「ロケットと人工衛星の垂直統合型のサービスを展開しようと考えていまして、これから新会社を設立します」

 北海道大樹町でロケットを開発するインターステラテクノロジズ(IST)のファウンダーである堀江貴文氏は12月21日、ISTの100%子会社として、人工衛星事業を手掛ける新会社「Our stars」を2021年初頭に設立することを明らかにした。代表取締役社長には堀江氏が就任する。

 「Our stars」は、通信衛星事業と地球観測衛星事業、それに宇宙実験用衛星と回収カプセルを組み合わせた事業の3つを柱にしている。ISTが開発中の超小型衛星打ち上げロケット「ZERO」とあわせて、日本で初めてロケットと人工衛星を統合したサービスの提供を目指す。

 新会社設立は、ISTの本社と新工場の完成にあわせて、ISTの堀江氏と稲川貴大社長が明らかにした。民間による宇宙ビジネスが世界で拡大しつつあるなか、新会社設立のねらいを語った。

●3つの人工衛星サービスを提供

 ISTは北海道大樹町の本社で新会社の設立を発表した。社名の「Our stars」は社内の公募で選ばれたという。社名について堀江氏は「グローバルに展開しようと思っていますので、英語で意味が通じるのか、語感が良いのか、クールな社名なのかを検討して投票してもらいました。最終的に決定したのは私です」と説明した。

 「Our stars」は3つの人工衛星サービスを提供する。1つは、超超小型衛星を多数協調させる衛星コンステレーションによる次世代の通信サービス。ピンポン玉サイズの超超小型衛星を数千個フォーメーションフライト(編隊飛行)させることで、各衛星が協力して大きなアンテナの機能を果たし、その結果、大型衛星以上の通信性能を実現するというもの。まだ実用化も実証実験も実施されていない技術で、堀江氏は「世界初で、非常にチャレンジングな衛星通信サービス」だと意欲を語った。

 2つ目は、超低高度リモートセンシング衛星による地球観測サービス。電気推進を持つ超小型衛星が、高度150〜200キロの超低高度を周回して地球を観測する。超低高度を周回することで、解像度の高い写真が低コストで撮影できる。超低高度での衛星の飛行は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した人工衛星SLATSで実証されており、その技術の実用化を目指す。

 3つ目は、宇宙実験衛星と、実験が終わったあとのサンプルを回収するカプセルをセットにしたサービス。現在は国際宇宙ステーション(ISS)で、多様な分野の宇宙空間における実験が実施されている。ただ、ISSは24年に今後の運用が見直される方針で、宇宙実験衛星でポストISSの役割を果たすとともに、実験サンプルを乗せたカプセルを地球上で回収するサービスをあわせて提供する考えだ。

 3つの事業の実現時期について、堀江氏は「宇宙実験衛星と回収カプセルの事業が最初に事業化できる」と説明した。超超小型衛星フォーメーションフライトによる通信サービスと、超低高度リモートセンシング衛星による地球観測サービスは数年後の事業化を目指すという。

●宇宙ビジネスのプラットフォームを作る

 民間による宇宙ビジネスは、20年に大きな転換点を迎えた。5月にはスペースXの有人宇宙船クルードラゴンが、民間の宇宙船として初めて有人宇宙飛行を実現し、ISSへのドッキングに成功した。スペースXは11月にも民間では最初の運用ミッションとして有人打ち上げにも成功。搭乗した日本人宇宙飛行士の野口聡一さんは現在ISSに滞在して活動している。

 人工衛星ビジネスでも、スペースXが次世代型衛星ネットワークの「スターリンク」計画を進めている。小型のブロードバンド衛星を低軌道に送り込んでいて、すでに900基以上が打ち上げられた。北米ではベータ版のブロードバンドサービスがすでに始まっている。

 日本でも人工衛星ビジネスに取り組む会社は複数立ち上がっており、今後開発や低価格化などの競争が激しくなることも予想される。稲川氏は、ロケットを開発しているISTが人工衛星事業に参入する意義は「新しいプラットフォームを作ること」だと強調する。

 「通信、リモートセンシング、宇宙実験の3つの分野において技術革新をして、新しいプラットフォームを作っていこうと考えています。宇宙産業を考えたときに、一つひとつのものを作るだけではなくて、プラットフォームとサービスを作ることは非常に重要です。

 当社はZEROという超小型衛星打ち上げロケットを開発しています。その先にアプリケーションまで提案していくことによってプラットフォームを作っていくという、大きなビジョンで進めていきます」

 また、ロケットと人工衛星の統合型サービスを展開するメリットについては、次の3点を挙げた。

 「1点目はリーズナブルな価格で提供できることです。ロケットに最適化した衛星が作れるようになると、いろいろな無駄が省けて、低価格の衛星が実現します。

 2点目はスピードをもって衛星コンステレーションを作れることです。人工衛星の会社がたくさんできていて、世界中でロケットの打ち上げを待っている状態です。ロケット開発と人工衛星の開発を一貫して行うことで、コンステレーションを構築するスピードを上げることが可能です。

 3点目は、超小型ロケットとの組み合わせによって、特殊な軌道にも衛星を打ち上げられることです。超低高度衛星が飛ぶのは、通常とは異なる軌道です。大型ロケットでは運ぶことができません。打ち上げたい軌道に衛星を運ぶことができるのは、当社が持つ競争力だと考えています」

●収益化できるビジネスを事業化し資金調達を目指す

 「Our stars」は、当面はISTとオフィスをシェアしながらも、衛星事業に携わる人材を独自に募集していくという。ISTの事業として取り組むのではなく、あえて新会社を設立した理由を、堀江氏は次のように語った。

 「ロケットの開発には長い時間がかかります。ZEROを打ち上げることができても、それ以降ロケットの新規開発をしないかというと、もっと大型のものや、有人で飛べるものなどの開発を当然するわけです。資金調達の面では息の長い投資をしてくれる投資家しか集まりません。

 そこで、収益化しやすいビジネスを切り出して、収益を得ることができれば、投資家の方々も資金回収しやすくなり、資金調達もしやすくなります。

 つまり、短期的に収益化できる部分を先に切り出したということです。何年かで事業化ができれば、資金は回収できます。上場することで新会社で調達した資金を、ロケットの購入という形でISTに投資するといった流れができればと考えています」

 「Our stars」の設立は、顧客にロケットと人工衛星の統合型サービスを提供すると同時に、ISTのロケット開発を支えるための事業ともいえる。本格的なサービスの展開はZEROの打ち上げが実施されてからになるものの、実証衛星の打ち上げなどはZEROの打ち上げに先行して別の手段で行われる可能性もある。ISTのビジネスは、「Our stars」が立ち上がったことで、新たな段階に入る。(ジャーナリスト田中圭太郎)