人気子ども番組「セサミストリート」をテーマにした米国の遊園地で、黒人の女の子2人がキャラクターと触れ合おうとしたところ、キャラクターが拒否して通り過ぎたように見える動画がSNSに投稿された。「人種差別ではないか」との批判が集まり、遊園地側は「誤解を招いた」として謝罪した。これまでも、企業の対応が人種差別的だとして問題になるケースが国内外で発生している。場合によっては、訴訟や不買などの経営リスクにつながる恐れもある。

 Instagramに動画が投稿されたのは7月16日。米東部ペンシルベニア州にある「セサミプレイス」で、パレード中に黒人の女の子2人が人気キャラクターのロジータに触れ合おうとしたところ、キャラクターが手と首を横に振り、拒否して通り過ぎたように見える内容が映されていた。

 動画を投稿した母親は、このキャラクターが女の子たちに「露骨にNoと言った後、隣の白人の女の子にはハグをした」と投稿。「セサミプレイスには二度と足を踏み入れない」と書き込んだ。

 セサミプレイス側は当初、「コスチュームを着たパフォーマーは低い位置が見えづらく、子どものハグの要求に気付けない場合がある」などとし、「意図的に無視したわけではない」と説明したが、これがさらに批判を呼んだ。その後、「この家族が経験したことに心から謝罪する。来場客が楽しめるよう、従業員への訓練を行う」とInstagramに投稿した。

●H&Mや日清食品も過去に直面

 今回の問題は、米メディア各社も大きく取り上げている。Twitter上では、セサミプレイスで過去にも黒人の子どもたちが、同様の差別的な対応を受けたとする複数の動画が投稿されており、セサミプレイスへの批判が日に日に高まっている。

 1969年に米国で放送が始まったセサミストリートは、人種差別や男女格差、貧困などの問題を子どもたちに考えてもらおうと、積極的な取り組みを続けてきた。2017年には自閉症のあるキャラクター「ジュリア」が登場した。21年には初めてアジア系のキャラクター「ジヨン」が登場し話題になった。

 マイノリティーへの理解普及を目指したキャラクター作りなど、先進的な取り組みが印象的だっただけに、今回のセサミパークでの事案は、驚きとともに、失望も大きい。

 企業の対応が人種差別的だとして批判を招いた事例は、過去にも国内外で発生している。

 18年にはスウェーデンの衣料品大手「H&M」がオンラインストアに載せていた写真に批判が集まった。黒人の男の子が着ているパーカーに「ジャングルで一番クールなサル」との文字が書かれており、欧米を中心に非難が殺到。同社は謝罪し、問題となった写真を削除した。

 19年には、日清食品ホールディングスが作成したカップヌードルのアニメ動画広告で、起用したテニスプレイヤーの大坂なおみ選手の肌の色が「実際よりも白く描かれている」として国内外から批判が相次いだ。同社は「配慮が不十分だった」として謝罪し、動画を削除した。

●企業が取るべき人権課題への取り組みとは?

 近年、人種差別だけでなく、長時間労働による過労死や職場内でのセクハラ・パワハラなど、企業が関わる「人権問題」への関心が高まっている。「人権」の観点から企業活動を見直そうとする動きは国内外で広がっており、日本政府は20年、「『ビジネスと人権』に関する行動計画」を策定した。

 これを受けて法務省が21年に作成した報告書では、企業が人権課題への関心を払わずに放置していると「経営リスクになりうる」と警鐘を鳴らしている。

 具体的には、(1)訴訟や行政罰といった法務上のリスク(2)ストライキや人材流出といったオペレーショナルリスク(3)不買運動やSNSでの炎上などといったレピュテーション(評判)リスク(4)株価下落や投資の引揚げといった財務リスク――を挙げる。

 先述のH&Mや日清食品のように、広告表現における差別的な要素が批判される場合は、企業側が謝罪などに追い込まれる恐れがある。今回のセサミプレイスの事例のように、SNSで批判・炎上が続くと、ブランドイメージに悪影響を及ぼしかねない。ブランド価値が低下すると、顧客離れなどの弊害を生み、企業活動にも悪影響をもたらす。

 こうしたリスクを避けるために、企業はどのような対策を取る必要があるのか。報告書は、人権方針の策定、教育・研修の実施、外部への情報公開――などの取り組みを挙げる。

 企業としての人権ポリシーを、最上層レベルによる承認のもと、明確に作成することが求められる。影響が生じる可能性のある人権リスクを洗い出し、教育・研修を通じて社員に共有する。一連の取り組みを自社のWebサイトなどを通じて外部へ公開し、全てのステークホルダーに対して説明をする。

 今回のセサミプレイスの事案では、女の子の母親が「訴訟の可能性も含め検討している」と米メディアに述べており、問題は長期化する可能性もある。日本企業にとっても、決して対岸の火事ではないだろう。今回の一件を、企業としての人権に対する取り組みを今一度見直す、重大な教訓と捉える必要がありそうだ。