アプリで呼び出すと、無人のタクシーがやってきて目的地まで乗せていってくれる——。こんな未来のモビリティの姿は、遠くはあるが着実に近づいてきているようだ。

 日産自動車がDeNAと組んで実証実験中のEasy Rideは、NTTドコモとも組んで9月21日から横浜みなとみらい地区で第3回目となる実証実験を行う。乗車人数200人規模で6週間の運用を予定しており、「国内では最大規模のリアルワールドでの実証実験だ」(日産 総合研究所所長の土井三浩常務執行役員)

 Easy Rideは2018年、19年と実証実験を行い、今回が3回目。1回目、2回目と乗降地点の安全確保や、自治体や警察などとの調整を行ってきた。3回目のポイントは、対応乗員の削減だ。これまで、不慮の事態が起きた際に手動で運転を行うセーフティドライバー、同乗のオペレータ、また伴走車がいたが、今回はセーフティドライバーのみの運用とする。NTTドコモが商用化済みのMaaSサービス「AI運行バス」を使って乗車を申し込み、乗り込んでからは自動運転で目的地まで運行する。

●自動運転レベル2でも実用化 課題は収益性

 今回の車両は自動運転でいうとレベル2に相当する。法規制的には、レベル2まではドライバーが主体で、レベル3以降はシステムが主体。またレベル4以降は、無人での運転を想定したものだ。

 レベル2ではあるが、高速道路ではなく一般道を走るため、大量のセンサーを搭載し、駐車車両や信号なども認識して自動的に運転する。「セーフティドライバーは乗っているが、それ以外はほぼ未来の無人のモビリティを体験できる」(土井氏)ところまで仕上がっている。

 最大の技術的な進化は、組み込みECUの採用だ。従来2キロ〜3キロワットの電力をCPUが消費していたが、これによって一桁消費電力を下げた。「こうしないとEVでは使えない。コンピュータを動かすのに電気を使っているとビジネスとして成り立たない」(土井氏)からだ。

 公道ならではの道路状況に対応するために、さまざまな工夫も凝らしている。例えば、2車線道路で左側に駐車車両が停まっていたら、それを避けなければいけないが、データを蓄積することで、「この道路はいつも駐車車両があるから、右車線を選ぼう」というような仕組みだ。左車線を走っているときに駐車車両があったら、遠方から判断して右車線に移る。後続車の前に入れるのか、後ろに入れるのかも瞬時に判断する。

 こうした自動運転タクシーで最も気になるのは、いつ実用化されるか? だろう。土井氏は、「ドライバーがいる状態、レベル2ならすでに実用化に近い」というが、課題はビジネスとして成り立つかどうかだ。現状は実証実験であり、料金は取っていない。料金が発生した場合に、いくらなら使ってもらえるのかを探るのも今回の実証実験の狙いだ。その上で、「まずドライバーがいて課金をすることを目指し、法規や需要を探って実用化に向けて進めていく」(土井氏)という。

●目指すのは無人運転のレベル4、5

 そもそもなぜ自動運転タクシーが必要とされているかといえば、特に地方部における公共交通網の衰退のためだ。例えば北海道では1987年から2021年までの34年間で、7路線、804キロの鉄道が廃線となった。日常の足はクルマが中心となっているが、高齢化率も高い。75歳以上の免許返納率は、都市部に比べて地方部では低く、認知の衰えがありながら仕方なく自家用車に乗っていることがうかがえる。

 公共交通網が成り立たない理由は、簡単にいうと「もうからない」からだ。この課題を解決するために、MaaSなどの発展が期待されているが、究極の姿はドライバーのいない無人タクシーになるだろう。

 「目指すのはレベル4、5の無人化。インフラが重い、固定費が重いモビリティは維持が難しい。自動車がいいのは、線路がいらなくてメンテナンスも大きくないこと。その中で、最大の費用はドライバーだ」(土井氏)

 自動運転タクシーの実現に向けては、技術の進歩だけでなく、どう収益性を高めるかがカギとなる。土井氏は、「無人よりも先に有人で技術を積み上げる。これから無人に向かって何をしなくてはいけないかはだいたい分かっているつもり」とし、技術面での展望には自信を見せる。

 一方で収益化については、自動運転だけでは解決にならない。無人になったからといって、高い運賃を取るわけにはいかないからだ。「MaaS化、人と物を一緒に運ぶなど、いろいろな手段を組み合わせて収益化していく」(土井氏)