牛久沼だけではないらしい。カッパ伝説だ。行方市の「手(て)奪(うばい)橋」もその一つ。その昔、地元の殿様が馬にまたがり渡っていると、馬の尻尾をカッパが引っ張っているのに気付き、その腕を切り落としたというのが由来▼カッパは慌てて川に逃げ込んだが、その後、殿様の屋敷を訪ね何とか腕を返してほしい懇願。哀れんだ殿様が腕を返すと、カッパはお礼に腕を元通りに治す秘薬の作り方を伝え、律義にも毎朝欠かさず魚を2匹ずつ屋敷の木にぶら下げ始めた▼が、ある時、木に魚がない。殿様が心配して捜すと、川の上流で腕に傷のあるカッパが死んでいるのが見つかった。このカッパを祭るのが小美玉市の「手(て)接(つぎ)神社」だ▼このほか下妻市の糸(いと)繰(くり)川や高萩市の不動滝などにも伝説があり、土浦市佐野子にはカッパの手と伝わるミイラが残る。茨城はカッパゆかりの水辺が何かと多い▼いたずら好きのユーモラスなカッパだが、民俗学の畑中章宏著「災害と妖怪」(亜紀書房)は水死者への思いの投影があると指摘する。カッパ伝説の多さは水害多発の裏返しかもしれない▼水辺遊びの季節だが、小さな川でも油断は禁物。突然増水し人を引き込むことがある。「屁(へ)のカッパ」などと甘くみるのはご法度だ。(敏)