例年、JRグループは12月の第3金曜日の14時頃、翌年3月に実施するダイヤ改正の概要を発表している。今回は新型コロナウイルスの影響で大幅な減収を余儀なくされ、収束の見通しが立っていない。また、在宅勤務、リモートワークの浸透もあり、2020年2月以前の状態に戻らない可能性もあることから、列車の運転本数を減らしたのが特徴だ。

 JR各社のニュースリリースを基に、注目ポイントをいくつか挙げてみよう。

●最終列車の繰り上げが目立つ

 今回のダイヤ改正は、在来線最終列車の繰り上げが目立つ。理由として、乗客の減少、コスト削減のほか、保守・点検作業の時間確保が挙げられる。日本の鉄道は発展とともに、列車の増発や高速化、安全対策の強化が進んだ。また、都市部を中心に、公道との平面交差が発生するところでは、高架化や地下化といった立体交差も進み、保守・点検作業も手間を要している。

 特に、立体交差化すると、輸送力増強や老朽化に伴う建て直しが困難である。年月が経過すると、常に老朽化と闘わなければならなくなる。また、地平以上に厳しい保守環境を強いられる。近年は都市部を中心に、ホームドアやロープ柵の設置が進み、点検作業の項目が増えた。

 仮に、新型コロナウイルスを木っ端みじんに蹴散らしたとしても、少子高齢化や人口減少の影響で、鉄道の利用客減少が避けられない。22年以降、最終列車がさらに繰り上げられ、保守・点検の作業時間が増えることも考えられる。

●最終列車の繰り上げがないJR東海

 JRグループで唯一、JR東海は在来線最終列車の繰り上げや運転本数削減の予定がない。

 同社に問い合わせたところ、太多線や名松線を除く各線区でダイヤ改正は行なうが、時刻修正や接続改善など、軽微なものになるそうだ。また、JR東日本首都圏やJR西日本関西圏とは異なり、在来線の最終列車は早い時刻だという。

 参考までに紹介すると、現行ダイヤの名古屋駅最終列車は、東海道本線上り普通電車大府行き、中央本線下りの普通電車高蔵寺行きで、ともに0時20分発。加えて、東海道本線静岡県内の最終列車は23時台の発車が多い。

 一方、JR東日本東京駅の最終列車は、山手線外回り1時03分発の各駅停車品川行き(21年1月20日から当面のあいだ、池袋ー東京ー品川間運休)。JR西日本大阪駅の最終列車(夜行列車を除く)は、大阪環状線外回り0時33分発の各駅停車京橋行きである。

●最終新幹線列車と在来線列車の接続を重視

 JR東海が在来線の最終列車を繰り上げないことに決めたもうひとつの理由は、「最終新幹線からの接続を持っている列車も多い」(JR東海談)こと。東海道本線のJR東海エリアで、東海道新幹線に接続するのは、熱海、三島、静岡、掛川、浜松、豊橋、三河安城、名古屋、米原の9駅。このうち、在来線の熱海はJR東日本管轄駅、米原はJR西日本管轄駅である。

 東海道新幹線で当該駅に到着する最終列車と、東海道本線の接続列車の現行ダイヤを調べたところ、三島は東海道本線上りの旅客列車が終了している。函南へ向かうには、東海道新幹線の別の列車で熱海へ向かうか、そのまま下車してタクシーで直行するしかない。

 豊橋は東海道本線上り最終列車(平日は普通電車、土休は快速の浜松行き)の発車時刻が23時11分なので、東海道新幹線下り豊橋発の最終列車となる「ひかり669号」名古屋行きでは間に合わず、手前の浜松で東海道本線下り23時34分発の普通電車豊橋行きに乗り換える必要がある。全て良好な接続ではないが、可能な限り乗客の利便性を確保している点は大いに評価できる。

 ただ、新型コロナウイルスの影響もあり、「引き続き、輸送動向を注視してまいります」の由。この状況が長引けば、22年春のダイヤ改正で見直しも考えられる。

●JR東日本仙台支社エリアでは東北本線のダイヤを見直し

 JR東日本で注目するのは、仙台支社エリアにおける東北本線のダイヤを見直すこと。一部時間帯の運転間隔を均等化することで分かりやすい発車時刻にした。また、日中時間帯は輸送障害発生時の影響範囲を小さくするため、運転区間の見直しを図る。これにより、ほかの線区や区間は、可能な限り通常運行を確保するという。ここでは東北本線をピックアップし、解説していこう。

