でお披露目する。

 金大や金沢学院大で教壇に立つ末松さんは、1997年に菱櫓と五十間長屋を描いたのを皮切りに、金沢城の復元画制作に取り組んできた。辰巳櫓は2008年に初めて描き、隣に建っていた大鎬櫓もいずれは手掛けたいと構想を温めていた。

 建物、石垣の形と寸法は、市立玉川図書館が所蔵する藩政期の「金沢城本丸・東丸之図」「金沢城建物起絵図(おこしえず)」や明治期の古写真などを基に5年がかりで確定。周囲を踏査して、旧百間堀のお堀通りを挟んだ兼六園側の高台を視点場に定め、制作に取り組んだ。

 23日までにほぼ完成した100号の大作は、手前に辰巳櫓がそびえ立ち、緩やかに湾曲して延びる石垣の向こうに大鎬櫓が建つ構図となっている。現存する藩政期の石垣は、石一つに至るまで正確に描き込み、東ノ丸内の木立や百間堀に面した塀も、当時の風景を思い描いて表現した。

 大鎬櫓は2層建てで、高さは辰巳櫓とほぼ同じ約14メートル。足元の石垣は高さ14間(約25・5メートル)だったが、明治期に崩されて約8メートルになった。往時の櫓は現在の木立のてっぺんほどまであったことになる。

 末松さんは「20年以上にわたって集め、分析した史料を駆使した自信作。今とは違った金沢城の姿を多くの人に見てほしい」と語った。

 二つの櫓を描いた最新作を含む作品15点は、25日に始まる「末松智 金沢城復元画展2021」(北國新聞社後援)で公開する。10月3日まで。

 金沢城東ノ丸 現在のしいのき緑地の正面に位置し、加賀藩祖前田利家の側室寿福院らが暮らした。犀川方面に眺望が開け、櫓に連なる塀に開き戸が設けられていたとの記録が残る。県金沢城調査研究所の近年の調査で江戸初期の庭園の遺構が見つかった。
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