アジア歴訪中のアメリカのナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪問する予定だと報じられているなか、中国側は強硬な反対姿勢を打ち出している。

ペロシ氏の搭乗機と米軍機を「撃墜しろ」とツイートした中国メディアの元編集長は2日、「北京は軍事行動を含む対抗策を打ち出している」と投稿し、訪台を牽制した。

ナンシー・ペロシ下院議長(民主党)ナンシー・ペロシ下院議長(民主党)

■「葬り去る」「撃墜しろ」

アメリカのペロシ下院議長は議員団と共にアジアを歴訪していて、これまでに明言してはいないものの、下院議長として25年ぶりに台湾を訪問する可能性があると報じられている。CNNはペロシ氏が2日夜に台北に到着したあと一泊する可能性にも言及している。

ペロシ氏は対中強硬的な姿勢で知られている。天安門事件が起きた2年後の1991年に現場となった天安門広場を訪れ、「中国の民主主義のために犠牲となった人たちに」という横断幕を掲げたこともある。

天安門広場で横断幕を手に持つペロシ氏(1991年)天安門広場で横断幕を手に持つペロシ氏(1991年)

これに強く反対してきたのが「台湾は不可分の領土」だと主張する中国だ。中国外交部の趙立堅・報道官は1日「訪台は重大な結果をもたらす。人民解放軍は絶対に座視せず、必ず断固たる措置をとる」などと警告している。

中国の習近平・国家主席はこれに先立つ7月28日、アメリカのバイデン大統領と電話会談を実施していて、台湾問題について「火遊びをするものは身を焦がす。このことを、アメリカがよく理解するよう望む」などと申し入れた。ペロシ氏の訪台を念頭に置いている可能性がある。

中国は軍事的な威嚇もちらつかせている。台湾海峡を管轄する人民解放軍の東部戦区は建軍記念日にあたる8月1日、「侵攻してくるすべての敵を葬り去る」などとする字幕の入った動画を公開した。

また共産党機関紙・人民日報系「環球時報」の胡錫進・元編集長はTwitterで、ペロシ氏の搭乗機と米軍機を「撃墜しろ(shoot them down)」とツイート。この投稿はのちに削除されたが、2日には「私の知る限りでは、北京は軍事行動を含む対抗策を打ち出している」と再び威嚇した。

バイデン政権のジョン・カービー戦略広報調整官は「議会は独立した機関であり、ペロシ氏が自身で判断することだということを明確にしてきた。議長には台湾を訪問する権利がある」と指摘。「何も変わらない。どちらかによる一方的な現状変更を認めず、台湾独立を支持せず、平和的な手段による解決を望むと繰り返し言ってきた」と強調した。

また、台湾周辺や台湾海峡へのミサイル発射など、中国が対抗措置をとる可能性があるとも話した。

■中国が強硬姿勢とる理由は?

中国は政治の季節を迎えている。今年の秋には5年に一度の共産党大会が開かれ、習近平氏はこれまでの慣例を破って党トップである総書記ポストの3期目入りを窺っている。

これに先立って8月上旬には河北省の避暑地・北戴河(ほくたいが)で非公式の会議が開かれる見通しだ。党大会に向けて長老たちとの意見調整があるこの時期に、アメリカに弱気な姿勢を見せることはできないとみられる。