香川県高松市にあるアーケード街・兵庫町商店街。ここに1952年に創業された調理道具専門店、石崎金物店があります。棚や壁はもちろんのこと、天井にも鍋やフライパン、提灯などが所狭しと陳列されています。

石崎金物店の商品には、何重にも保護用のビニール袋がかけられています。理由は「猫が自由にふるまえるため」。店頭に並ぶ鍋やフライパンに入ってくつろぐ猫たちの姿が、店の風物詩の1つでもあります。

縁のあったたくさんの猫を育てる

石崎金物店を経営するのは、社長の佐名洋子さんと娘の大川千代子さんです。佐名さんは、先代社長の「店と猫と犬をよろしく頼む」との遺言を受け、店を続けています。

佐名さんと大川さんは、これまで数多くの猫を保護してきました。きっかけは約20年ほど前、ゴミ捨て場に捨てられていた幼い黒猫を保護したことでした。

「気が付くと、いつの間にか猫が増えていました。“いつも猫がいるお店”だから、近所の人が猫の相談にやって来たりしていました」

この店の猫たちは、保護した野良猫が産んだ子だったり、近所でさまよっていた子だったりと、理由や経緯はさまざまです。先代をはじめ佐名さんや大川さんは、1匹ずつ名前をつけて大切に育てました。ミルクが必要なほど幼い子猫がいた時はレジの横に寝床を作り、事務机は“猫仕様”の職場環境へと変貌しました。

里親希望者が現れたら、縁を繋ぎました。2人は譲った先での名前も覚えているほど、1匹1匹の思い出を濃く抱いています。

「里親さんから、猫たちの写真や写真や手紙が送られてきて、近況を教えてくれるんです。元気にしていますよ、って」

また里親に限らず金物店を訪れた観光客からも、猫たちの写真が送られていました。猫たちのオリジナル動画DVDまで作り、丁寧な手紙と共に添えて送った観光客もいたほどでした。送られてきた写真を、佐名さんと大川さんは今も大切に保管しています。

猫の“おばあちゃん家”

今、店に行くと会える可能性があるのは、8歳のメス猫「なんちゃん」。なんちゃんのお気に入りの場所は、店中央にある事務机の下。訪問客にすり寄る時もあれば、逃げる時もあるので「会えるかどうかはなんちゃんの気分次第」です。

2021年現在、佐名さんと大川さんは保護猫活動は行っていませんが、ここはまるで「猫たちのおばあちゃん家」のようです。2人は送られてきた写真や手紙、スマートフォンの画面を見ながら、ここで育ったたくさんの猫たちとの思い出を振り返ります。そして、猫たちのさらなる幸せを祈っています。

ほ・とせなNEWS編集部