 現行の日中ダイヤの東北本線黒磯ー福島間については、黒磯ー新白河間、新白河ー郡山間、郡山ー福島間で折り返し運転を行なっており、このパターンを福島ー仙台間にも広げる。ダイヤ改正後の同区間は、福島ー白石間、白石ー仙台間の折り返し運転に見直す。これに伴い、福島ー仙台間の快速「仙台シティラビット」が廃止となる。また、仙台空港鉄道直通(仙台―仙台空港間運転)の快速も3往復中2往復が普通電車に格下げとなる。

 快速縮小の背景として考えられるのは、利便性と速達性の両立ができていないことだ。快速「仙台シティラビット」の場合、福島ー仙台間79.0キロを最速1時間13分で結ぶ。しかし、日中の福島ー白石間の旅客列車は1時間に1本の運転で、なおかつ快速「仙台シティラビット」と普通電車の交互運転のため、貝田、越河(こすごう)は2時間に1本の割合でしか停車しない。沿線の住民や、このエリアに用事がある人にとっての利便性は高くない。

 加えて、白石で快速「仙台シティラビット」と当駅発着の普通電車と接続しているが、待ち時間が17〜31分と長い。さらに岩沼で常磐線からの普通電車、名取で仙台空港鉄道からの普通電車と相互接続していない。速達性の恩恵を受けるのは、快速停車駅の乗客のみなのだ。

 仙台空港鉄道直通の快速も同様で、名取で東北本線の普通電車と相互接続をしていない。快速を普通電車に格下げることで、南仙台、太子堂、長町に停車する列車を増やし、「利便性の向上」=「新型コロナウイルスの影響による減収を食い止める策」に打って出たのではないだろうか。

 参考までに、首都圏、中京圏、関西圏、福岡圏、札幌圏の場合、快速と各駅停車(もしくは普通電車)が同一ホームで相互接続することが多く、速達性と利便性の両立を図っている。これができなければ、快速が永遠に続かない。

●JR西日本は一部路線の日中時間帯で運転区間を見直す

 JR西日本の注目ポイントは、乗客の利用状況を勘案し、幹線の日中ダイヤでも運転区間の見直しを行なうことだ。特に顕著なのは、山陽本線の広島支社エリアだ。

 まず、主に土休の広島ー岩国間を運転する快速「シティライナー」の本数を大幅に削減する。土休の運転に限定しているのは、世界遺産で名高い宮島への観光客輸送を強化するためであろう。また、広島ー宮島口間は広島電鉄と並行する区間があることから、速達性をアピールし、デパートや行楽地などの輸送強化に充てたものと推察する。

 しかしながら、新型コロナウイルスの影響で、乗客が大幅に減った。そして、JR東日本の快速「仙台シティラビット」と同様、途中駅で普通電車に追いつき、追い越すこともない。利便性と速達性の両立が図れず、大ナタを振ったのだろう。

 また、日中の糸崎ー白市間は毎時片道2本から1本、大野浦ー岩国間は毎時片道3本から2本に減らす。

 前者は糸崎ー三原間を除き、山間部を走行するせいか、沿線人口が少ない。途中駅の利用客も少なく、乗客の多くは糸崎・三原ー広島間を乗り通す。

 後者は、宮島口以西の乗客が少なく、列車によってはガラガラ。JR西日本広島支社は12年3月17日のダイヤ改正で、広島ー岩国間の普通電車を毎時片道4本から3本に減らしており、今回のダイヤ改正でさらに減らす。前者も含め、新型コロナウイルスではなく、少子高齢化や人口減少の影響と考えられる。

 日本の鉄道は、環境の変化とともに発展し、人々の生活に潤いを与えてきた。しかし、少子高齢化や人口減少に加え、新型コロナウイルスの影響で、インバウンドの利用客が見込めない事態に陥っている。少なくとも新型コロナウイルスを根絶しない限り、22年以降のダイヤ改正も明るい話題が少ないだろう。

(岸田法眼)