コロナ禍の影響を大きく受けた業界の1つがアパレル・ファッションだ。帝国データバンクが、月次売上高を公開しているアパレルの上場企業24社の8月売り上げについて調査したところ、約8割に当たる19社が前年同月を下回った。5月には既にレナウンが子会社を通じ民事再生法の適用を申請している。

●特に販売職・パタンナーに打撃

 女性を中心に就職先としても人気だったアパレル業界だが、やはりコロナ禍による業績不振で求人数は急減傾向にある。長期化が予想される買い手市場の中で、それでも求められる人材とは。人材系大手のパーソルキャリア(東京・千代田)が運営するアパレル・ファッション業界専門転職サービス「クリーデンス」責任者の河崎達哉さんに聞いた。

 まず、約3000社が常時のべ2500件以上の求人を出している同サービスのデータを分析した。6月〜8月のアパレル・ファッション業界の求人数は前年同期比で25%減少していた。特に業界の性質上、契約社員で影響が大きく44.8%も減っていた。

 中でも大きく減少している職種の1つがパタンナー(デザイナーの作ったデザイン画から型紙を作成する仕事)で前年同期比58.7%減。河崎さんは「業績が落ち込み、自社採用を停止し海外工場に外注する企業が増加した」と分析する。

 他にも求人数減が顕著なのが「店長・販売」で、やはり前年同期比で38.2%減となった。アパレル業界の花とも言える店舗の販売職だが、コロナ禍での店舗休業や客足の鈍化による新規出店減が大きく響いた。

●求人減に加え採用の在り方変化

 こうしたアパレル業界の求人縮小や変動は一時的なものなのか。河崎さんは「短期では戻らないのでは」と推測する。原因としては、多くの企業で倒産や事業譲渡が既に発生し、アパレル企業の数自体が減少しつつある、ということ。さらに「コロナ禍がアパレル企業の経営を見直すきっかけになってきている。立ち直る企業は早ければ来年度にも出てくるだろうが、採用の在り方自体が今までとは変化するだろう」(河崎さん)。

 河崎さんが特に伸びるとみている求人ジャンルがEC関連の人材だ。クリーデンスのデータでも、「EC・通販関連」の求人数は3.1%増となった。コロナ禍前からアパレル大手は百貨店など実店舗依存の販売手法を見直し、ECマーケティングの強化に乗り出し始めていたが、コロナ禍がそれをさらに加速させつつあるというわけだ。

 ただECというと、従来の接客スキルではなく、自社サイトの運営などに携わるIT系の技術職などが求められるようにも思える。河崎さんは「Webマーケティングの力がある人やWebディレクター、またエンジニアなどDX(デジタルトランスフォーメーション)の知見がある人」を挙げる。ただ一方で「アナログ的な接客力の高い人が求められなくなる、という訳ではない」とも分析する。

 河崎さんが注目するのが、SNSなどを活用しアパレルの店員自らがインフルエンサーのように商品をPR、拡販できるマーケティング系の人材だ。中国では既にTikTokなどの動画によるライブコマース、さらにはSNSやブログによるソーシャルコマースといった手法をアパレルの店舗従業員や社長が活用し、EC上で購入を促す動きが加速している。

 日本のアパレルでは実店舗への依存度がまだ高く、ECの売り上げ比率はおしなべて発展途上だ。ただ河崎さんは「とにかく人を採って店舗拡大し売り上げを出すという手法でない経営の在り方も今後は台頭する」と分析する。

 アパレルの販売職、あるいは志望者に対しても「リアル店舗の販売だけで(企業が)立ち行かなくなっても、販売スキルに加えて、SNS上のマーケティングスキルを同時並行でつけておくべき。これまでの(アパレル業務の)やり方でない武器をどう持つのか、見つめなおすきっかけになるのでは」(河崎さん)とアドバイスする。