「ギガたこ焼き器」や「せんべろメーカー」、「焼きペヤングメーカー」など、家電量販店やホームセンター、ディスカウントストアの店頭に並ぶ家電の中でも、ひときわ個性的な家電を展開しているのが、東大阪市に本拠地を置く新興の家電メーカーである、ライソンだ。

 取り扱う家電は100品目以上。ホットサンドメーカーから首掛けタイプのワイヤレススピーカー、さらにアウトドア用品まで、ジャンルは広い。当初は海外工場から売れ筋の家電を仕入れて売る商社モデルで展開していたが、「ライソン発の、世界初をつくる。」をビジョンに掲げ、近年はほかにはないオリジナルの個性派家電を数多く生み出している。

 新興の家電メーカーとしての戦略と、アイデアあふれるものづくりの指針について代表取締役の山俊介氏に話を聞いた。

●前身はゲームセンター向けおもちゃを扱う商社

 さまざまな家電を釣り扱うライソンはもともと、日本全国のゲームセンターに景品用のおもちゃを卸すピーナッツ・クラブの一つの部署として、家電を取り扱い始めたのが始まりだ。

 「ピーナッツ・クラブは、1958年に今の会長のお父様が吉名工作所を創業したのが始まりで、松下電器産業(現、パナソニック)との取り引きで主にスピーカーの部品などを作っていたそうです。ただ、90年代に入ってそれら部品の生産が徐々に中国へ移っていく中、先代がディスカウントストアを始めたのが、玩具やファンシー小物を扱うようになったきっかけです。その後、UFOキャッチャーなどのクレーンゲーム機が登場したことでゲームセンター業界が急成長したことから、業態はアミューズメント向けの卸売業に変化していきました」(山氏)

 おもちゃやぬいぐるみ、ファンシー雑貨などを仕入れ、ゲームセンターへ卸していくようになった。一部の商品を中国市場で仕入れることもあり、その流れの中で、ピーナッツ・クラブも家電を扱うようになっていった。

 初期に取り扱った家電の中で、現在も販売が続くロングセラーとなっているのが、家庭でもで簡単にわたあめが作れる製品だ。これは元々、米国市場向けに製造されていたものを、日本向けに電源周りやパッケージなどをローカライズして販売していった。

 「わたあめメーカーは4種類ぐらいありまして、実は一番売り上げを引っ張ってきた製品です。『あんなの売れるのですか?』ってよく聞かれますけどね(笑)」(山氏)

●オリジナル家電を増やして、価格競争の疲弊を防止

 その後ピーナッツ・クラブに、家電を取り扱う第二営業部が誕生し、取り扱うアイテム数も増えていく。しかしローカライズ中心のラインアップは、競合他社との差別化が難しい上、販売店から価格交渉もされやすいという問題があった。また中国からの仕入れ値が高騰するなかでは、頑張って安く仕入れても、別のメーカーがさらに安く売ってしまう。その繰り返しが続いた。

 そこで16年頃から、旧三洋電機で家電の設計をしていた人を採用するなど、オリジナル商品への意識を高めていく。そうして生まれた最初のオリジナル商品が「ギガたこ焼き器」だ。

 「ギガたこ焼き器の金型自体は数百万円ぐらいでしたから、それほど大きなチャレンジではありません。会長も『商品が大事だから、オリジナル商品を作る』という方針だったので、話はスムーズに進みました」(山氏)

 商品自体が大ヒットしたわけではありませんが、ぼちぼち売れていましたし、何よりも自分たちで作った初めての商品という自体が楽しかったのを覚えています。また、オリジナル商品を手掛け始めた17年は売り上げが9〜10億ぐらいでしたが、利益が10%以上増えたので、会社に残るお金が大きく変わったのを覚えています」(山氏)

●クラウドファンディングで、注目を集めた「焼きペヤングメーカー」

 18年、ピーナッツ・クラブの第二営業部だった家電事業部をライソンとして、別会社にする話が持ち上がる。このときライソンの社長として抜擢されたのが、第二営業部の立ち上げにも関わっていた山氏だ。

 山氏は、新卒でピーナッツ・クラブに入社後、第二営業部を経て、ゲームセンター向けにお菓子を販売する部門(現、株式会社ヨシナ)などに在籍していたが、再び家電に関わることとなる。

 「当時、他の部署からライソンへ行くと、ラジコンがあったり、ホットサンドメーカーがあったりと、正直、何の会社か分からない状態でした。そこで社長になるに当たり、ライソンの事業を家電に絞ると判断しました。

 その判断には、理由がいくつかあります。まず、電気を使わない製品は参入障壁が低いため他社に真似されてしまうこと、そしてもう1つが、品質面と安全面です。おもちゃの工場は、家電の工場と比べると品質の意識が圧倒的に低いことが多い。会社として製品の安全性や認証問題などを考えると、製造は品質に対する意識の高い工場にお願いすべきと考えました」(山氏)

 家電メーカーとして、新たな出発を図ることになったライソン。ピーナッツ・クラブから引き継いだ商品はあるものの、知名度はほぼゼロ。「何か目立つことをしなければいけない」と考えた山氏は、ふと「カップ焼きそばって焼いてないな」と思いついたと言う。

