コロナ禍で大きな打撃を受けている業界の一つに、スポーツジムが挙げられる。24時間営業の小型店舗の出店や大型スポーツイベントの開催効果もあって市場は拡大傾向にあったが、現在はコロナ禍による営業時間の短縮や休業、それに伴う会費免除や休退会者の増加といった課題に直面している。

 帝国データバンクによると、2020年度に発生したフィットネス(スポーツジム)事業者の倒産や廃業は累計で26件。19年度の23件を上回って過去10年で最多、過去20年間ではリーマンショック直後で需要が大きく後退した08年度の29件に迫る勢いとなった。

 20年度の市場規模は大幅な縮小が見込まれ、帝国データバンクは、事業者売上高ベースで5000億円台にとどまる見通しだとしている。過去最高となった19年度の約7100億円から3割超の減少となるほか、過去10年では初めてとなる市場縮小を余儀なくされる見通しだ。

 このような状況を打開しようと、フィットネスクラブ各社はオンラインに特化したサービスの展開に力を入れている。このうち、東急不動産グループの東急スポーツオアシス(東京都渋谷区)では、新しいオンライントレーニングサービス「weltag(ウェルタッグ)」を7月中旬から提供する。

●トレーナーから管理栄養士まで“チーム”で健康をサポート

 同社は、ウェルタッグについて「大手スポーツクラブ初の“チーム型”オンライントレーニングサービス」と説明する。これまでオンライントレーニングが課題としてきた点を改良し、継続的なサポート実現。これまでジムに行っていなかった新たな層への訴求も図る。

 従来のオンライントレーニングは、パーソナルトレーナーやヨガトレーナーなど、運動を中心としたトレーナーの指導が主だった。また、複数のトレーナーと契約した場合は顧客データを共有できず、トレーナーごとに指導方法が異なったり継続的なサポートができなかったりする課題もあった。

 チーム型とするウェルタッグでは、パーソルトレーナーのほかに、管理栄養士、臨床心理士、理学療法士、エステティシャンなども講師に加わり、さまざまな側面から健康をサポートするという。また、健康データはトレーナー間で共有し、担当するトレーナーが変わっても、個人にあわせたセッションを提供できる仕組みとした。

 コースは、セッションが月1回の「LITE」(4500円)、月2回の「STANDARD」(8500円)、月4回の「PREMIUM」(1万5400円)を用意した。セッションは1回あたり30分とし、希望する分野のトレーナーがオンラインで指導を行う。また、健康管理などの疑問に答えるメッセージ機能も搭載する。健康に関するコンテンツの配信や、同社が展開する運動動画配信サービスの「WEBGYM(ウェブジム)」と連動した取り組みも行う。このような継続的なサポートをすることで、運動の継続にもつながるとしている。

 提供時のトレーナー数は、オアシスで活動している約200人。22年末にはその規模を拡大し2000人を目指すという。

 デジタルヘルス事業部の野村誠太郎氏は「国内にはトレーナーのほかに、エステティシャンや管理栄養士など、健康に関する仕事に従事する人が約87万人いる。ウェルタッグは、その人々も広く参画できるプラットフォームを目指す」と意気込んだ。

●ジム運営会社から業態変革「ウェルビーイング総合カンパニー」へ

 同社は21年6月に、ジム運営会社から「ウェルビーイング総合カンパニー」へ業態変革すると発表した。具体的には、店舗型のフィットネスクラブ事業に加え「ホームフィットネス事業」「デジタルヘルス事業」、健康経営コンサルティングなどを手掛ける「BtoB/BtoG事業」の4事業を柱とする組織改編を実施。

 その背景には、やはり新型コロナウイルス感染拡大による生活様式の変化がある。同社もコロナ禍の影響を大きく受けていて、20年の売り上げは前年比約3割減となる約140億円(19年は約188億円)。また、20年4月〜21年3月末までの退会者は対前年の約1.4倍にのぼり、31%がその理由を「コロナウイルス懸念のため」としていた。

 その打開策として力を入れていたのが、自宅で気軽に運動を楽しめるサービスの展開だ。外出自粛や在宅勤務の普及により、自宅で運動するニーズが高まっていて、同社が展開するトレーニング用具やオンラインサービスの20年度の売り上げは約8億円と前年比で約2倍に伸長。また、ウェブジムのダウンロード数は前年比で約2倍、利用者数は66万人となった。

 業態変革を機に、これまでのフィットネスクラブ事業でも幅広い需要に対応する取り組みを進める。事前の手続きや準備をせずに、ジムに1回から通える「OASIS 1DAY PASSPORT」の販売を開始。また、おひとり様のニーズや密を避けられる「個ジム」など、従来の形式にとらわれない事業を展開する。

 BtoB/BtoG事業では、在宅勤務の定着により組織の健康管理やコミュニケーション活性化のため、運動を取り入れたいという企業や自治体の要請が増えていると話す。20年度の同社法人ページへのアクセス数は前年比で180%増加。これを踏まえ、同事業では運動メニューや生活習慣まで含めた総合的なメニューの提案を進めるとしている。

 スポーツクラブの利用者数は、日本の人口の約4%にあたる約500万人といわれている。一方で残り96%はこれまで獲得できていなかった層だ。東急スポーツオアシスでは、ウェルタッグの利用者を今後3年で66万人とすることを目指している。新たな事業とともに、これまで未開拓だった層の獲得を進める。

 コロナ禍で変わった生活様式にうまく対応し、ジムに行かない層をどこまで取り込めるか、各社の次の一手に注目が集まる。