このところ、コンビニエンスストアの24時間営業の是非を発端に、コンビニ本部と加盟店との関係がクローズアップされている。人手不足の深刻化と人件費の高騰で、深夜営業の従業員確保が難しくなったセブン-イレブン(以下、セブン)の加盟店が、独自判断で営業時間を短縮したことに対して、セブン本部がペナルティーや契約解除の方針を示した。

 これにコンビニオーナーと一般的に呼ばれる加盟店側が反発、一部加盟店で構成する「コンビニ加盟店ユニオン」が時短営業などを求めてセブンに対して団体交渉に応じるよう要求した。東京都や岡山県の労働委員会は、加盟店と本部の間に事実上の労働関係があるとしてコンビニ本部に団体交渉に応じるよう命じたが、中労委ではこの判断を覆し、フランチャイズ(以下、FC)契約に基づくコンビニの本部と加盟店は独立した事業者であり、労働者には当たらないという認識を示した。

●セブンが異例の「態度軟化」

 マスコミに大きく取り上げられたこの議論は、コンビニの24時間営業は必要なのか、という波紋を呼んだ。結果として消費者の意見は、必ずしもコンビニが24時間営業していなくても問題はない、という声が大勢を占めていたことで、コンビニ本部の24時間営業死守の姿勢に対して批判が集まることになった。こうした中で、発端となったセブン本部も、時短営業に関する実験を行うとし、また時短営業に踏み切った加盟店に対しても強硬な制裁措置は行わないと態度を軟化させた。4月には混乱の責任を取るとして、セブン経営陣の更迭という事態にまで至ったことはご存じの経緯だ。

 こうした状況に、経済産業省はコンビニ各社に対して人手不足を是正する計画づくりを「要請」した。重要な社会インフラであるコンビニの経営安定が必要、と判断したとのことだが、FC契約に基づくコンビニ本部と加盟店の紛争に関しては、既存の法律では対処しづらいため、根拠法のない「任意の要請」という異例の措置となったのだという。

 FC契約とは、日本フランチャイズ協会によれば、「事業者(「フランチャイザー」と呼ぶ)が他の事業者(「フランチャイジー」と呼ぶ)との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識、及び経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係をいう」と定義されている。 

 ざっくり言えば、コンビニ本部のようなビジネスモデルの提供者と、そのビジネスモデルの賛同者である加盟店が、パートナーとして、共に当該ビジネスを発展させていくという仕組みであり、法的には対等のパートナーであるという前提がある。このため、労働法や下請法といった法的規制の対象ではなく、行政も対応がしづらいようだ(下図)。

●「加盟店経営者」とは何なのか?

 ここで整理しておくと、今回、この問題の対象となっているのは、コンビニ加盟店で働く従業員ではなく、加盟店経営者という立場の人たちだ。従業員の方々は、労働法の対象であるため、問題が起こった場合には、法律にのっとった解決の道があるが、加盟店経営者はその枠外だ。なぜコンビニ加盟店経営者にこうした問題が生じるのか。そもそもコンビニ以外の小売業の店舗は直営店方式が主流であるのに、コンビニだけがほぼFC店によって構成されているのはなぜなのか、少し昔の話を振り返ってみよう。

 1970年代頃から、コンビニは、その代表格セブン-イレブンの名の通り、朝7時から深夜11時まで開いている早朝深夜に便利な店として世に広まっていった。当初は24時間営業を前提とはしていなかったが、それでも16時間は営業していたので、直営店で社員に早朝深夜の割り増し賃金を払って仕事をしてもらうやり方では採算が厳しいことは明白だった。 コンビニ本部がそこで、目を付けたのが、当時、既にスーパーなどのチェーン店に押されて経営が苦しくなっていた零細小売店(食料品店、酒店、よろずやなどの独立個人経営のお店のイメージ)である。

 既に自分の所有する店を営業していたので改装費だけで店舗を確保することができ、商人としての経験も持っているので接客経験も豊富、その上、業績が低迷していたため、何か新しい商売を始めなければ生きていけないといった危機感も強い。こうした零細小売業に加盟店として転換してもらうことで、初期のコンビニのFC店舗網は広がっていった。

 コンビニというチェーンに転換するということは零細小売店にとっても、メリットは大きかった。個人で店を運営する際には、商品選択、仕入の仕方、物流、お金の管理などについて全て、自らの経験と判断によって行わねばならなかったのが、コンビニでは本部が基本的なインフラと情報を提供してくれるため、経営に失敗する可能性が圧倒的に低くなった。特にコンビニの競争相手が個人商店であった時代には、その差は歴然としており、コンビニに転換した加盟店は順調に業績を伸ばすことができ、収益も十分に確保できたようだ。

