大阪府四條畷市(しじょうなわてし)は2017年、異例の方法で女性副市長を選出した。転職サービスを使って副市長候補を公募し、市長自ら書類選考や面接を担当。最終面接には、面接官として若手から管理職まで多くの市役所職員が参加した。約1700人の応募者から選ばれたのは、無料住宅情報誌「スーモマガジン」元編集長の林有理さん。市議会の承認を経て、17年10月に副市長に就任した。

 型破りな採用プロジェクトを始めたのは、17年1月に「全国最年少市長」(当時28歳)として四條畷市長になった東修平さん。選挙時の公約に「女性副市長の登用」を掲げており、同年6月に副市長の公募を開始した。

 東市長は「市役所の幹部の多くは、長年1つの市役所で勤め上げた男性職員だが、子育てしやすい街を実現するには、市役所で働く人も多様化した方がいいと考えていた」と話す。

 市役所に管理職クラスの人材を採用する知見はなかったため、人材会社のエン・ジャパンと採用プロジェクトを立ち上げ、人材のターゲティングを開始。ミドル向けや若手ハイクラス向けの転職サイトなど、複数の転職サイトを選んで求人を掲載した。

 東市長は「副市長という職がどの層に刺さるかも分からない。一歩ずつ開拓していくしかなかった」と当時を振り返る。約1700人からの応募は、うれしい誤算だった。

 しかし、選考方法にも課題があった。副市長という役職は、さまざまな側面を持っているからだ。「副市長は、共に民意の代表である市長と市議会の折衝役であり、市役所職員の代表でもある。市長が決めたからではなく、市議会が納得し、市役所のみんなが『この人なら任せられる』と思える人でなくてはならない」(東市長)。最終面接に年代も性別もさまざまな職員を参加させたのは、職員の代表を職員自身に選ばせるためでもあった。

 職員の意見は、林さんともう1人の候補者で割れた。東市長は「どちらかを僕が選んでも『みんなの副市長』とはいえない」と、職員たちが納得できるまで話し合いを続けたという。選考中は2、30代の若手職員が何度も市長室に足を運んできたそうだ。そうして、最後には「この人しかいない」と決めて、市議会に林さんの名前を出した。

●幹部が変わらなければ、組織は変わらない

 林さんが副市長に就任したのは17年10月。任期4年という短い期間で、子育てしやすい街を実現するにはどうすればいいか――。そう考えて、林副市長が最初に取り組んだのが市役所の組織改革だった。

 四條畷市役所はもともと縦割組織で「複数の部署が実は同じ問題に取り組んでいた」「部署同士の連携が取れず、プロジェクトが進まない」といった課題を抱えていた。林副市長は「幹部が変わらなければ、組織は変わらない」と思い、部長クラスの職員を招集し、週1で会議を開催することにした。

 全ての部署に1年間の構想を書かせ、市役所で実施予定の全プロジェクトを把握。会議のたびに「どのプロジェクトがどこまで進んでいるか」を徹底的に洗い出した。当初は職員から「前代未聞や」と言われたが、会議を続けるうちに職員の発言も増え、議論も活発になっていった。

 「現在は会議のペースを2週間に1回に落としたが、問題なく進められている。新しいプロジェクトが出てきても、他部署とも連携してスムーズに進められるようになった」(林副市長)

●育児の当事者だからこそ見えるもの

 現在林副市長は「子育て世代が暮らしやすい街作り」に向け、さまざまな取り組みを進めている。受動喫煙防止条例を制定し、子連れで利用しやすい店をまとめたマップを公開した他、道路や公園の整備なども検討しているという。

 「実は、私は娘を連れて単身赴任で四條畷市来ています。いわゆる『ワンオペ育児』の真っ最中。だからこそ、子育て世代が困っていることが見えると思う」と林副市長は言う。「ベビーカーや子連れでも安全に歩ける道や、子どもが安心して遊べる公園の整備はまだまだ足りていない。公共空間という一番の基盤の整備は行政にしかできないので、しっかりと取り組んでいきたい」(林副市長)

 四條畷市では現在、さらなる改革に向けて採用プロジェクトの第2弾を実施している。今度はIT人材や助産師、市民の声をヒアリングするための公聴職など7職種を公募。「市役所を変えていきたい」「もっとチャレンジしたい」という意欲を持った人材の確保を目指すという。

 「四條畷市では、一般職員の採用倍率も伸びている。応募者が『挑戦できる市役所』だと思ってくれている実感があるので、第2弾にもたくさん応募してくれるのではないか」(東市長)

 四條畷市と採用プロジェクトに取り組んでいるエン・ジャパンによると、5月31日時点で7職種合わせて1000人以上の応募があったという。今後は書類選考や面接を進めていく予定だ。