1999年のデビュー以来、俳優として「池袋ウエストゲートパーク」「医龍」「最後から二番目の恋」など数多くの映画やドラマに出演し、絶大なる人気を誇ってきた俳優・坂口憲二。だが2018年になると国指定の難病を治療するため、芸能活動の休業を発表。その後はバリスタの成澤敬介とともにコーヒーブランド「The Rising Sun Coffee」を立ち上げるなど、焙煎士としてのセカンドキャリアを積み重ねてきた。そんな彼も近年は体調も少しずつ快方に向かっているとのことで、デニムやビールのCMに出演するなど、ふたたび表舞台での活躍を目にする機会も増えてきている。

©WOWOW/伊坂幸太郎/講談社

坂口がかつて演じてきた役といえば、体育会系、ワイルド、健康的といったキーワードで語られることが多かったが、そんな中、無機質で気弱な家庭裁判所の調査員を演じて新境地を開いた作品が「ドラマW CHiLDREN チルドレン」だ。伊坂幸太郎の同名の連作短編小説集を、坂口主演、源孝志監督で映像化したドラマがWOWOWプラスにて放送予定となっている。もともとはWOWOWのオリジナルコンテンツとして放送された本作だが、坂口自身も「台本をもらった時から映画のつもりだった」と自負するほど入れ込み、作品自体も高い評価を受けた。また、ドラマ放送後には劇場公開を望む声が多く寄せられ、後に映画館でも劇場公開されることとなった。

©WOWOW/伊坂幸太郎/講談社

本作で坂口が演じる武藤は、几帳面で神経質でありながら、ことあるごとに謝ってばかりいる気弱な男。家庭裁判所の調査員として、補導された少年少女の話を聞くことを生業としているが、当の少年少女たちからはバカにされてばかり。そんなある日、万引で補導された少年・木原志朗(三浦春馬)の面接を担当した武藤は、志朗の父親(國村隼)への態度にどこか違和感を抱く。一方、職場の先輩である陣内(大森南朋)は一見ちゃらんぽらんで、人との向き合い方も破天荒そのものだが、なぜか相手の心をつかんでいく憎めない人物。そんな先輩に振り回されてばかりの武藤だが、次第に陣内に感化されていく...。

なお、ドラマの冒頭で武藤は、先輩の陣内とともに銀行強盗事件に巻き込まれてしまうが、その時に一緒に人質になっていた美春(小西真奈美)にひと目ぼれ。しかし武藤は、なかなか美春にアプローチできずにいたが、先輩の陣内の強引なアシストの甲斐もあり、少しずつ美春との距離を縮めていく。ちなみに余談だが、回想シーンにおける学生時代の美春を、ブレイク前の吉高由里子が演じているのも、今となっては貴重な映像だと言える。

本作の主人公、武藤を演じるにあたり、源監督からは「感情を出さないように」「おさえて」といった指示があったという。また、武藤のことを、ロボットのように無機質に、かつ世間をフィルターを通して見る役柄だと捉えた坂口は、役づくりの一環としてメガネを着用することを提案。普段の坂口と違うイメージを印象づけることに成功し、「俳優として自信を得た」と語っている。そんな武藤だが、いろいろな人たちとの関わりの中で大切なことを学んでいくようになる。自分から心を開かないと相手はまともに話を聞いてくれないのだと。そんな彼が成長していくさまも本ドラマの見どころとなっている。

文=壬生智裕

放送情報

ドラマW CHiLDREN チルドレン
放送日時:2023年5月11日19:00〜
チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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