究極の難読地名は急場しのぎの方便だったらしい。紅葉狩りでにぎわう竜神大吊橋の地元・常陸太田市天(け)下(が)野(の)町(ちょう)だ。かの黄門様にまつわるいわれがある▼当地を水戸光圀公が巡視された際、住民らが伝統の獅子舞を披露。これを光圀公が「天下一品」と絶賛したため、住民らは江戸の将軍様の前で上演することに-▼ところが、その際「天下一」と書かれたのぼりを掲げたのを、将軍様が見つけ「誰の許しを得て天下一と称するか」と激怒▼厳罰も受けかねない一行の窮地を、光圀公がとっさにこうとりなした。「常陸国には天下野という村があり、のぼりは天下野一の誤りなり」。以降、村は天下野と書いて「けがの」と読ませるようになった-と伝わる▼難読は昨今の新党も同じだ。民進党の分裂で立憲民主党、希望の党、無所属の会が誕生したが、いずれも理念の違いがあいまいな上、参院や地方組織は民進のまま。これでは党名は違っても読み方は結局「みんしん」だろう。新党は選挙の急場をしのぐ方便だったか▼とはいえ、とっさの方便が後世に続く地名になった例もある。新党も大化けがないとは言い切れない。民進の分裂が天下野ならぬ「けがの功名」になったと言える日が来るのかどうか。(敏)