左半身のしびれを感じた際は、重大な病気を疑う方もいるでしょう。手足のしびれ等で自律神経のバランスが崩れていることが原因だと考える人もいますが、しびれの症状に関して、安易な自己判断は禁物です。そこで今回は、左半身のしびれの原因や手足のしびれ、受診先、対策法などについて詳しくご紹介します。

左半身のしびれは基本的には自律神経失調症とは関係ない

左半身のしびれを感じると、自律神経の乱れが原因かもしれない、と思う人もいるでしょう。自律神経の乱れ(自律神経失調症)とは、自律神経のバランスが崩れ、さまざまな症状が現れた状態です。しかし、自律神経のバランスが崩れたからといって、基本的には「左半身」のしびれは起こりません。

自律神経が乱れることで起こる症状

内臓などの働きを調整する役割の「自律神経」が乱れることで、身体だけでなく心にも様々な影響がでます。自律神経には、昼など活動しているときに活発に働く「交感神経」と夜などリラックスしているときに活発に働く「副交感神経」があります。この2つの神経がバランスを取りながら働くことで、健康が保たれています。

しかし、精神的なストレスや過労、不規則な生活によって自律神経が乱れると、緊張感や不安が高まります。その結果、吐き気や全身のだるさ、肩こり、頭痛、めまい、動悸などさまざまな症状が現れます。自律神経失調症それ自体では基本的にしびれを生じることはありません。もしあるとすれば、それ合併する慢性もしくは急性の過呼吸症候群による「両側」手足のしびれ感、もしくは「両側」手足の強い冷えによるしびれ類似感覚ということくらいでしょう。

しびれが生じる原因

ここでは、しびれが生じる原因をご紹介します。

脊髄や神経根が圧迫される病気

脳に直結し、手足に伸びる末梢神経の幹にあたる脊髄や神経根は、異常が起きると手足(脚)にしびれが生じます。頚椎症、脊柱管狭窄症、後縦靱帯骨化症、脊椎すべり症、椎間板ヘルニアなどが原因となりえます。

末梢神経が圧迫される病気

手足(脚)の末梢神経が靱帯などの体組織に圧迫されてしびれが起こる場合があります。手根管症候群、胸郭出口症候群、肘部管症候群、足根管症候群などが有名です。

血流が悪い

しびれやいたみは、血流の流れが悪くなることで起こります。これは、手脚の血流が障害されることで起こり、動脈硬化による閉塞性動脈硬化症や原因不明のバージャー病、血栓塞栓により急激に血流が途絶える急性動脈閉塞症などがあります。

糖尿病・その他の珍しい末梢神経疾患

糖尿病をそのままにしておくと末梢神経に障害が起こり、手足のしびれ(基本的には温痛覚脱失)、痛みや麻痺が出てくる場合があります。糖尿病の場合は、両足・両手といった左右対称に症状が現れます。同じようなパターンの症状が、ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、脚気(かっけ)による末梢神経障害などでも起こりえます。

外力による神経の直接圧迫

長時間、神経が圧迫されるよう状況が起こった場合、しびれや麻痺が起きることがあります。たとえば、長時間足を組んでいたことにより起こる腓骨(ひこつ)神経障害、腕枕をしていた後に起こるハネムーン麻痺、リュックサックによっておこるリュックサック(バックパック)麻痺、肘をついていた時に起きる尺骨神経障害などが有名です。

よく似ていますが長く正座をした後で脚がしびれる症状は、神経の直接圧迫というよりは一時的に脚の血流が遮断され、それが再開されることで起こるといわれています。

心因性

あまり多くはありませんが、心因性にしびれや麻痺を生じる場合もあります。その場合は身体症状症(身体表現性障害)、解離性障害など診断されます。

しびれから予測される主な病気

次に、身体のどの部分がしびれているかで予測される主な病気を紹介します。

◆一側上下肢(=左半身または右半身のしびれ、麻痺):脳卒中、場合により脳腫瘍など
◆一側上肢:頸椎症、手根管症候群、肘部管症候群、胸郭出口症候群など
◆一側下肢:椎間板ヘルニア、足根管症候群、バージャー病、閉塞性動脈硬化症、静脈血栓症など
◆一側末梢: 手根管症候群、肘部管症候群、足根管症候群など(両側が罹患すれば両側)
◆両側下肢:糖尿病性神経障害、脊髄損傷、脊髄腫瘍、ギランバレー症候群など
◆四肢末梢:糖尿病性神経障害、多発性ニューロパチー、多発性神経炎、

左半身のしびれの原因となる「脳卒中」に関しては、後程詳しく説明します。

自律神経失調症の対策

自律神経失調症は、生活習慣を整えることで改善しやすくなります。次のように対策しましょう。

規則正しい生活

規則正しい生活は、自律神経のバランスを整えます。毎日同じ時間に起床・就寝する、1日3食同じ時間に食べるなど、規則正しい生活を心がけましょう。

適度な運動

適度な運動も自律神経のバランスを整えるとされています。激しい運動はストレスの原因になる可能性があるため、無理は禁物です。また、運動する時間を作ることが難しい場合は、普段の生活で可能な限り階段を使うなどして、少しでも運動しましょう。

ストレス解消

ストレスを解消することで自律神経のバランスが整いやすくなります。規則正しい生活や適度な運動に加え、趣味を楽しむ、好きな人と過ごすなどしてストレスをこまめに解消しましょう。また、ストレスの原因を遠ざけて、できるだけストレスを受けないように過ごすことも重要です。

左半身(上下肢)のしびれの原因

左半身(上下肢)のしびれが起きる原因としてもっとも考えやすいのは脳卒中(特に脳梗塞、脳出血)です。

脳卒中とは、脳の血管が破けたり詰まったりして、脳細胞に酸素と栄養が届かなくなることで脳機能に異常が起きる病気です。片側に偏った痛みやしびれ、違和感などは脳卒中の代表的な症状です。左半身のしびれだけではなく、口を動かしにくい、足がもつれて歩けない、何を話しているか理解できない、激しい頭痛などが現れることがあります。

しびれを感じたときの受診先

左半身でも右半身でも急に半身(上下肢)のしびれ(麻痺)を感じた場合は脳梗塞や脳出血が疑われるため、緊急に救急車で救急隊の推奨する(脳卒中に対する緊急処置が可能な)病院を受診しましょう。

慢性的な症状の場合の受診先は、整形外科もしくは神経内科です。整形外科のほうがアクセスが容易なことが多いですが、内科的疾患も含めた総合的な診断能力は神経内科のほうが高いといえるでしょう。

それらの専門科で自律神経失調や心因的なしびれが疑われた場合は心療内科や精神科を紹介してもらうとよいでしょう。