家電・ITの見本市「CEATEC 2020」が10月23日までオンラインで開催されている。例年は千葉・幕張メッセで開かれるイベントだが、新型コロナウイルスの影響を受け、オンラインのみでの開催となった。運営団体は「史上最多の来場者数を目指したい」として20万人超の来場者目標を掲げる。

 自宅や職場から移動せずに参加できる点は、来場者としても大きなメリットだ。開催初日の20日には、入場登録サイトにアクセスが集中。昨年比4倍と想定外のアクセスだったといい、閲覧が一時制限されるほど注目を集めた。一方で、筆者が気掛かりなのはオンライン化によるブース回遊のしづらさや、情報収集の手間だ。

●バナーの一覧から伝わる情報は少ない

 オンライン版CEATECの企業ブースは、企業ロゴの入ったバナーが並ぶ形式となっている。ブース内には、出展しているサービスの内容や、ターゲット業界ごとに分かれた小部屋を設けている企業が多く、その中には動画やPDFなどのコンテンツを格納している。企業一覧の上部には「PREMIUM」「STANDARD」「BASIC」というタブが並び、出展社のグレードを表している。出展社のグレードは、バナーの大きさとも連動している。

 来場者は目的の企業のブースに入り、ブース内から自分に適した小部屋を選択し、動画や資料を閲覧する。画面左側に現れるサイドバナーから同じ企業内の別の小部屋に移動することはできるが、企業ブース間には「隣のブース」という概念がない。1つの企業ブースを見終わったら企業ブース一覧に戻り、再び立ち並ぶロゴの中から気になる企業を選んでクリックをして、入室する必要がある。

 隣のブースがないこと、そして各ブースが「にぎわっているかどうか」の情報がないことで、懸念されるのは「社名と数センチのバナーで、ピンと来る企業にしか来場しない」ということだ。

 リアルの展示会では会場を移動し、各ブースを眺めることで「ある企業が意外な分野に力を入れ始めた」ことや、「社名は知らなかったが自社が求めている物を提供している企業がある」ことを知ることができた。空いた時間は自由に会場内を歩き、にぎわっているブースや気になる製品が置いてあるブースを回っていた人が多いのではないだろうか。

 オンライン開催により、狙い撃ちで必要な情報を入手できたり、講演の開始待ちなどの隙間時間は別の仕事にとりかかったりと、効率の良い動きができる一方で、事前にリサーチできていなかった情報に偶然出会う機会は激減したように感じる。出展している356社のブースをそれぞれクリックして入室することは現実的ではないし、バナー一覧から伝わる情報は、リアル会場でブースを外から眺めたときの情報に比べてあまりにも少ない。

●従業員がブースに「立っている」ことの価値

 企業ブース内で閲覧できるコンテンツは、動画やPDFだ。各企業が注力しているのは動画で、CEATECの開催に合わせ、新しい動画を作成している企業も多く見受けられた。動画でのサービス紹介は分かりやすい。一方で、実際に視聴してみると、自分の求めている情報が動画の末尾までに含まれているかどうか分からないことも多かった。求めている情報が入っていなかった場合、動画の視聴時間の分、時間を棒に振ることになる。オンラインでも効率が良くない点があることが分かった。

 また、多くの動画はアーカイブで、質問機能も付いていないため、疑問点があった場合はアンケートや問い合わせなどを自発的に行わなければならない。リアルな展示会で企業の従業員がブースに立っていて、簡単に質問できることの価値をあらためて感じた。

 新型コロナウイルスの感染拡大が長期化する中、企業単位で実施するものからCEATECのように大規模な展示会まで、オンラインでの展示会開催は増え続けている。オンライン展示会の配信システムを提供するベンダーは、競って新機能を開発している。リアルな展示会の良さをカバーできるような配信システムが現れるか、新型コロナウイルスの終息後は従来のリアル会場の展示会に戻るのか。もしくはハイブリッドという手段もあるだろう。今後の展示会の開催方式の行方に注目したい。