●夫婦交代制という「不文律」

 その代わり、コンビニ本部から求められたのは長時間営業(後には24時間営業が当たり前になる)であり、早朝深夜も営業して少しでも売り上げを拡大することを目指すことだった。(コンビニ本部の収益源は、加盟店の売上総利益の一定比率を上納するロイヤリティーなどであり、売り上げ拡大≒本部の増収となるため)。早朝深夜時間帯は、一般的には来店客数も少なく、加盟店にとって時間当たりでの固定費(人件費、水道光熱費など)の負担は重くなる。しかし、コンビニ本部との当初からの取り決めであるため、採算が合わなかったとしても閉店しますとは言えない。

 この問題に加盟店経営者の多くが選択したのは、経営者夫婦でなるべく長時間シフトに入ることで、アルバイトへの依存を軽減するというものだった。それまでも個人商店主としてエンドレスで仕事をしてきた加盟店経営者にとっては、実際にはあまり負担感もなく行われていたため、こうしたやり方がコンビニ加盟店経営の不文律のようになった。

 勝手な推論にすぎないが、コンビニ本部はこうした不文律を意図的に発生させたのだと思う。少し前まで、コンビニ加盟店の要件の一つが、夫婦で経営に参加できることであったというのだから推して知るべしで、長時間営業を夫婦交代制で乗り切ることを前提としているということだ。直営店でやるのが普通であったチェーンストアの世界で、コンビニはあえてFC契約による加盟店によって展開し、店舗経営者に労働基準法の適用されない仕組みを選んだ。

 長時間労働を厭わない個人商店主をスカウトし、自己責任で利益を追求していく商人魂を刺激して、長時間頑張れば加盟店としても利益をあげられる集団を作り上げたのである。

●「FC契約=ブラック」か?

 ただこの話は、「コンビニFC契約=ブラック」だというために書いている訳ではない。給与で働く従業員とは異なり、働く環境は厳しくても成功すれば、相応の報酬を得ることができるのであれば、そして、そのことを加盟店経営者が納得しているのであれば、別に問題があるわけではない。複数店経営者となって、規模を拡大している加盟店も数多く存在する。

 その仕組みが、長い間、本部と加盟店とが共存共栄する組織として機能したからこそ、コンビニは国内5万店にも及ぶ一大産業として日本に定着したのであろう。ただ、ルールだからといって個別加盟店の事情を加味せず、全ての店に画一的に24時間営業を強制するとなれば、対等の契約関係である以上、紛争になって当然だと言えよう。

 コンビニ本部とは、客観的にみても面倒見の悪いFCチェーンではなく、さまざまな機能を提供する組織である。一般論で、事業における、(1)ヒト、(2)モノ、(3)カネを、本部と加盟店で分担し合う「フランチャイズ」という仕組みは、この3要素に関するリスクを分担するということでもあるのだ。「ヒト≒雇用リスク」、「モノ≒商品やサービスの陳腐化リスク」、「カネ≒財務リスク」と分類してみよう。多くのフランチャイズチェーンでは、こうしたヒト、モノ、カネのいずれも本部ではなく加盟店がリスクを負担するという契約になっている場合は少なくない。

 店舗運営のため、設備投資を負担し店を作り(カネ)、人員を集めて、労務管理、費用負担を行い(ヒト)、営業努力を行うが、本部が商品、サービス維持改善のための追加的投資を怠るケースは多い。この点で、コンビニというフランチャイズビジネスは相対的にみて、「やらずぼったくり」の本部とは言い切れない。

 ヒトに関しては、今回のような問題を引き起こしているわけだが、カネにあたる設備投資に関して、加盟店に投資させて「あとは知らん顔」という訳ではなく、今では、投資は本部の方で負担する方式がほとんどだ。加盟店が大きな債務を背負わされて逃げられなくなる、というようなケースがコンビニチェーンにおいて一般的と言えるかは疑問だ。

 コンビニの出店方式は、かつては前述のような個人商店からの切り替えが多かったため、店舗不動産は加盟店の持ち込み(加盟社所有 これをAタイプ店舗という)が多かった。近年ではそうした個人商店も少なくなったため、加盟店経営者は脱サラ組がほとんどで、店舗は本部が用意した物件を賃貸する(これをCタイプ店舗という)ことがほとんどである(下図)。

 小売店においては、どこに店を構えるかという立地判断が、商売の成否を8割方決めると言われている。脱サラした個人が商売を単独でスタートさせるとしても、これまでに膨大な出退店データを保有しているコンビニの場合、立地判断に関して、加盟店のリスクはかなり軽減されている。 

