近年、大企業からスタートアップまで数多くの企業がサブスクリプション(サブスク)ビジネスを始めています。しかし、残念ながら、当初の成長目標を達成できずに苦しんでいる企業も少なくありません。そのような中、サブスクビジネスで成功している事例をひも解くと、共通点「3+1の要素」が見えてきます。

●サブスクとは何か

 サブスクとは、一体どのようなビジネスモデルなのでしょうか? ユーザー視点では「一定期間・一定金額で、あらかじめ定められた量×質のサービス利用または物品購入ができる購買体験」が一般的な定義です。

 企業から見ると「お客さまと直接つながり、お客さまとの関係性を継続化、かつ長期化することができるビジネスモデル」と言えるでしょう。

 私は、サブスクの特徴として、以下の3つの要素に注目しています。

 (1)自社のサービス/製品を、ユーザーにとって納得感のあるカタマリに「パッケージ化」すること

 (2)ユーザーを管理し、そしてサービス/製品をユーザーに直接届ける「サプライチェーン」をつくること

 (3)ユーザーが割安感を感じる「価格設定」を実現すること

 この3つの要素から、サブスクの成功要因を考察していきたいと思います。

●サブスクは100年前からあるビジネスモデル

 突然ですが、牛乳配達をご存じでしょうか? 牛乳メーカーの委託を受けた全国の街の販売店が、消費者の玄関先まで毎日牛乳瓶を届ける仕組み、つまり牛乳の「サブスク」です。代表的なメーカーの明治によると、現在でも546万軒の消費者が牛乳のサブスクを利用しています。

 この牛乳のサブスクが誕生したのは、100年以上も前のこと。明治時代初期、ドラム缶を持った牛乳屋が量り売りをしていました。家に冷蔵庫がないため、腐りやすい。頻繁に購入する必要があったことから、小分けされたビン詰めの牛乳を毎日届けるというサブスクモデルが普及しました。この仕組みを支えたのは、全国のあらゆる町に住む、小さな販売店のネットワークでした。

 先ほどの3つの要素に当てはめると、(1)「パッケージ化」は1日で飲み切れる分量に小分けされた牛乳瓶、(2)「サプライチェーン」は全国に張り巡らされた販売店ネットワーク、(3)「価格設定」は時代によって多少の変動はありますが、基本的には家計に大きな負担のない値段が維持されてきたようです。

●現代のサブスク代表例は?

 近年、インターネット(IoTを含む)の普及や物流技術の進化を背景として、多くの企業がサブスクモデルを続々と採用し始めています。その代表成功例として、オイシックス、ラクサス、ネットフリックス、ブリヂストンの取り組みを見てみます。

【オイシックス】

 商材例:「Kit Oisix」主菜・副菜が20分でつくれるレシピと食材のセット

 (1)パッケージ化:必要な分量に加工された食材と写真付きレシピカードのセット

 (2)サプライチェーン:供給は契約農家から。物流センターを自前で保有し食材の品質管理及び配送の最適化を図る

 (3)価格設定:メニューによるが、2食分1490円(税別、以下同)

【ラクサス】

 商材例:高級ブランドバッグ

 (1)パッケージ化:57のブランドのバッグを使い放題、交換し放題

 (2)サプライチェーン:ラクサス保有の在庫の中からユーザーがインターネット上で利用したいバッグを指定し、ヤマト運輸の物流網により配送

 (3)価格設定:月額6800円

【ネットフリックス】

 商材:オリジナル作品を含む動画

 (1)パッケージ化:数千点の動画を常時見放題作品として公開

 (2)サプライチェーン:コンテンツは全てデジタル化されておりインターネット経由で配信

 (3)価格設定:月額800円〜1800円

【ブリヂストン】

 商材:商用車向けタイヤおよびタイヤメンテナンス

 (1)パッケージ化:トラックやバスの足回り整備、最適なタイヤ提案、タイヤ交換

 (2)サプライチェーン:全国の販売店・代理店によるカスタマイズ提案・サービス提供

 (3)価格設定:会社ごとに異なるが月額定額の設定

●サブスクの成功のキモは「3+1」

 いかがでしょうか? どのサービスも、文字にしてみるとすべて「普通のサービス」に見えます。これらの企業がサブスクで成功を収めているのは、特別なサービスを提供しているからではなく、(1)パッケージ化、(2)サプライチェーン、(3)価格設定の「3つの要素」で、徹底的にユーザー価値を高めていることに秘けつがあります。 

 (1)プロダクトの「パッケージ化」においては、どちらの事例も何をプロダクトに組み込み、逆に何をプロダクトからそぎ落としているかのメリハリが秀逸です。ユーザーにとっての本当の価値を見極めることで、解約のきっかけを与えないことにつながります。オイシックスのKit Oisixは、食材の単純な通信販売から、忙しい人でもレシピに悩んだり調理の下ごしらえをしたりすることなく、20分でおいしい家庭料理をつくる体験をパッケージにしています。

 (2)サプライチェーンはユーザーから見えない部分での努力こそがサービス品質を高めるために重要です。例えばラクサスは、バッグをキレイで清潔な状態に保つために、返却された商品のメンテナンス工場を自社で保有し、品質管理を徹底しています。ユーザーと直接つながるビジネスモデルなのでユーザー接点ばかりに目が行きがちですが、他と差がつくのはこうした裏側のプロセスでのこだわりなのです。

 (3)価格設定は非常に奥が深い。ユーザーが納得する値段をつけるのは価格設定の一面に過ぎません。本当に大事なのは、その値段を維持するための原価管理の努力です。ブリヂストンは新品タイヤだけでなくリトレッドタイヤ(ゴムを張り替えた再利用タイヤ)の技術を強化することで、サービス品質を落とさずに原価の低減に成功しています。

 そして見逃せないのは、各社とも3つの要素を徹底的にこだわるために、「4つ目の要素」としてユーザーの声を高速かつ大量に集め、それを3要素にフィードバックするプロセスが業務に組み込まれています。ネットフリックスの取り組みはその究極のもので、ユーザーの嗜好を理解するために、動画の視聴回数だけでなく、どこで早送りをしたか、どこで一時停止をしたかなど、デジタルに取得できるあらゆるデータを分析して、次の作品作りなどに生かしています。

 そのほかにも成功しているサブスクビジネスには、この「3要素+4つ目の要素」で優れた工夫が見られます。もし、あなたの会社がこれからサブスク事業を始めるなら、「3+1の要素」をヒントにするといいかもしれません。

(中山悠介)