その仕事はどれだけ「自分ごと」ですか?

仕事との関わり方において、「仕事のオーナーシップ」という観点があります。オーナーシップ(ownership)とは「所有権」の意味です。「仕事のオーナーシップ」とは、平たく言えば、その仕事をどれだけ自分のものとし、責任感や当事者意識を持ってやっているか、そしてその結果として仕事全体に自分の味わいがどれだけ醸し出されるかということです。

いま組織内での仕事は細かに分業化されています。そんな中で、個人は割り振られた仕事をするわけですが、「自分は言われたことはやっているんだから」と、あとのことは他人任せ・上長任せのような意識がある程度出てきます。そしてその意識が過度になった人は、粗雑な仕事で後工程の人に迷惑をかけたり、組織全体のリスクを高めたりするようになります。

あるいは、「全体の成績が上がらないのは上司・組織の問題だから自分には関係ない」「ここの経費がかかりすぎたようだけど、会社のお金だし、まあいいか」として、どこか第三者的な傍観態度で、やり過ごしたりします。こうした意識の人は、仕事を「他人ごと」としてやっているのであり、そこには仕事を「自分ごと」として大事にするオーナーシップがありません。

家を考えてみてもそうでしょう。賃貸物件に住んでいる人は、家の扱いがどこか雑で乱暴になります。それは家が他人の持ち物だからです。ところが自分の家を買った人は、それを大事に使おうとします。そして、住まう家主の性格がより濃く家のたたずまいとして表れるようになります。

その仕事が自分ごとであれば「意識の目」は自然と大きく開く

目の前の仕事を「自分ごと化」させているかどうかはいろいろなところに表れます。例えば、品質意識。上司や顧客に見えない部分であっても、ていねいに仕上げようとするこだわりがあるかどうか。あるいは、協働意識。自分の担当範囲外であっても、目配り・気配りがあるかどうか。さらには、誇り。その道のプロとして自負心を持っているかどうか、など。もし、こうした自問に強くYESと答えられるなら、あなたは仕事を自分ごとにしているといえるでしょう。

では、仕事の「自分ごと化」と「意識の目」の関連について、少し詳しく触れましょう。

組織の中で自分に任された業務というものをどうながめながら進めるか、それには個々でかなりの違いがあります。ここで言う「ながめる」とは、肉眼で見ること以上に、「意識の目」で見ることを含みます。

「意識の目」が見る範囲――ここではそれを「意識の視界(スコープ)」と呼びます――には下図の4つの要素があります。すなわち、[1]業務そのもの、[2]業務の周辺にある副次的なもの、[3]顧客への目線、[4]経営への目線です。


職場には、担当業務を自分の都合だけで見る人、言い換えると、与えられた仕事を及第点でクリアすることしか考えない人がいます。つまり全体観や周囲への配慮、仕事を通じての探求心といったものが欠けている仕事態度です。仕事とは金を得るための労役であり、自分が起こす労働や時間は最低限で済ませたいという心持ちがそうさせるのでしょう。こうした人の「意識の視界(スコープ)」は、とても狭く暗くなっています。


それとは逆に、意識の視界が広く明るい人もいます。業務そのものをしっかり見つめることはもちろん、前工程・後工程の人に気配りをし、上司や部下・メンバーに対して目配りもする。たとえ自分がじかに顧客に接していなくても、自分の業務の質がどう末端の顧客に影響を与えるかがイメージできる。また、自分が判断・行動するときに、経営側の意思・方針とどう整合性があるのか、ないのかを考える。


こうした「意識の視界」差は能力や性格の差によって生じるというより、仕事を「自分ごと」にしているか、していないかの差によるものです。

ジョブ型雇用・リモートワークによる業務の分断が進むほど「意識の視界」が重要

事業組織にとって「優れた人材」とはどんな人材でしょうか。その分野の知識やスキルを保持した人でしょうか。知識やスキルを十分に保持していても、仕事を「自分ごと」にできず、「意識の視野」が狭く・暗くなっている場合が起こりえます。

能力の発揮は、意識の醸成と不可分です。あらためて言わずもがなですが、人材育成において重要なことは、知識やスキル習得よりも一段下にある「意識の醸成」層に目を向け、手を下すことです。ジョブ型雇用の拡大や、リモートワークによる業務の分断が進めば進むほど、個々が自分の仕事をとらえる「意識の視界」具合は見逃せない観点になってきます。