ロボアドバイザーサービスで預かり資産トップのウェルスナビ(東京都渋谷区)が、新たな資産運用のあり方として「資産運用3.0」を打ち出した。これまでの資産運用に対して、何が新しく、何が異なるのか?

●資産運用2.0は「老後に向けた備え」

 まず、短期売買によってお金を増やすことを「資産運用1.0」とするなら、長期・分散・積み立てに基づいて、老後に向けた備えとして資産を作っていくことが「資産運用2.0」だと、ウェルスナビの柴山和久CEOは話す。

 背景にあるのは日本社会の構造変化だ。10年ほど前までは、老後への最大の備えは定年まで勤め上げることだった。退職金だけで平均して2000万円ほどが確保でき、年金と合わせると十分な老後資金となっていた。

 「年金と退職金で豊かな老後を実現するのが日本社会の一つのモデルだった。定年まで勤め上げれば、国と会社が老後の面倒を見てくれた」と柴山氏。

 昨今、このモデルが壊れ始めている。退職金は減少し、年金給付水準も低下する見通しだ。そこで金融庁が打ち出したのが、長期・分散・積み立てという手法を通して、自助努力で老後資金を用意するというもの。ロボアドバイザーというサービス自体が、これを簡単に実現するためのものだ。

 老後の資金を自分で作らなければならない。そんな意識に後押しされ、同社のサービスWealthnaviは利用者を増やしてきた。サービス開始から約3年で預かり資産は1700億円に達している。

 しかしこうしたロボアドバイザーサービスに、つみたてNISAやiDeCOを足しても、預かり資産合計は1兆円未満。1800兆円といわれる日本の個人金融資産に比べると微々たる額だ。

●資産運用3.0は、パーソナルサポート

 この状況を改善するために必要なのは、「一人一人に対してカスタマイズされたサポートをしていく」ことだと柴山氏は言う。これが同社の掲げる「資産運用3.0」だ。

 具体的には、一人一人に合わせたライフプランを作成できる機能、AIを使って適切なアドバイスを行う機能、個人向け金融サービス全体を最適化することを打ち出した。

 ライフプラン作成は、各人に必要な老後資産を計算し、それに基づいて必要な積立額を提示するというもの。いわば、「自分にとっての“2000万円”を割り出す」(開発担当の岸田崇志執行役員)ものだ。プランの作成だけでなく、積み立てと運用の状況から、このまま老後を迎えると、資金に余裕があるのか足りないのかをチェックできる機能を盛り込んでいる。

 最近では、フィナンシャルプランナーによるカスタムメイドのライフプラン作成のほか、各金融機関でも作成サービスを提供している。Wealthnaviがフォーカスしたのはシンプルさだ。アプリ内の一機能として提供することもあり、まずは使ってもらえることを目指した。特徴的な機能はないが、UIにこだわった。

 AIによるアドバイスは、人工知能研究で知られる東大の松尾豊研究室と共同で研究を進めてきたものだ。相場を分析して、何を買ったらいいのかを提示するようなAIではなく、長期・分散・積み立てを実行していく上で、必要なアドバイスを個人別に行う。「金融の世界でユーザーの感情をうまく読み取って提示するのは、事例として非常に少ない」と、松尾教授はコメントを寄せた。

 当初は、長期投資の継続にフォーカスし、相場が急落したときなどに解約を引き止める目的に利用する。プロフィール、アクセスログ、相場状況を学習データとし、不安になる人をAIが選別、最適なメッセージを提示する。今後は、積み立て額をいくらにするのが最適かをアドバイスする機能などに応用していくという。

●PFM事業への参入意欲

 さらに、今後、Wealthnavi以外の金融資産などの情報を使って、利用者の資産全体を最適化するという構想も披露した。最適な資産運用は、持っている金融資産だけでなく、収入状況などによっても変わってくるが、そうしたデータを取り込むことで運用方法を最適化していく狙いだ。

 「将来の収入も含めて、資産運用を最適化したい。例えば、将来の給料が不安定なら、資産運用はリスクを取らないのがよいかもしれない」(柴山氏)

 その先には、住宅ローンやクレジットカード、保険などについても、総合的に最適なものを提案していきたいとする。いわばPFM(Personal Financial Manegement)事業への参入だ。「(PFMの実現には)すべてのサービスを自社で提供することは考えていない。資産運用をETFを組み合わせて実現しているように、組み合わせることになる。最適なアドバイスや、自動実行のところに価値がある」と、柴山氏は具体的な方策は流動的だとした。

 柴山氏は、以前から富裕層が受けているプライベートバンクのような機能を、一般の人に提供したいと語ってきた。優秀なプライベートバンカーがサービスを提供できるのは多くても100人程度。しかし、AIが顧客ごとに最適化された提案をできるようになれば、資産運用における民主化が実現する。これが同社が目指す資産運用3.0の姿となるだろう。