アパレル市況は相変わらず厳しい。4月末時点の主要企業の既存店売上高は軒並み150%を超える勢いだったものの、緊急事態宣言下ベースの数字で、前々年と比較すると各社厳しい数字が並ぶ。これは一重に「まん延防止等重点措置」に絡んだ時短営業による影響が大きい。まん延防止措置どころか「緊急事態宣言」の対象エリアが全国に拡大しているレベルでは、さらに厳しい状況が予想される。これからワクチン接種の進捗によって、全国の感染者数が抑え込まれていくことに期待したい。

 まん延防止措置が適用されている神奈川県横浜市に、大型店がリニューアルオープンした。その店は「無印良品 港南台バーズ」。相鉄ホールディングス系列のショッピングセンター「港南台バーズ」のリニューアルに伴い、増床して入居した。売場面積は、2020年12月にオープンした「無印良品 東京有明」(東京都江東区)よりも広い約5117平方メートルで、増床前の約9倍に拡張。関東最大級の店舗となった。

 今回のリニューアルオープンの目玉は、何といっても食品売り場を充実させた点だ。大規模な食品フロアは関東初、全国でも「堺北花田」(大阪府堺市)、「京都山科」(京都市)に次ぐ3店舗目となる。港南台バーズでは、クイーンズ伊勢丹と協業して食品売り場を展開する。19年には国内初となる、ホテルを併設した「無印良品 銀座」(東京都中央区)をオープン。無印良品が掲げる2100年の社会を見据えた「感じの良いくらしと社会」へ向けた具現化への一歩といえよう。

 アパレル以外にも雑貨、ステーショナリー、インテリア、食品、化粧品、家、ホテルとカテゴリーにとらわれない拡張路線をひた走る同社。単なる商品調達にとどまらず、物作りへのこだわりも見せる。無印良品を運営する良品計画の21年8月期第2四半期決算から、同社の抱える課題点について指摘、解説したい。

●取り扱い数の増加で難しくなる「在庫管理」

 同社の総資産のうち、棚卸資産(在庫)が占める構成比を見てみると、前年比で8.6%の改善が見られている。在庫回転率は、前年同期は2.1%だったのに対し、今期は1.2%と大幅に低下している。在庫回転率は売上原価を総資産額で割った数なので、売上原価が減少すると棚卸資産の回転率も低くなる。それだけ調達した商品の回転率も鈍くなっている。また、棚卸資産の構成比の改善は売上原価の減少によるもので、商品在庫が超過したために大幅な仕入れ抑制をかけた結果と考えられる。

 同じ国際会計基準(IFRS)を採用しているユニクロを運営するファーストリテイリングと比較してみた。ファストリの棚卸資産構成比が14%で推移しているのに対して、良品計画は26%と明らかに高い。仕入抑制(生産調整)施策の効果が出ているという見方もできるが、生産から販売に至る商品コントロールマネジメントの難しさともとれる。取り扱い品種が増えるに従い、商品コントロールの複雑さも増していくのではないかと想像する。

 17年頃から無印良品は価格の見直し施策を行ってきた。当然、これは既存店への客数回復を狙ったもので、一定の効果はあったのだろう。しかし、価格を下げることによって今度は買い上げ点数を増やさなければならず、前年比で売上金額をプラスにしていくには、売上点数を増やす必要がある。すると生産計画枚数も増え、需要予測が外れれば当然「売れ残り在庫」となってしまう。

 半ば常態化し始めた同社の価格見直し施策「ずっと見直し、ずっと良い値」の中には、来シーズン以降も継続して販売する「持ち越し商品」なども多く含まれている。当然、定番商品という発想のもとオペレーションを組み立てるケースもあるだろう。2年以上持ち越す商品ならば、もっとそれなりの商品調達方法があってしかるべきで、結果として継続販売となった商品(または定番化?)も含まれているのではないか。

●「持ち越さない商品」はどうなるのか

 無印良品のアパレルラインに、「MUJI Labo」という大型店を中心に展開しているエッジの効いたラインがある。そのラインでは今季、ジェンダーの枠を超えたものづくりと称してユニセックスなデザインを多用している。

 その中でもデザインの統合と合わせ、サイズ統合にまで取り組んでいる点に注目したい。通常であればXS〜XXLと6サイズ取りそろえるところを、XXS〜XSとS〜M、L〜XLの3サイズに集約。現在の体にあまりフィットさせないオーバーサイジングのトレンドも、この施策には影響しているのだろう。

 靴と同様にアパレル商品のサイズ問題は在庫リスクを高める大きな要因。既製品である以上仕方ないことかもしれないが、購入する生活者も身に着ける商品だからこそ、色・サイズにこだわるが故、精度の高い需要予測が求められる。

 ユニクロの店内処分品コーナーをのぞいてみれば分かると思うが、圧倒的に小さいサイズか大きいサイズか、両端商品ばかりが売れ残っている。販売ロスは目に見えるものではないが、アパレルの需要予測はサイズが細かくなればなるほど予測の難しさが伴う。

 先に指摘した「持ち越し商品」や「定番化」ならばまだ良い方で、業界全体で廃棄処分される商品は一体どのくらいあるのだろうか。廃棄率の開示は、アパレル業界にとって長らくタブーとされている。ブランドイメージの棄損や、売り場鮮度の維持という理由からだ。しかし、本当の意味でのSDGsやESG経営を目指すならば、こうしたチェーンマネジメントを行うアパレルの負の部分について、はっきりと開示すべきではないかと思う。

 近年アパレル各社は、世界的な流れの中で「環境保全」や「人権への配慮」といった部分に力を入れ出しているが、業界全体として在庫管理や衣料品の廃棄量などが課題となっている。もはや「小手先だけで耳障りが良い」イメージ戦略で突き進んでいく時代ではないような気がする。

磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)