新型コロナウイルスの感染拡大で「テレワーク」が広まり、対面だけでなくオンラインの社員間のコミュニケーションも活発になった近年。「ネット上のやりとりで心理的なダメージを受ける会社員が、コロナ前と比べて増えている」と感じた産業医らが実施した調査がある。

手掛けたのは筑波大学の池田朝彦助教や堀大介らの研究チーム。

調査では、正社員の13人に1人が職場で「メールや電話、メッセージが無視される」「オンライン上でプライベートについて常に言及される」などの「ネットいじめ」に遭っていることが分かった。

テレワークの頻度が高いほど、職場で「ネットいじめ」を受ける頻度が高いことも明らかになったという。

テレワークの頻度が高い人ほど、「ネットいじめ」に遭う頻度も高いとの調査結果にテレワークの頻度が高い人ほど、「ネットいじめ」に遭う頻度も高いとの調査結果に

企業などの産業医を務める池田助教は「職場の『ネットいじめ』の対策として相談窓口を設置したり、注意すべき言動について社員により広く周知したりする必要がある」 と訴えている。

若年層や管理職が「ネットいじめ」に

2021年1月、20〜64歳の正社員1200人(男性800人、女性400人)にインターネット上でアンケートを行った。回答者は全員、休職中ではなく、3分の1以上の人がテレワークを月1回以上していた。

調査結果によると、全体の8.0%(13人に1人)が週1回以上の頻度で「職場でメールなどを無視される」などの「ネットいじめ」にあたる経験をしたと答えた。

内訳は▽「職場でEメール、電話、メッセージを無視される」(20人に1人)▽「誰かがメールやファイルを保留し、仕事が困難」(35人に1人)▽「オンライン上で個人的なこと(プライベート)などについて常に言及される」(56人に1人)ーーの順に多かった。

「ネットいじめ」に遭う頻度が高い傾向にあるのは、▽年齢が若い▽管理職▽困難な業務に取り組んでいる▽インターネットによる情報発信が活発(SNSなどの利用が多い)▽テレワークの頻度が高いーーといった人だったという。

池田助教は「対面なら問題にならないような些細なやりとりも、顔の見えないオンライン上では心理的苦痛につながることもある」と指摘する。

「仕事に影響を及ぼすような情報を与えてもらえない」といった、ネット上でなくても起こる「従来型いじめ」を週1回以上、受けている人は11.3%(9人に1人)だった。

内容としては▽「仕事に影響を及ぼすような情報を与えてもらえない」(20人に1人)▽「仕事や努力に対して、何度も批判された」(26人に1人)▽「自分がいないかのように振る舞われたり、のけものにされたり、仲間はずれにされたりした」(29人に1人)ーーが多かった。

「ネットいじめ」と「従来型いじめ」の両方を受けている場合、どちらのいじめも受けていない場合と比べて、心理的苦痛や不安感、孤独感が高かったことも明らかになった。社員の年齢や性別、性格、業務上の負荷に関わらず、この傾向があるという。

池田助教は「『ネットいじめ』だけでなく、『従来型いじめ』も対策していく必要がある」と話す。

社員や企業のリスクは? 対策は?

池田助教によると、職場でのいじめにより受けた心理的苦痛は、先々でうつ病の発症や休職につながるなどのリスクもある。特に「ネットいじめ」の場合、苦痛の原因に気づかずに1人で抱え込み、孤独感を強めてしまうことがあるといい、池田助教は「『ネットいじめ』が心理的苦痛につながると知ることが大事」と強調する。

企業にとっては、社員の休職によって戦力を失うだけでなく、苦痛のはけ口が企業側に向かった場合に、ネット上で「ブラック職場だ」などと暴露され評判を落とすといった事態につながる可能性もあるという。

池田助教は「企業はオンラインも含む相談窓口を設置したり、同僚らを傷つけ得る『ネットいじめ』になりかねない行為について研修するなどして、対策を強化する必要がある」と指摘する。

特に「ネットいじめ」は一般的に上司から部下にする「パワハラ」とは異なり、誰もがしてしまう可能性があることから、「さまざまな立場の人に『ネットいじめ』の対策を周知していく必要がある」と話している。

 

〈取材・文=金春喜 @chu_ni_kim / ハフポスト日本版〉