金縛りになる理由は、実は睡眠障害のひとつであるということをご存知ですか。寝ている時に突然体が動かなくなる金縛りは、怖い夢を見たあとになることが多く、幽霊を見てしまったなど恐ろしい思いをしたことのある人も少なくありません。なぜ金縛りになるのか、詳しい理由やメカニズムについて解説します。

金縛りが起こる医学的理由

金縛りが起こる理由とはどのようなものなのでしょうか。金縛りは、医学的にその理由が証明されています。金縛りが起こる医学的理由について解説します。

金縛り=「睡眠麻痺」

金縛りは実は、睡眠麻痺という睡眠障害の一種です。私たちの睡眠は、深い眠りである「ノンレム睡眠」から始まり、浅い眠りである「レム睡眠」に移行し、これを一晩に数回繰り返しています。

深い眠りのノンレム睡眠では、脳も体も眠っていますが、浅い眠りのレム睡眠では脳だけが半分起きているため、リアルな内容の夢を見やすい状態です。

金縛りは、何からの原因でレム睡眠から始まることで、目が醒めている時に近い脳の状態と筋肉が弛緩して体が動かない状態が極端になるために起こるといわれています。

つまり金縛りは、ノンレム睡眠とレム睡眠の規則正しいバランスが崩れることで、睡眠麻痺が起こっている状態をいいます。

睡眠麻痺は病気?

睡眠麻痺は、 医学的な病名として、反復性孤発性睡眠麻痺といわれ、睡眠障害のひとつです。つまり金縛りは、心霊現象ではありません。

睡眠麻痺は健康な人でも起こり、特に珍しいものではありませんが、過眠症(ナルコレプシー)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)など精神的な疾患に伴って起こることもあります。

金縛り中に幽霊や幻覚が見えた?その理由

睡眠麻痺中は、脳は起きているけれど体は眠っている状態です。ですから、起きているときのように体を動かせるような気になるものの、実際は体を動かすことができず、ストレスが溜まります。

このときの押さえつけられている感じや息苦しさが悪夢になり、しかも内容がリアルであるため、実際に幽霊が現れたように見えるのです。

ちなみに、浅い眠りのレム睡眠時は、恐怖や不安といったマイナスの情動に深く関わる、脳の扁桃体という部分の活動が活発になることがわかっています。

金縛り状態の睡眠麻痺中には怖い夢を見やすく、恐ろしい光景や幽霊などが夢に現れやすいのはそのためであるといわれます。

認知症のひとつであるレビー小体型認知症では、REM睡眠期の行動異常が特徴です。ビビッドな幻覚や幻視の訴えのほか、睡眠時に夢をみて金縛りが起こらないために体が激しく動き一緒に寝ているパートナーが怪我をすることも報告されています。

金縛りが多い人にも理由があった

金縛りは、ある理由によってなりやすくなります。金縛りが多い人によくある特徴について解説します。

昼寝のし過ぎなど睡眠が不規則になりがち

朝遅く起きたり昼寝をし過ぎたりすると、夜眠るべき時間に眠くならずに、睡眠の質が落ちてしまいます。逆に、睡眠不足もよくありません。睡眠リズムが不規則だと、レム睡眠とノンレム睡眠のリズムも不規則になり、睡眠麻痺を起こしやすくなります。

ストレスや疲労が溜まっている

ストレスや過度の疲労を感じていると、自律神経がバランスを崩し、精神的に不安定になりやすくなります。

自律神経は、体のリズムやホルモンの分泌にも深く関わりがあるため、このバランスが崩れることで睡眠の質が下がり、睡眠麻痺を起こしやすくなるのです。睡眠麻痺は、自律神経の失調症状のひとつでもあります。

仰向けで寝ることが多い

睡眠麻痺は、仰向けの姿勢で寝た場合に起こりやすいといわれています。仰向けの姿勢は、横向きに寝た状態よりも力が抜けやすいため、そのことが睡眠麻痺になりやすい原因なのかもしれません。

金縛りになったときの解き方は?

金縛りになるのは、数秒から数十秒とほんの短い間です。しかし、体験している本人にとってはとてつもなく長い時間に感じられ、そこで恐ろしい幻覚を見ることが多いため、その苦しさがさらに時間を長く感じさせます。

金縛りによって見る恐ろしいものは、脳がパニックを起こして無理やり創り出されたものなので、解くためには「これは幻なのだ」と冷静になることです。

ここで恐ろしいことを想像するとそれが夢に反映され、リアルでショッキングなものを目にしてしまう可能性があります。金縛りにあったときは、「大丈夫、大丈夫」と自分を安心させ、心を落ち着けるようにしましょう。

生活習慣の改善が予防になる

睡眠麻痺を予防するためには、規則正しい生活や適度な運動など、睡眠の質を高める生活をすることです。ストレスを溜めないよう、うまく発散することも大切です。

健康的な生活をすることで、睡眠リズムが整い、金縛りにあいづらくなります。

まとめ

金縛りは心霊現象ではなく、今では世界中で医学的根拠のあるものだとされています。ですから、金縛りにあったからといって「何かに取り憑かれているのではないか」と過剰に怯える必要はありません。

規則正しい生活やストレスを溜めないような毎日を過ごし、心も体も健康的な毎日を送りましょう。