「生娘をシャブ漬け戦略」

牛丼チェーン「吉野家」の役員(当時)が講師として登壇した早稲田大学主催の社会人向け講座でそう発言し、波紋を広げてから2ヶ月余り。

6月20日、実際に講座を受講した女性らが吉野家と早稲田大学に対して▽意識改革▽セクハラなどの実態調査▽コンプライアンスのルール策定や教育の徹底ーーなどを求める2万9200筆の署名を送付した。

署名提出について記者会見する受講者(右)ら署名提出について記者会見する受講者(右)ら

署名の送付前に記者会見を開いた受講生の女性は、問題となった発言について「発言者を解任することで幕引きとなったが、発言者本人だけでなく吉野家や早稲田大学の組織としての課題がゼロとは言えません」と指摘。

その上で、「お飾りのハラスメントガイドラインやダイバーシティ推進では意味がない。日本社会で学び、働くすべての人が平等に安心して活躍できる環境づくりを求めたい」と訴えた。

発言者の解任で幕引きに

ことの発端は4月16日に早稲田大学が開講した社会人向けの「デジタル時代のマーケティング総合講座」で飛び出た発言。若い女性をターゲットにしたマーケティング手法を「生娘をシャブ漬け戦略」と言い表したのは、講師として登壇した吉野家の常務取締役企画本部長(当時)だった。

「田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を無垢・生娘のうちに牛丼中毒にする。男に高い飯を奢ってもらえるようになれば、絶対に(牛丼を)食べない」と説明したという 。

発言のあった講座を受講した女性は、発言を聞いて「怒りに震えた」と振り返る。「38万5千円も払って受講しようと思ったのは、履修証明が発行される講座のため、質が間違いなく担保されていると期待したから。講座初日から、どこでも聞いたことがないレベルの差別発言を聞き、誰も止めないことがショックだった」

発言はネット上で拡散し、批判の声も上がった。これを受け、吉野家は公式サイトに謝罪文を掲載し、「当該役員が講座内で用いた言葉・表現の選択は極めて不適切であり、人権・ジェンダー問題の観点からも到底許容できるものではありません」との見解を示した。

「生娘シャブ漬け戦略」と話した役員(当時)を解任した吉野家「生娘シャブ漬け戦略」と話した役員(当時)を解任した吉野家

講師は吉野家ホールディングスの執行役員と、吉野家取締役から解任された。

講座を主催した早稲田大学も、公式サイトに謝罪文を公開した。

発言について「教育機関として到底容認できるものではありません。早稲田大学として受講生の皆様に心よりお詫びするとともに、当該講師に厳重に注意勧告を致します」とした上で、講師については「講座担当から直ちに降りていただきます」と説明していた。 

「発言者個人のみの問題ではない」

吉野家と早稲田大学が講師を役職から解き、幕引きを図った背後で、受講生らは同社と同大学に対策を求めてきた。だが、これまで社内や大学全体で取り組む具体策は示されていないという。

そこで、受講生らは同社と同大学に対策徹底を求めるため「『生娘シャブ漬け戦略』発言を受け、私たちはもう我慢しない」と題する署名活動を開始し、6月20日までに2万9千筆を集めた。

受講生らは署名や要望をまとめた文書を同社と同大学に手渡しする意向だったが、郵送を求められたという。

 2万9千筆の署名を投函する受講者の女性2万9千筆の署名を投函する受講者の女性

吉野家ホールディングスと吉野家の河村泰貴社長に宛てた文書では、「講義の中では、今回の差別発言が株式会社吉野家社内であたかも日常的に使用されているかのような言い回しが散見され、発言者個人のみの問題であるというより、組織文化が醸造した影響がゼロとは言えないのではないか」と指摘。

「全ての人が安心して働ける環境を整える義務がありますし、消費者に対しても安心してサービスを享受できるよう真摯な対応が必要」として、同様の発言が日常的に使用されていなかったかについての実態調査や、コンプライアンスルールの策定などを求めた。

早稲田大学の田中愛治総長などに対しては、同大学の「差別やハラスメントに対する課題意識の弱さ・対応の杜撰さに対しても強く課題意識を持ったことから抗議活動に至った」と説明した上で、「(同大学の)責任がゼロだとは考えておりません」と強調。

「全ての人が安心して学び、働ける環境を整える義務がある」として、今回の問題についての認識を改めて公表することや、吉野家と同様の調査やルール策定などを要望した。

 

〈取材・文=金春喜 @chu_ni_kim / ハフポスト日本版〉