コロナ禍で各社が“人財削減”に追われている昨今、既存社員への希望退職募集はもちろん、新卒採用を見送った企業のニュースが連日紙面に並んでいる。文部科学省、厚生労働省によると、2021年春卒業予定の大学生の就職内定率は、10月1日時点で69.8%(前年同期比7.0ポイント減)と、リーマン・ショック直後の09年調査に次ぐ下げ幅だという。

 そんな中、投資ファンドのミダスキャピタル(東京都千代田区)が、17年の創業以来初となる新卒採用を始めた。「他社が採用を躊躇(ちゅうちょ)している今、なぜあえて?」と思えるが、ミダスキャピタルが新卒採用開始を決断した背景には、大きな理由があるように見える。それは、各社が断腸の思いで新卒採用を見送り、大手では数千人規模の人員削減が行われる今年度、優秀な人材が就職活動市場に豊富に存在する現状を逆手にとった、いわば“逆張りの人事戦略”を立てているのではないか。

 事実、すでに外食チェーンの松屋フーズが2020年3月卒業予定の学生を対象とした追加募集を行ったり、地方自治体が、経営が苦しい大手航空会社の社員の出向受け入れを表明したりと、コロナのあおりを受けた学生・社員の獲得・受け入れも進んでいる。

●ビジネスコンテストで、学生とのタッチポイントを創出

 コロナ禍でミダスキャピタルが企画したのは、インターン・新卒採用と、会社の認知拡大を目的とした学生向けビジネスコンテスト「ミダスキャピタル キャリア プログラム」だ。

 ミダスキャピタル キャリア プログラムでは、優勝チームに100万円の優勝賞金を授与し、特に優秀な学生には、希望に応じて新卒採用選考プロセスのインターン枠を用意。期間中は各チームに1人ずつ、ミダスキャピタルや投資先のメンバーがメンターとして付き、ビジネスプランの構築をサポートするという条件で20年10月26日から約1カ月間エントリーを募集した。

 「スタートアップ起業」でも「プロフェッショナルファーム就職」でもない新しい選択肢として開催した同コンテストには、国内外の大学から多くの学生がエントリーした。その中から、選抜された17人は4チームに分かれ、「資本金1億円を元手に、5年後に株式価値の時価総額100億円になる事業プランを策定せよ」という課題に挑んだ。

 20年12月13日の最終発表時には、初日のチームビルディングから約1週間という短い期間にもかかわらず、ユーザーインタビューから課題を抽出し、収益計画、コンセプトやマーケットポジション、競合優位性、組織体制なども加味した事業プランを提案した。

●なぜ、ビジネスコンテストに参加? 学生に聞いた

 今回、ミダスキャピタル キャリア プログラムに参加した学生の片岡七海さん、星合 将さん(ともに東京大学4年)にインタビューした。

──参加のきっかけは。

片岡さん 内定先の先輩に当プログラムを紹介していただきました。今まで新規事業を立ち上げた経験がなかったため、自分で実際に責任を持って運営したいと思えるような事業案の立案に挑戦すること、優秀なメンターの方やチームメンバーから学びを得られたらと思い参加しました。

星合さん 来年度から投資銀行で働く予定のため、同業界の知り合いを増やし、起業家の方々の考え方を学びたかったので参加しました。ビジネスコンテストが面白そうと感じたのもあります。

──過去にビジネスコンテストに参加したことはあるか。

片岡さん 今回が初参加で、ミダスキャピタルのことも知りませんでした。

星合さん 国際ビジネスコンテスト運営団体(OVAL)に所属していましたが、他社開催のビジネスコンテストには今回が初参加でした。ミダスキャピタルについては、SNSやM&A関係のニュースやコラムで目にしたことがありました。

──ミダスキャピタル キャリア プログラムに参加した感想は。

片岡さん 私は事業サイドよりもアドバイザリーの方が向いていると考えていましたが、自分たちで事業を立ち上げ、運営するところまでやってみたいと思うようになりました。ビジネス案を実行し、成長・持続させるにはさまざまな障害があることを知り、新規事業を立ち上げる面白さだけではなく、難しさも理解できました。

星合さん 優秀な学生が多く、質の高い時間を過ごせました。自身での調査やフィードバックなどから、ビジネスへの知見を深めることができたように感じています。

──選考の窓口も設けた企業主催のビジネスコンテストについて、就職活動の経験者としてどう考えているか。

片岡さん 優秀なメンターの方から多くのフィードバックをいただける環境でテーマに臨めた点が良かったです。就活生としても学べる点が多く有意義ですし、選考を行う企業側としても学生の能力や思考性、性格など、多角的に自社との相性を図れるので、双方にメリットが大きいのではないかと感じました。

星合さん 深く考えなければならないテーマのため難しく、良いと思いました。審査員からの評価で実際に順位がつく点が面白かったです。

──将来、ミダスキャピタルでのインターン、もしくは就業の希望はあるか。

片岡さん もともとPEファンドにも興味があったため、ミダスキャピタルのようにPEファンドサイド/事業サイドの両面に携わる環境で働かせていただく経験をしたいと思います。

星合さん 新卒段階では今の内定先に就職しますが、将来はまだ分かりません。

●コロナ禍の採用活動は、またとない絶好の機会?

 インタビューからも分かる通り、業界への志望度が高い学生は、コロナ禍でも積極的に企業や業界の情報獲得のために動いている。平時であれば世の中にあふれる就職関連イベントや採用情報だが、他社が採用を控えているため埋もれることなく学生にリーチでき、人材を発掘・獲得できるのだ。また、今すぐの就職者の獲得につながらずとも、将来の就職先候補として自社をPRできるため、企業のブランディングや学生に対しての認知拡大のチャンスでもある。優秀な人材を獲得するには、またとない絶好の機会かもしれない。

(編集部注)本記事はミダスキャピタルの寄稿記事(筆者:加納美優子)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、掲載したものです。