7月末、アムステルダム中央駅の頭上には「プログレスプライドフラッグ」がはためいていた。   

性の多様性を象徴する6色のレインボー。しかし、近年ではトランスジェンダーカラーの水色・ピンク・白や、POC(有色人種)コミュニティを意味する黒・茶を追加し、より包括性を重視する「プログレスプライドフラッグ」が欧米を中心に用いられている。2018年にアメリカのダニエル・クエイサー氏がデザインしたと言われている性の多様性を象徴する6色のレインボー。しかし、近年ではトランスジェンダーカラーの水色・ピンク・白や、POC(有色人種)コミュニティを意味する黒・茶を追加し、より包括性を重視する「プログレスプライドフラッグ」が欧米を中心に用いられている。2018年にアメリカのダニエル・クエイサー氏がデザインしたと言われている

「これどうぞ」

写真を撮っていると、突然アムステルダム市営交通会社の職員に呼び止められ、レインボーのリストバンドを渡された。8月6日に開催される「カナル(運河)パレード」に合わせたキャンペーンで、台紙を見ると、地下鉄やバス、トラムなどの乗車券が安くなる割引コードが記載されていた。

アムステルダム市営交通会社(GVB)が配布していたリストバンドアムステルダム市営交通会社(GVB)が配布していたリストバンド

強みを活かしつつ「変化を」

イリーネさんは、これまでのカナル・パレードの“パーティ”としての強みを活かしつつ、「もっと柔軟に、コミュニティと一緒に変化していく必要があるのではないか」と指摘する。

例えば、スポンサー企業がなければプライドは運営できない一方で、「レインボー資本主義」「ピンクウォッシング」など商業化への批判の声は根強い。だからこそ、より“倫理的”な企業を選ぶべきだという声を紹介する。

また、企業や観光客が流入することで、「クィアな人たちのセーフスペース」がなくなってしまうという懸念の声に対して、参加者のハードルは低くしつつ、誰もが「アクティビスト」になれるという方向性を打ち出すことが重要ではないかと話す。

カナル・パレード自体も変化が起きていないわけではない。今年のプライドでは、船の先頭集団が「企業」や「政党」ではなく、難民やアジア系のLGBTQ+、人権団体のボートが続くなど、出走の順番に工夫がされていた。

しかし、イリーネさんは、白人シスジェンダー男性中心の「社会構造」そのものが、プライドの運営の内部にも反映されてしまい、そうした権力関係によって周縁化された人たち、LGBTQ+コミュニティ内部の「異なる声」が聞こえないようにされてしまっている点を指摘する。

ただ「楽しいパーティ」として終わらせるのではなく、問題を提起し、参加した人々の議論を促すような仕組みが必要だ、というイリーネさん。世界的にも注目されるカナル・パレードだからこそ、プライドの主催者は「抗議の声をあえて見せていくべきではないか」と語った。   

 

※今回参加した「視察プログラム」は、駐日オランダ王国大使館と国際文化交流を支援する非営利団体DutchCultureにより企画、日本の性的マイノリティに関する複数の団体が招待を受け、現地の性的マイノリティ関連団体などを視察した。