バンダイナムコアミューズメントが運営するカプセルトイ専門店「ガシャポンのデパート」が急激に増えている。1、2号店を2020年8月にオープンした後、全国28店舗で営業するまでになった(7月16日時点)。

 現在、第4次カプセルトイブームが到来しているという。「ガシャポンのデパートのメインターゲット」は20〜30代の女性だが、ファミリー層なども取り込んで売り上げ目標の2倍を達成している。仕掛け人が語ったブームの実像とは。

●ガシャポンは年々進化している

 ガシャポンのデパートではさまざまな商品を販売しているが、需要があるのはキャラクター商品ばかりではない。

 現在、同社にガシャポンの中身を供給するメーカーは30社ほど。月にだいたい200アイテムほどが発売されるという。そのなかで話題になりやすいのはユニークな商品だ。

 例えば「バスの降車ボタン」。日常生活では、一度に押せる人は1人だけで、いたずらに何度も押すわけにもいかない。それがカプセルトイになることで、いくらでも押し放題。特に若い女性は、そんなささいな体験で身近な人と盛り上がったり、SNSなどにアップしたりするといった楽しみ方をしているという。

●テーブルと椅子を置いてある理由

 また「ガシャポンで売られている商品はガシャポンだけでしか手に入らない」というのも、ユニークさの一要因になる。

 「特に他のメーカーとコラボしたような商品は希少価値が高いですね。私が持っているものだと『金鳥の蚊取り線香』や『永谷園のあさげ』のデザインを使用したポーチなどがあります。

 みんな知っている商品がコラボアイテムになると『え、なにそれ』と話題になります。実際、私は飲食店で『それ、なんですか』と全然知らない人から声かけられた経験があります」(経営企画部 コーポレートコミュニケーション課 有川由美氏)

 ガシャポンのアイテムは基本的に再販されないことが多いので、見つけたときに購入しておかないと、二度と姿を見ることはないという。

 「私自身がよく経験していることなので『みんなにも自慢できる』という気持ちまで喚起されるというのは、うまくできているな、と感じます(笑)」(有川氏)

 月に200アイテム、多いときでは300アイテムが新しく生まれるガシャポンの世界。これだけ多いと、600面から800面ほどのガシャポンが並ぶ一般的な「ガシャポンのデパート」でも、3〜4カ月で商品が入れ替わる計算になる(1台のガシャポンにつき、商品を入れるスペースは2つか3つあり、そのひとつひとつを「面」と呼ぶ)。

 それだけアイテム数が多いことも、ガシャポンをずらっと並べた「ガシャポンのデパート」の価値につながる。

 「ガシャポンのデパート」には、テーブルや椅子が設置され、ゆっくりくつろげるスペースも用意してある。これは単なる休憩スペースではない。

 例えば「キン消し(キン肉マン消しゴムの略称)」に代表されるように、カプセルに完成品が入っているのが従来の商品だった。ところが最近は、カプセルを開けてから組み立てるものも増えてきた。

 完成品が入っているものだと、最大で直径7.5センチのカプセルに収まるサイズまでしか販売できない。しかし、組み立て方式にすると、最終的にカプセルより大きくなるアイテムも扱える。

●「ガシャ活」を定着させたい

 ガシャポンのデパートを訪れた家族連れが、店内でいったんバラバラに別れ、それぞれが買ってきた商品を持ち寄ってテーブルに集合する。そして、お互いのセレクトを品評しながら組み立てるといった、買って終わりではない楽しみ方を提供することも、このスペースの役割のひとつだ。

 また、ジオラマ背景をずらっと並べたフォトブースも用意している。購入したものをそこに置いて、写真を撮ってもらうためのものだ。

 「最近、ぬいぐるみを連れ歩いて撮影する『ぬい撮り』という遊びがありますが、それの派生として『ガシャ撮り』の提案です。大人世代が子どもの頃に楽しんだのと同じように、というだけではなく、専門店だからこそ、より幅広い楽しみ方、新しい楽しみ方を提供できないかと試行錯誤しているところです」(ベンダー営業部 ベンダー開発課 佐々木晶士マネージャー)

 新しい楽しみ方という点では『ガシャポン活動』略して『ガシャ活』を定着させたいという思いもある。

 「『こんな商品があるんだ。欲しいな』と知るところから、実際にお金を入れて、『何が出るかな』とワクワクしながらカプセルをゲットし、商品によっては組み立て、完成したら写真を撮ったり、部屋に飾ったり、友達と交換したり。

 その全ての行程を『ガシャ活』というキーワードで盛り上げようとしています。特にターゲットにしている20〜30代の女性だと、買って終わりではなく、インスタグラムなどに写真をアップしている方も多いので、ここからいろいろな展開が考えられるはずです」(佐々木氏)

●約50年の歴史あるガシャポンにさらなる発展を

 「ガシャポンのデパート」は大型商業施設で展開しているが周辺店舗にも波及効果があるという。「ガシャポンのデパート」自体にかなりの集客効果があり、訪れた顧客が隣にある遊戯施設で遊ぶケースも多いという。

 「例えば、隣でわれわれが展開している別業態を初めて目にする機会にもなるでしょう。好影響を受けるのは私たちだけではありません。

 特に大型商業施設では奥まったところまで、人はなかなか足を運びません。例えば、『ガシャポンのデパートの池袋総本店』があるフロアにはレストランが並んでいます。これまでは最初から食事目的の人しか来なかった。ところが『ガシャポンのデパート』ができたことで、そこからレストランに人が流れるようになったそうです」(有川氏)

 バンダイナムコアミューズメントの直営店は全国に240店舗ほど。21年7月現在で「ガシャポンのデパート」は28店舗となっているが、今後、直営店を拠点に全国幅広く出店を進めていく予定だ。

 「バンダイナムコホールディングスグループ全体としても、新たな楽しみ方とともに『ガシャポンのデパート』が全国に展開してくことは、非常にシナジーが高い。

 まだまだ生まれたばかりでブランドとしては確立していないので、主要都市から広めていき、私の街には『ガシャポンのデパート』があると自慢していただけるような存在を目指します」(佐々木氏)

 ガシャポンは来年、誕生45周年を迎える。「キン消し」「コップのフチ子」など、何度かのブームを経て、親・子・孫と3世代にわたるほどの歴史を積み上げてきた。

 「ゲームセンターでクレーンゲームをやったことがない、目にしたことがないという人はまだまだいますが、まったくガシャポンに触れてこなかったという人は、あまり聞いたことがありません。

 空いている大きな売り場をどう埋めるかというところからスタートした『ガシャポンのデパート』ですが、幅広い層に受け入れられてきたガシャポンの底力を再認識させられたと同時に、だからこそ、まだまだポテンシャルを感じています。

 ここから先も世代を越えて楽しめる商品として、さらにガシャポンの魅力を高めていきたいですね」(佐々木氏)

(唐仁原俊博)