 そして最もインフラとして整っているのが、商品・サービスの陳腐化を避けるための、コンビニ本部の投資だろう。1970年代にスタートした長時間営業だけが取柄の小型よろずやのような店舗から、コンビニは新商品、新サービスを開発し、改善し続け、今のような社会のインフラとまでいわれるビジネスとなった。この商品・サービスの開発に関しては、コンビニは消費者向けビジネスとして最も成功したモデルの一つであることは間違いない。

 確かにコンビニ本部が加盟店の低収益を踏み台に、高収益をあげているというようにも見える、コンビニ本部の収益構造ではある。一方、本部がこのような高収益をあげ続ける収益基盤が確立されていなければ、新しい商品やサービスの開発に投資し続けることは難しかっただろう。この点で、コンビニの高い「上納金」も、加盟店の利益にもつながる原資となっていたはずだ。

●致命的だった「本部の認識不足」

 コンビニ本部は、今回の件に関しては、ヒトの面での対応に失敗し、加盟店の不信感をフォローできなかった面が大きい。24時間というビジネスモデルを守ることを優先し、そのビジネスモデルで最も重要であるはずの加盟店との協調がおろそかになった。また、コンビニの競争環境が、これまでとは違うステージに入ったとの認識も不足していた。

 本部は、これまでも手厚い加盟店支援で全体利益の拡大を実現してきたという意識があり、本部主導の施策が加盟店の大多数の利益につながると考えた。しかし、現場における人手不足の深刻化は本部の想像を超えていたことに加え、コンビニという業界における競争環境が全く以前とは違うという認識が不足していた。いまや、全国に5万店が普及し、企業の淘汰も進んだため、一部地域を除きセブン、ファミマ、ローソンのほぼ3社間での戦いとなった。昔のような個人商店や弱小チェーンを相手に、商圏を奪えるような時代は完全に終わっている。

 セブン優位とは言われているが、大手小売、大手商社の威信を掛けた競争であり、そう簡単に決着がつくものではない。競争を優先して出店の密度を上げているため、同一チェーン内でのカニバリ(共食い)も激化している。尖兵として最前線で戦っている各コンビニの加盟店の疲弊は相当なものだろう。

 4月に入って、セブンの沖縄進出日程が決定、これによりセブンの全都道府県進出が完了というニュースがリリースされていた。一方、同日に、ファミマの時短営業実験を地域単位で、大規模実施し、参加店舗数は約270店舗になるとのニュースも重なった。コンビニ3社の国内への出店が最終段階を迎え、国内マーケットの飽和を前提とした戦略の切り替えが待ったなしであることを再認識する日となった。セブンの新体制が打ち出した施策は、出店数の削減と既存店の強化だという。

 小売店であるからスクラップ&ビルドは続けていかなければならないが、これからの国内コンビニ市場は、出店数の拡大は収益拡大と直結しない、ということを意識した方向に変わっていかざるを得ない。当たり前のことだが、加盟店の収益確保を実現できないコンビニ本部が、本部だけ収益を得られるというような仕組みが持続できる訳はない(そんなチェーンがあれば、競合が加盟店に誘いかけて、大量に看板替えさせてしまうはず)。

●本部社員の目標設定を変えよ

 コンビニ本部はこうした環境変化に関して手をこまねいていた訳ではなく、現場の省人化に向けた無人レジ、無人店舗などの実験を行って、技術革新によって対策を講じようとはしてきている。ただ、こうしたテクノロジーの導入も一朝一夕に進むわけではなく、その間も現場の苦悩は続いている。

 今、コンビニ本部がやるべきは、本部社員の目標設定を、本部の収益や出店数などから、担当する加盟店の合計収益という項目に変えることではないだろうか。本部と加盟店の収益は長期的には密接な関係にあり、本部収益の追求が最終的には加盟店の利益につながるというのが、かつての本部の論理だろうが、これからは逆に加盟店起点の発想が不可欠だ。

 しかし、いまや巨大企業となったコンビニ本部のサラリーマン社員に本部計数の目標を示せば、その達成のためには加盟店の犠牲に目をつぶってでも、自らの目標達成を優先するのは目に見えている。加盟店収益まで含めた目標管理に方向転換しなければ、「加盟店との対話」など絵に描いた餅になることは間違いない。

 労働力不足という環境変化は、競合企業などとは比較にならない脅威となることは明らかだ。この矢面に立たされる加盟店という運命共同体を支えられない企業に明るい未来はない。これから迎える決算説明会、株主総会などで示されるコンビニ各社の施策にこの視点があるか否かで、加盟店問題への取り組みの本気度が見えてくる。

(中井彰人 中小企業診断士)