駅ナカに“日本最小級”のローソンが続々とできている。いわゆる“駅ナカコンビニ”だけでなく、駅のホーム上や改札付近にも小さな店舗ができているのだ。最も小さな店舗は売り場面積が約6.6平方メートルで、“日本最小級”のサイズになっている。ローソンは今後も駅ナカへの出店を進めていく計画だが、目先の売り上げ増だけでなく、長期的な布石も踏まえた戦略だという。背景には何があるのか。ローソンの店舗開発責任者に話を聞いた。

●駅ナカに進出

 ローソンは2005年から東急の駅ナカ店舗「toks(トークス)」と同社のノウハウを融合させた「LAWSON+toks(ローソンプラストークス)」を展開しており、店舗数は31店舗にまで増えている(19年1月現在、以下同)。また、15年には東京メトロの駅ナカ店舗「メトロス」と組んだ「ローソンメトロス」を展開し、28店舗にまで増えている。いずれも、東急と東京メトロの物販系子会社とローソンがフランチャイズチェーン(FC)契約を結び、運営ノウハウを提供している。さらに、ローソンは17年に大阪市営地下鉄駅構内売店の運営事業者となり、「ローソンOSL」を40店舗運営している。

 では、駅ナカ店舗は通常の店舗とどう違うのだろうか。通常店舗の品ぞろえ数は約3500品だが、駅ナカ店舗は約500〜800品となっている。担当者によると、駅ナカ店舗という特性上、簡易的な主食(おにぎりやパン)、バックに入るサイズで手軽に食べられる菓子、緊急購買性の強い日用雑貨商品などを強化しているという。

 駅ナカ店舗は立地によっても、品ぞろえが変わる。都市部でオフィスビルなどに直結しているような駅構内の店舗では、“健康”を打ち出した菓子やグリーンスムージーなどをそろえている。出発駅にあたる郊外の住宅が多い駅の店舗では、子ども連れの客が多いので、ボリュームのある菓子や果汁系ジュースを強化している。

 このように、駅ナカへ積極的に進出しているのはローソンだけではない。セブン-イレブンはJR西日本や新京成電鉄の駅構内に出店している。ファミリーマートも名古屋鉄道や西武鉄道などの駅構内へ出店している。

●駅ナカ店舗の“三種の神器”

 JR東日本リテールネットが運営するNewDaysのように、鉄道事業者が独自に店舗を運営する選択肢もあるのに、なぜ東急や東京メトロは提携しているのだろうか。店舗開発を手掛けるローソンの開発本部副本部長兼法人開発部部長の垣内昇氏は「(鉄道事業者に)運営ノウハウの提供を受けるメリットがあるため」と説明する。

 かつて駅ナカ店舗では「たばこ、雑誌、新聞」という“三種の神器”が根強く売れていた。品ぞろえを頻繁に変えなくても、ビジネスとして成り立っていた。しかし、これらを購入するお客の数は減りつつある。さらに、コンビニや量販店などが商品力を向上させた結果、消費者の選択肢は増えていった。いくら立地に優れている駅ナカ店舗であっても、魅力ある品ぞろえをしなければ競争に勝てなくなってきた。

 駅ナカ店舗の売れ筋も変化してきている。ローソンの担当者によると、売れ筋がかつての三種の神器から、おにぎり、調理パン、ベーカリーに変化してきているという。働く女性の増加や生産性向上が叫ばれる中で、限られた時間で手軽に食事を済ませたいというニーズが高まっていることが背景にあるとみられる。仮に鉄道事業者が自社グループでおにぎりやパンなどを開発しようとすると、メーカーや問屋などと協業する必要があるが、そこまでできる余裕がないという。

●単独での投資は限界

 単独で会計や物流システムへの投資を行うのには限界があるという側面もある。垣内氏によると、セルフレジの普及が象徴するように、決済方法が多様化してきている。また、発注と物流を融合させるシステムも進化し続けないといけない。ローソンのシステムを活用すれば、発注がスムーズになるだけでなく、駅の外にある店舗に商品を納品したついでに、駅ナカ店舗へも商品を運んでもらえる。「鉄道事業者のお困りごとを解決できる」(垣内氏)のだ。

 通常のコンビニでは、品ぞろえなどをアドバイスするスーパーバイザー(SV)が担当店舗を定期的に訪問している。一方、ローソンでは駅ナカ店舗専属のSVを配属しているという。例えば、東急で成果を出した手法を、東京メトロにも横展開することで、駅ナカ店舗のブラッシュアップを図っている。ローソンの担当者によると、駅ナカ店舗は通常店舗と比べて在庫を置くスペースが少ないため、発注方法を工夫する必要があるという。例えば、設定した在庫を下回ると自動的に発注する仕組みを構築し、品切れを防止している。

●売り上げだけではない本当の狙い

 垣内氏は今後も鉄道事業者との思惑が一致すれば、駅ナカへの出店を今後も増やしていきたいという。しかも、駅ナカに進出する狙いは単なる目先の売り上げ増ではないと説明する。

 今後、少子高齢化や都市部への人口集中により、車の所有者は減り続けるとみられている。すると、鉄道やバスといった公共交通機関を利用するお客が増えることになる。

 お客の“動線上”にローソンの店舗をつくることには、さまざまなメリットがある。例えば、「ローソン」の看板を目にする機会が増えることで、ブランドに対する認知度が向上する。さらに、駅ナカ店舗でローソンの新商品を目にしたり、購入したりすることで、別の店舗での購買につなげられる。新たなサービスを提供したり告知したりする場になりうるのだ。

 新たなサービス拠点をつくる狙いもある。コンビニは単なる商品を売る場ではなく、公共料金の支払いやコンサートチケットの販売といったように、さまざまなサービスを提供する場に変わりつつある。例えば、ローソンでは、生鮮スーパーの食材をアプリで朝に注文して、夕方に店舗で受け取れる「ローソンフレッシュピック」というサービスを展開している。現在はスペースの制約があるため駅ナカ店舗は物販中心となっているが、今後、注文した食材を駅で受け取ることも可能になる。今のうちに駅ナカという場を押さえておけば、新サービスを展開する際、鉄道事業者と優先的に交渉ができるというわけだ。

 このように、ローソンは着々と駅ナカ店舗を展開することで、将来への布石を打っているのだ。