Sansanは5月27日から、クラウド請求書受領サービス「Bill One」を従業員100人以下の企業に無料で提供を開始した。大企業に比べて遅れているという中小企業のDXを促進することが狙いとし、「中小小規模事業者がDXに取り組むには十分。そんなオンラインの成功体験をまずは提供する」(寺田親弘社長)という。

 Bill Oneは請求書を受け取り、承認、会計ソフトに入力するという一連の経理業務をデジタル化するクラウドサービス。PDFなどで送られてきた請求書をアップロードすれば自動で取り込む機能のほか、Sansanが設けるセンター宛てに請求書を送ってもらえれば自動的にデータ化するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスも提供している。

 請求書受領サービスは、コロナ禍によるリモートワークの普及などで企業からのニーズが増加している。経費精算サービス大手のコンカーが2つ目の事業の柱として力を入れているほか、スタートアップのLayerXもAIを活用した請求書受領サービス「LayerXインボイス」を提供するなど、注目度が上がっている。

 Bill Oneは2020年5月にサービスを開始し、これまで月額10万円(月間請求書300件まで)でサービスを提供していた。しかし「規模の小さい企業では、コストに折り合わないという声もあった」(Bill One事業部の大西勝也事業部長)ことから、無料化に踏み切った。

 無料版では月間100枚までの請求書対応が行えるほか、過去の請求書については500件まで閲覧できる。これを超える場合は、有償プランへの移行を促す。同社の調査では、月間の請求書受領枚数の平均は96.1枚だとし、平均的な企業はカバーできる数値として設定した。

 また通常版にあるコンサルティングは含まれず、会計ソフトなどとのAPI連携は別途費用が発生する。

●オンライン請求書のデファクトスタンダード目指す

 Bill OneはSansanがクラウド名刺事業、イベントテック事業に次ぐ柱として力を注いでいるサービスだ。現時点での導入社数などは公開していないが、「名刺事業のときとはケタが違うくらい立ち上がりスピードが早い」(寺田氏)と、成長に期待を寄せる。1年後、22年5月末には5000社への導入を目標としており、無料化で加速させる。

 同社がBill Oneに期待するのは、シェア拡大によるデファクトスタンダード化だ。Bill One利用企業が増加すれば、請求書送付側の多くがBill Oneの受付センター宛てに送ることになる。そこから、請求書の受け取りだけではなく、送付もBill Oneで行える世界を目指す。

 「最終的には、ネットワーク上で請求書の送受信ができる世界が望ましい。請求書の送受信はBill oneを通じて行えばいいじゃないかという世界、デファクトスタンダードにしていきたい」(寺田氏)

 そのために、Bill One導入企業数だけでなく、請求書送付側としてBill Oneにかかわる企業も含めたネットワークへの参加企業を10万社にすることを目指す。

 一方で、現時点では主力事業であるクラウド名刺事業とのシナジーは特にない。基礎技術の横展開はあるが、個別の新規事業という扱いだ。ただし、Bill Oneに請求書の情報が集積してくると、それは名刺情報と同じように企業間のつながりの情報になってくると寺田氏は言う。

 「名刺と請求書はよく似ている。企業と企業のつながりの部分だ。Sansanの情報を見に行くときに、Bill Oneのデータを連携して、この会社と取引があったということも分かるようにしていきたい」(寺田氏)

 請求書の情報は、実際の取引情報のため、名刺よりもはるかに強い企業間のつながり情報となる。SansanのCMで有名なセリフに「それ、早く言ってよ〜」というものがあるが、まさに「請求書版、それ、早く言ってよ〜」を実現しようというのがBill Oneの目指すところだ。