夏祭りの風物詩・金魚すくいなど、日本人にとって馴染み深い金魚。香川県東かがわ市では、金魚をふるさと納税の返礼品としており、“生きた返礼品”として注目を浴びています。

この返礼品の金魚を育てているうちの1人が、市内在住の中嶋一誠さん。50歳で教員の仕事を辞めて金魚を育てる道に入り、「日本オランダ獅子頭」という品種の愛好会を立上げるなど、日々金魚のために奔走しています。

充実の金魚ライフ

自宅に併設されたビニールハウスには、所狭しと大小の水槽が並び、さまざまな種類の金魚が泳いでいます。産卵時期には、およそ10万匹もの卵を選別するため、朝4時半には起床します。没頭して食事を忘れたこともあったとか。

「真上から鑑賞するため、大事なのは柄より形。左右のバランスを崩さずに作るのが難しいんですよ」

中嶋さんの育てる金魚は、東かがわ市のふるさと納税返礼品にも指定されており、年間約1000件近くを出荷しています。

「生き物を扱うので、注文を受けると必ず電話をして、受け取り時間を確認します。1日のうちで出荷時間を変えながら、最短で届ける工夫をしています」

なかでも思い入れが強いのが「日本オランダ獅子頭」。一般に流通するオランダ獅子頭とは異なる日本国内特有の品種です。30センチ以上のものもあり、中嶋さんは優美な尾ビレを「まるでドレスのよう」と表現。『金魚の女王様』と呼んでいます。

教員の仕事よりも、金魚を選んだ50歳

中嶋さんは45歳の時、日本オランダ獅子頭を香川県の品評会で偶然見たことがきっかけとなり飼育を始めました。4年後には品評会で1位を獲得します。しかし飼育者数が少なく、種が絶えてしまうのではと危機感を感じました。

「金魚の品種改良は、異なる種の掛け合わせが基本です。しかし日本オランダ獅子頭は、この品種間だけで改良されている、非常に珍しいもの。私はこの金魚を作り続けた先人の思いに感服、と同時に、私のような金魚馬鹿がいないと、種が絶えてしまうと思い、保存と伝承を目的とした愛好会を新たに立ち上げようと50歳の時に奮起したんです」

中嶋さんは50歳で教員を辞め、さまざま協力者を得て、自然消滅していた日本オランダ獅子頭愛好会を51歳のときに一から立ち上げ直しました。2021年7月現在、四国を中心に北海道から鹿児島まで約100名の会員がおり、飼育方法などの情報を交換し合い、日々レベルアップを図っています。

愛好会の盛り上がりに一役買っているのが、「みんなが笑顔になる」理想を掲げた、11月の第3日曜日に開催される品評会。通称『金魚祭り』として、地元でも定着しています。中嶋さんも審査員として品評会を盛り上げています。

「品評会は、全国から選りすぐりの日本オランダ獅子頭が見られる貴重な場。同時に、一般の人も気軽に金魚が買えます。手軽に買えるものから、5万円以上するような高級金魚まで扱っていますよ」

教員という安定した仕事よりも、金魚を選んだ50歳の決断。以来中嶋さんは16年もの間、金魚と共に歩み続けています。そのおかげで日本オランダ獅子頭は種の保存のみならず、全国にまでその名をとどろかせるようになりました。

「やりたいことは、人生のうちでやり尽くそう」
中嶋さんの金魚愛は、まだまだ止みそうにありません。

ほ・とせなNEWS編集部