「結果的に『非接触性』の高いお店になりました。もともと意図していたわけではないのですが、時代にマッチしましたね」

 このように振り返るのは、ハンバーグレストラン「びっくりドンキー」を展開するアレフ(札幌市)の広報担当者だ。

 アレフはびっくりドンキーの新コンセプト店舗「ディッシャーズ」を、6月に商業施設「ENOTOKI」(神奈川県藤沢市)と新宿住友ビル(東京都新宿区)に相次いでオープンした。もともとは女性客を獲得したり、店内の生産性を向上させるのが目的の業態だった。しかし、その運営スタイルが新型コロナの感染予防を期待できるものになったという。どういうことなのか。

●どのような店舗なのか

 ディッシャーズとはどのような店舗なのか。

 大きな特徴は、各席にタブレット端末が備え付けられており、お客が自分で好きなメニューを注文できることだ。例えば、タブレット端末で「フルカスタム」を選択すると、1枚の皿に盛り付けるハンバーグ、トッピング、ライス、ソース、サラダを自由に組み合わせることができる。それぞれの料理のカロリー、塩分、アレルゲンも表示されるので、健康を気にするお客のニーズも満たしている。

 タブレット端末で注文すると、従業員がテーブルまで料理とQRコードが印字された伝票を持ってくる。食べ終わったお客は、伝票のQRコードを出口近くにあるセルフレジにかざして決済をする。

 記者も実際に体験してみたが、従業員と接触するのは「入店してから席を案内される」「料理を届けてもらう」ときだけだった。タブレット端末の使い方やお店の仕組みが分からないお客に対しては、従業員がサポートをするという。現在、大手外食チェーンが新型コロナ対策として、従業員とお客の接触回数を減らす工夫をしたり、店内の換気を強化したりといった取り組みをしている。ディッシャーズも“時代”の流れに沿ったサービスを提供しているように感じられた。

 また、ディッシャーズは女性客向けの業態にもなっている。店内のデザインはおしゃれになっており、サラダも女性が好むような葉物野菜(レタスなど)を多めにしている。木製プレートで提供するというのも、女性を意識している。実際、平日のランチタイムに訪れた新宿住友ビルの店舗は、オフィス街という場所柄もあってか女性客が半分近く占めていた。

●なぜこのような店舗ができたのか

 広報担当者によると、ディッシャーズが誕生したきっかけは、約2年前に立ち上がったプロジェクトだという。

 当時、人件費や原材料費の高騰を受け、びっくりドンキーの運営における生産性向上が課題となった。その中で、「タブレット端末での注文」や「セルフレジの活用」といったアイデアが出てきた。

 一方、全国に300店舗以上あるびっくりドンキーは、ロードサイド立地が基本で、敷地面積は200坪以上必要だった。また、ファミリー層やがっつり食べたい男性客などが中心で、大きなメニュー表をテーブルの上に広げながら「何を食べようか」と客同士で話し合いながら従業員に注文するのが一般的だった。こういったフルサービスを提供するのが強みではあったのだが、弱点だった若い女性を取り込むだけでなく、狭小物件でも出店できるような業態を模索していた。

 こういった問題意識を踏まえて生まれたのがディッシャーズだった。当初、4月オープンを目指していた。しかし、緊急事態宣言を受けてオープンは6月にずれこんだ。実際に運営してみると、別のメリットも見えてきたという。

 アレフの中嶋義則氏(オペレーションプランニングチーム・作業システム担当)によると、ディッシャーズでは新人トレーニングの負荷が軽減されたという。びっくりドンキーでは、注文を入力する「ハンディ」と呼ばれる端末の操作方法を覚えるのに時間がかかってしまう従業員が一定数いた。しかし、ディッシャーズではその心配がなくなった。また、セルフレジが導入されている影響で、お客が従業員を呼ぶ回数が減ったという。

 従業員は、料理を席まで運んだり、食べ終わった食器を片付けたりする作業に集中できるとともに、余裕のできた時間で接客にも力を入れる方針だ。一方、同店のシステムは「忙しい時間にサクッと食事をしたい」「店員との接触回数を減らしたい」と考えているお客のニーズにも対応しているといえるだろう。

●非接触のニーズはロボットにも

 ロボティクス・サービス・プロバイダーの「QBIT Robotics」(東京都千代田区)は7月6日、自動搬送ロボットサービスを、レストラン「THE GALLEY SEAFOOD&GRILL」(東京都世田谷区)に導入した。お客がテーブルにあるタブレットでサラダを注文すると、2台の自動搬送ロボットが、お客の席までサラダを届ける仕組みだ。

 同レストランには、もともとビュッフェスタイルのサラダバーがあった。店内の中央部分にサラダバーがあり、お客が共用のトングを使って好きな野菜を皿に盛っていた。

 しかし、コロナ禍によりこのサービスの提供ができなくなった。レストランを運営する三笠会館(東京都中央区)では、2〜3年前からロボットの導入を検討しており、米国などにも視察に行っていた。もともとは生産性の向上が主な目的だったが、コロナ禍をきっかけに、“非接触”のサービスを提供する必要があると判断。ロボットを導入することにしたという。

 ロボットサービスを提供しているQBITは2018年に設立された企業。コロナ禍の前は「変なカフェ」(東京都渋谷区)や「ゼロ軒めロボ酒場」(東京都豊島区)に給仕するロボットを導入していた。当初は、人手不足や人件費高騰への解決策としてロボットシステムを提案していた。しかし、同社の中野浩也社長は、現在は“非接触”のニーズが高まっていると説明する。

 中野社長によると、三笠会館の運営するレストランで導入されている自動搬送ロボは中国製。メーカーの発表によると、累計で7000台以上が出荷されているという。そして、中国では、新型コロナウイルスに感染している患者に対し、病院内で薬や食事を運ぶ用途として搬送ロボが活躍しているのだとか。

 今後、“非接触”のサービスを実現するため、ロボットを活用する動きが広がっていくかもしれない。

●非接触をテクノロジーで実現する動きが続々

 他の大手外食チェーンでも、密集を避けたり、接触回数を減らしたりするために、さまざまなテクノロジーを活用する動きが活発になっている。

 例えば、大手定食チェーン「やよい軒」を運営するプレナスは6月8日、やよい軒全店に「ごはんおかわりロボ」を導入する方針を打ち出した。共用のしゃもじを使うことなく、お客が安心してごはんのおかわりができるようにするための措置だ。

 また、ワタミでは焼き肉食べ放題の「上村牧場」を開発した。店舗内では、お客がテーブルのタッチパネルで注文すると、回転寿司店にあるような特急レーンで料理が運ばれる仕組みになっている。従業員とお客の接触回数を減らすための仕組みだ。

 もともとは、省人化・効率化を達成するためにさまざまなテクノロジーが飲食店に導入されてきた。しかし、コロナ禍により感染症対策という新たな用途が求められるようになっている。