これまで日本の金融サービスの多くは、自社でシステムを用意し、自社で商品開発を行い、自社で販売も行うという垂直統合型だった。ところが昨今、システムだけを提供するプレーヤーと開発や販売を行うプレーヤーに分かれる、水平分業体制が整いつつある。

 IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)のJapan Asset Managemet(東京都千代田区、以下JAM)は、スマートプラス(東京都千代田区)の新サービス「Digital Wealth Manager」を使い、手数料1%以下の資産運用サービス「JAM Wrap」を提供する予定だ。

 「圧倒的な最低手数料。ラップ口座の業界平均が2.3%といわれている中で、1%で提供する価格破壊をしたい」。JAMの堀江智生社長はそう話す。

 JAM Wrapは、顧客のお金を預かり、個々人の状況によって資産配分を調整。運用を行いつつ、定期的なアフターフォローを行う資産運用サービスだ。一般にラップ口座と呼ばれ、投資信託のような一律の運用とは違い、投資一任契約に基づき個別のヒアリングや運用を行うことが特徴だ。

 投資一任契約に基づく資産運用サービスは、昨今存在感を増してきているロボアドバイザーサービスも同様だ。ロボアドの多くは運用額の1%の手数料で運営している。ただし、「ロボアドとは違う。ロボアドは担当者がつかないので、アルゴリズムに従って運用されるだけ。担当がつき、サービスを提供していることがラップの価値」だと堀江氏は言う。

 専任の担当者が付くため、運営コストは高くなりがちだ。業界平均の手数料が2.3%というのは、こうした理由による。同様のサービスを提供しながら、いかにコストを抑えるか。それを可能にしたのが、スマートプラスの「Digital Wealth Manager」だった。

 「やるなら、手数料1%以下のラップサービスを作りたいと2年くらい前から思っていた。証券会社、運用会社、ロボアド会社含めて10社くらいと話して、1%だと向こうが採算が合わないと断られていた。スマートプラスと会って初めて話が進んだ」(堀江氏)

 これまでの資産運用サービスでは、顧客のアフターフォローは料金が発生しないボランティアになっていた。JAM Wrapでは、報告や相談などのアフターフォローを契約書に盛り込んでいくという。

●証券業務のSaaS化で低コスト実現

 このJAM Wrapを実現したシステムであるスマートプラスの「Digital Wealth Manager」は、同社のクラウド証券システム基盤「BaaS(Brokerage as a Service)」上の新サービスだ。BaaSは証券システムに必要な顧客管理、入出金、証券売買などの機能を、クラウド上のSaaS機能として提供するもの。クレディセゾンが、会員向けに積立投資可能なサービス「セゾンポケット」のシステムとして採用している。

 「Digital Wealth Manager」は、積立投資にも対応したロボアドバイザーサービスとして当初発表された。ただし、自動のアルゴリズム運用のほかに、担当者による運用にも対応する。「もともと想定ユースケースは、人が入って運用するという話と、非金融事業者が自動で運用する両方を考えていた」と、スマートプラスの親会社Finatextホールディングスの林良太社長は話す。

 従来の一社専用に作られたシステムとは違い、複数社で共通した業務フローをSaaSとして提供することでコストを下げた。

 「業務フローを共通化して、コストをぐっと下げる。早く安く柔軟にサービスを提供できる。そうした業務フローの設計が付加価値だ。1兆円、10兆円に耐えられるような業務フロー設計をしている」(林氏)

 証券会社や銀行などが自社専用に証券システムを作る時代から、裏側のシステムはスマートプラスのような専業プラットフォーム提供者が用意し、フロントの企業はUIや顧客接点に集中する時代が近づいてきている。特に、顧客基盤を持つ非金融事業者にとっては、この分業体制が魅力的だ。

 プラットフォームを提供するスタートアップも動き出してきた。既に実績のあるスマートプラスだけでなく、これまでロボアドサービスをメインとしてきたFOLIOも、金融機関向けのロボアド・ラップ運用の基盤システム「4RAP」を発表した。また、日本資産運用基盤もQUICKと組んで投資一任契約のプラットフォーム開発を進めている。

 「投資一任契約のプラットフォームはどんどん出てきたらいいと思う。倒すべきなのは、既存の重くて使いにくいシステム。今はマーケットを広げていくタイミングだ」と林氏。スマートプラスの基盤は、株式だけでなく保険にも対応しており、1つのアカウントで両方に対応したいというニーズにも応えていける。

 こうした水平分業の動きは、Embedded Finance(プラグイン金融)やModular Finance(モジュール金融)と呼ばれる。金融サービスには、顧客接点と、ライセンス、システム基盤の3つが必要だが、それらを分離して、サービス化する動きだ。金融機関のみならず、小売や交通、ヘルスケアなどの顧客接点を持つ非金融企業が、モジュールを組み込んだり、サービスをプラグインしたりといった形で金融サービスを提供できるようになる。

 フィンテックの中でも新しい流れで、国内でも2021年には多くの利用例が登場すると目されている。