2020年も残りわずか。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、忘年会や納会を実施しなかったという企業も多いのではないか。そんな中DMM.comは、約3000人の従業員を対象とした納会と忘年会をオンラインで開催した(関連会社など含む)。オンラインでの忘年会は同社初の試みだという。どのようにイベントを運営したのか、当日の様子を取材した。

 イベントは2部構成。午後3時〜午後4時30分の第1部「全社納会」と、第2部「忘年会」の冒頭30分は業務扱いとした。

 全社納会は、本社オフィスに特設スタジオを用意し経営陣が登壇。座談会形式で1年の振り返りやグループの今後の方針について説明した。また、1年の動きをまとめたVTRを放映した他、会社の成り立ちや事業内容などに関するクイズ大会を実施。従業員は事前にクイズに回答していて、経営陣がその答え合わせをする形式だ。参加者はZoomのコメント機能を使って反応を示し、経営陣がそれに応える一幕もあった。

 第2部の忘年会では、有志の社員が企画したZoomの部屋に分かれ、社内コミュニケーションの場とした。開設したのは全部で46部屋。「筋トレ好きの部屋」や「新卒の部屋」、「子育て部屋」など、企業や部署の垣根を超え、共通の話題で交流を深めた。

 第2部で特に参加者が多かったのは「バーチャル社内見学会」だ。DMM.comは東京都港区の本社オフィスだけではなく、石川県にも事業所を構えている。バーチャル社内見学会では、各オフィスの従業員が交互に社内を案内していた。参加者の中には、自宅から家族と一緒に見学している従業員もいて、普段行くことのない他の事業所の様子を知ることができた点や、働いているオフィスを家族と共有できた点などが好評を得ていたようだ。

 イベントは同社のコーポレート室のメンバーが中心となって運営した。数週間前からSlackやメール、社内ポスターなどでイベント開催を告知。当日の撮影や配信なども全て社員が行った。カメラを複数設置して配信時のカット割りを工夫したり、間に流すVTRや画像なども作成した。

 DMM.comの従業員数は2020年4月1日現在で約2500人。グループ企業は20社以上ある。数年で従業員の数が急激に増えたこともあり、全体でのイベントは10年程前から実施できていなかったという。運営を担当したコーポレート室の塩谷雅子氏と、進藤香織氏は「人数も増えて、DMMってどういう事業をしている会社なのかということをあらためて知って欲しいという思いがあった」とイベント開催の理由を話す。 

●横のつながりを深めることが課題だったDMM

 第1部の様子をみていると、現場の従業員と経営陣の距離の近さを感じた。部署を超えて社員同士のコミュニケーションも活発に行われているのではないか。そう感じ尋ねてみると、意外な答えが返ってきた。塩谷氏は「横のつながりを深めることが課題なんです」と話す。

 「事業の数が多く、それぞれの事業ごとで採算を見ているので、どうしても縦割りになりがち。特に総務や人事系のバックオフィス側と事業側では距離が生まれやすくなってしまった。その解消のためにオフラインの施策をやっていたが、コロナ禍でより横のつながりが薄くなってしまっていた」

 グループ全体の交流を深める意味も込めて、6月には全グループの従業員4000人を集めた全社総会を数年ぶりに開催する予定だったという。しかし、新型コロナウイルス感染拡大で急きょ中止に。社内表彰イベントのみをオンラインで配信することにした。

 これが同社にとって初めての社内向けオンラインイベントとなった。直接交流することができなかったが、オンラインで配信したことで、結果的に国内外のグループ企業に勤める従業員全員が視聴できる環境となった。従業員からは「会長の顔が見えると安心する」「普段コミュニケーションが取れない中で、会社の事業の内容を知ることができて良かった」といった声があがったという。

 同社はこの反応に手応えを感じ、社内向けのオンラインイベント第2弾として「納会」を企画したという。8月末にオンライン納会の実施を経営陣に提案。開催に向けた準備に取り掛かった。

 今回のイベントで意識したのは登壇者と参加者の双方向性だ。「6月の社内表彰イベントは、見ているだけの時間が多くなってしまった。今回は、視聴者が参加できる企画を積極的に用意した。また第1部では各部門の経営陣に登壇してもらい、それぞれの部門の従業員に、親近感を持って話を聞いてもらえるように工夫した」(進藤氏)

●オンラインイベントで大事なのは「双方向性」

 3000人を対象としたDMM.comの納会。最終的には業務で参加できなかった人を除く約2400人が視聴。第1部のクイズには約1500人が参加した。「思った以上に参加してくれたと感じている。当初、運営側の意見として『みんなノッてこないのでは』と考えたりもしたが、自主的にSlackを使って第2部の部屋の宣伝をしたり、多くの人がクイズに参加したりしてくれた」(塩谷氏)

 開催後のアンケートでは「コミュニケーションの形が自由だったので新しい形の忘年会としてアリだと思いました」「3カ月前に入社し本社に出社したこともなく、知り合いも少ないのでどんな雰囲気なのか不安だったがおもしろかった」といった肯定的な意見が上がった。

 両氏は、今後もオンラインを活用した社内イベントを実施していきたいと抱負を語る。「オンラインイベントの重要な点として、参加者が双方向性を感じられないと盛り上がらないという点を痛感した。次回以降はその点をさらに意識していきたい」(進藤氏)

 1年の締めくくりとして多くの企業で行われてきた忘年会。コロナ禍で社員同士が交流しにくい今だからこそ、オンラインをうまく活用して、これまでとは異なるコミュニケーションを図るのも大事なのではないか。