トヨタ自動車が新型コロナウイルス感染拡大の影響から回復を始めている。11月6日、2021年3月期の連結業績予想を上方修正。売上高に当たる営業収益は従来予想を2兆円上回る26兆円(前期比12.9%減)、純利益は6900億円を上積み、1兆4200億円(同30.3%減)とした。豊田章男社長は、コロナ危機以前からの取り組みの成果として「企業として強くなってきた」ことを早期の回復の理由として示した。

●5月に示した「営業利益5000億円」をすでに達成

 同日発表した20年4〜9月期の連結業績は、営業収益が前年同期比25.9%減の11兆3752億円、営業利益は62.8%減の5199億円、純利益は45.3%減の6293億円だった。世界的な新型コロナ感染拡大の影響で、グループ総販売台数は19.9%減の436万6000台。販売台数の減少が響き、全ての地域で減益となった。

 一方、足元の業績は徐々に回復傾向にある。9月のトヨタ単体のグローバル販売台数は、前年同月を1.9%上回り、9月単月として過去最高を更新。特に北米と中国で大きく伸びた。北米では、7〜9月の営業利益が前年同期を大きく上回っている。

 決算説明会で近健太執行役員は、足元の生産状況について「非常に繁忙」と話した。9月の生産台数は北米が前年同月比8%増、欧州が20%増、中国が49%増。日本国内でも4%増となっている。特に北米では、「RAV4」などのSUVやピックアップトラック、主力モデルの「カムリ」が好調。在庫が逼迫していることから、インセンティブ(販売奨励金)の負担も減少している。近執行役員は「(北米では)新商品を切れ目なく、いろいろなセグメントに投じることができた」と説明する。

 20年5月の時点で、トヨタは今期の見通しについて、グループ総販売台数890万台、営業利益5000億円という“前提”を公表。新型コロナの先行きは不透明だったものの、自動車産業が経済に及ぼす影響の大きさから、一つの基準を示した。

 20年4〜9月期決算では、期初に示した「営業利益5000億円」をすでに達成。今回修正した見通しでは、通期の営業利益を前期比45.8%減の1兆3000億円としている。豊田社長は当初の想定を上回る回復の理由について、「これまでの11年間の取り組みがあったから」だと説明する。

●リーマンショック時よりも回復は早い

 トヨタの決算説明会は例年、社長が登壇するのは本決算のみ。今回、中間決算の説明会に出席した理由について、豊田社長は「コロナ危機という有事であるから」と話した。そして、「特に有事のときは雇用を守り、利益を出して、税金を納めるのが責任。自動車産業は経済への波及効果が大きい。また、前を向いて頑張っている関係者への感謝と、この後の3Q、4Qも頑張っていく決意を伝えたかった」と説明した。

 期初の想定よりも業績の回復が早く、業績予想を大幅に上方修正できたことについては、「11年間の取り組みによって、企業として強くなってきた」と話す。11年前に何があったかというと、リーマンショックだ。当時の打撃は甚大で、09年3月期は赤字に転落。回復には時間を要した。

 リーマンショック時と今回のコロナ危機の回復スピードを比較するために豊田社長が示したのは、販売の落ち込みが最も大きい月から5カ月間の販売台数の前年比。リーマンショック時は前年比76%で、市場全体を4ポイント下回っていた。今回は前年比80%で、市場を3ポイント上回る回復を遂げているという。

 「リーマンショックや東日本大震災、円高など、いろいろなことがあったが、少しずつ取り組みを積み上げてきた結果だ」と豊田社長は強調する。“積み上げてきた”という言葉が示すのは、リーマンショック時と比べて資金が潤沢になったことだけでなく、「働く人たちが強くなった」こと。それが企業としての強さに表れているという。

 それは、同社が注力してきた原価低減活動が浸透してきたことだけにとどまらない。今回のコロナ危機では、工場の生産性向上や販売現場のオンライン活用などの取り組みによって「1台1台を積み上げるために生産も販売も必死になって仕事をした」(豊田社長)。さらに、工場を活用してマスクやフェイスシールドを製造するなど、社会の危機を乗り越えるために企業としてできることも行っている。

 豊田社長は「自動車産業の回復スピードは早く、日本経済に良い影響を与えられているのでは。トヨタの数字は(従業員や取引先など)多くの人の頑張りに支えられた結果だ」と語った。国内外を問わず、新型コロナの感染状況は先行き不透明だが、商品力や生産性の向上、将来を見据えた研究開発など、着実に事業を進められる体制を整えていたことが、業績回復につながっているようだ。