 幸運にも、カップ焼きそば「ペヤング」を製造するまるか食品とは、お菓子を取り扱う子会社を立ち上げたときに取り引きがあった。

 「たまたまですが、まるか食品の社長さんがうちの会社に来られるタイミングがあり、そこで『ペヤング専用のホットプレートを作っていいですか』と企画書をお見せしたところ、すぐにOKをいただけたのです」(山氏)

 まるか食品の了承を得たことで動き出した「焼きペヤングメーカー」は、元々販売していた小型ホットプレートを改良して開発したという。カップ焼きそばを美味しく焼けるようヒーターの温度を調節したり、フッ素コーティングを見直した。そうしてペヤング専用としてクラウドファンディングに挑戦したところ、目標額だった50万円の10倍を超える、500万円超の支援を集める大成功を収めた。

 「焼きペヤングメーカー」は有名になったもののライソンの名前はそれほど広がらなかったと自嘲する山氏だが、その後も積極的にオリジナル商品を開発し、クラウドファンディングを仕掛けている。

 例えば、19年に同じくクラウドファンディングで5000万円以上の支援を集めた焙煎機「ホームロースター RT-01」は、ポップコーンを作る家電を改良したものだ。一部の購入者がこれをコーヒー豆の焙煎に使っているという情報を得た山氏が、中国の工場と交渉し、2年間の開発期間を経て、完成させたという。

 「焙煎機の金型代金などのコストを、当社販売分のみ日本限定の専売契約にする条件で工場と折半にしました。つまり、工場が他の国で売る分は自由にできる、という仕組みにすることでコストダウンしています。こういった取り組みを取り入れることで、全商品ではありませんが、しっかりとした製品開発ができるようになってきました」(山氏)

 その他、クラウドファンディングで注目集めた最新製品が「超蜜やきいもトースター」だ。開発のきっかけは、17年以降毎年開催されているイベント「品川やきいもテラス」(2021年は中止)。開催地である品川シーズンテラスが東京支社と近いこともあり、18年に初めてそのイベントを訪れてみたところ、そこには行列ができ、多くは女性だったことからヒントを得た。

 「関西では焼き芋のイベントを見たことがなかったので、焼き芋がこんなに人気だとは知りませんでした。行列を見て『これは商品になるのではないか』と思いましたね。ただ、ホットサンドメーカーのような製品にすると、すである他社さんの製品のようになってしまうので、トースターにすることを考えました」(山氏)

 アイデアが決まると行動は早い。品川やきいもテラスで、行列ができていた「超蜜やきいもpukupuku」へ連絡して、製品の共同開発依頼を依頼した。そして細かく温度調節ができるトースターを用意し、美味しく焼ける設定を共同で開発した。

 「『焼きペヤングメーカー』を作ったときは、社内で開発して、まるか食品の方に食べてもらう作業を繰り返しましたが、『超蜜やきいもトースター』の開発では、美味しく焼ける温度設定はpukupukuさんに担当していただいたので、正直にいえば、私たちはなぜあんなにたくさんの蜜が出るように焼けるのか、よく分からないのです(笑)」(山氏)

●コロナ禍後は、海外マーケットも視野に

 現在、家電を100アイテム、その他アウトドア関連で20アイテムほどをラインアップしているライソン。現在、社員は25人で、家電の設計担当は社内に2人、そして外部協力スタッフが数人という体制だ。

 「弊社は基本的にアイデアありきの会社なので、将来的には、社員がそのアイデアで自分のブランドを持てる会社にしたいと思っています。現在はアウトドア商品も取り扱っていますが、これもアウトドアがものすごく好きな社員がいたので、『ブランド立ち上げてやってみないか』と言って始まりました」(山氏)

 短期的な目標は、企画・開発のスタッフを増やして、オリジナル商品を増やすことだという。さらに中長期的には、家電に限らないさまざまなジャンルへの挑戦と、海外市場への展開なども視野に入れている。5年以内には海外の展示会やトレードショーへの出展、そして米国のクラウドファンディングに出品することも考えているという。

 「中長期的に考えると、やはり海外市場でどう受け止められるかを見たいと考えています。海外の展示会へ出展した時に、どういう販売店が、どんな声を掛けてくれるかを知りたいところです。個人的には、焙煎機や焼き芋などは『海外でもいけるのではないか』と思っています」(山氏)

 既にシンガポールなどでは日本の甘い焼き芋が人気を集めているとの情報を得ており、そういった市場を狙っていきたいと考えているそうだ。

 ライソンの売り上げは、コロナ禍による巣ごもり需要の高まりもあり、20年4月決算では16億4000万円まで大きく伸びた。しかし、その反動で今年はやや厳しいと語る山氏。

 現在のライソンは、山氏自らがアイデアを出して、ものづくりを行うことが多い。コロナ禍で大ヒットした「せんべろメーカー」も、山氏のアイデアだ。しかし今後は、商品企画に関してもチーム化していきたいと語る。

 「大学生などのインターンシップと企画会議をすると、私には思いもよらないアイデアをあげてきます。私とは、全然違う青春時代過ごしていますからね。そういうアイデアを取り入れながら、今後も幅広くいろんな製品を作っていきたいですね」(山氏)

(コヤマタカヒロ)