塩野義製薬は、2022年度から希望社員に週休3日制を適用する。従業員に週休3日制の適用可否を選ばせる「選択的週休3日制」は、21年の6月に菅義偉総理によって公表された「骨太の方針」にも明記されている働き方改革の一環でもあり、塩野義製薬はいち早く政府の方針に呼応したかたちとなる。

 週休3日制といえば、ファーストリテイリングやZホールディングス、佐川急便等々がパイオニアという印象も強い。多様な働き方というテーマを実現する上で、週休3日制の導入は従業員や企業にとってどのようなメリットがあるのだろうか。

●実は3パターンある週休3日制

 一般的に、週休3日制のメリットは、(1)労働生産性の向上、(2)空いた1日で社会人大学院進学や副業といったスキルアップの機会創出、(3)育児や介護といった、仕事との両立が難しい状況下における労働者の負担軽減、退職抑制といったものがある。

 しかし、実は週休3日制には複数のパターンがあり、会社の風土に合わせて週休3日制の形態を使い分けていかなければメリットを最大限享受できない点に注意が必要だ。

●パターン(1):1日あたりの労働時間が増加し、収入が維持されるパターン

 まずは、給与が据え置きとなる代わりに、1日あたりの労働時間がおよそ2時間増加するタイプの週休3日制を検討してみよう。このパターンでは、収入水準を維持しつつ休日を増やすことができる。これは既に家庭やローンがあり、収入水準・生活水準の引き下げが難しい従業員が多く、また、企業が引き続き従業員のリソースを確保しておきたい場合に適している。

 なお、このパターンの週休3日制を取り入れる場合は、1日あたりの労働時間が10時間となるため、毎日2時間分の残業代支出がかさみ、企業にとってトータルの人件費支出が増加する恐れがある点に注意が必要だ。

 この種の不都合については、フレックス・タイム制や変形労働時間制を導入することで回避できる。佐川急便のセールスドライバーは週休3日制であるが、一定期間内での就労時間をあらかじめ設定する変形労働時間制を採っていることから、週休3日を導入しつつ、トータルの支出を一定に保つことができている。

 このパターンでは、「人件費の圧縮」などと安易な制度導入を考えている会社の場合、人件費は減らないばかりか、従業員の雇用形態によっては、週休3日制の導入でかえって出費が増加することにもなり兼ねない。

●パターン(2)休日が増加し、収入が減少するパターン

 週休3日制の一般的なイメージに最も近いのがこのパターンだろう。これは、休日が増える代わりに、収入も減ってしまう形態である。みずほフィナンシャルグループや、今回導入を決めた塩野義製薬でもこの形態の週休3日制が用いられる。

 このパターンでセットとなる施策が、副業の解禁やスキルアップの機会提供だ。要は、週休3日制で下がった収入を、それぞれの従業員にどこかで補ってもらうというものだ。会社にとっては研修にコストをかけずに従業員がスキルアップし、給与負担も軽減できるという一石二鳥な施策でもある点で好都合ともいえる。

 ただし、当の従業員側には不安も残る。労働日数を1日減らすという週休3日制は、とどのつまり、5000人に適用すれば実質的に1000人解雇するのと等しい効果が生まれる。さらに、出社日が減少しても仕事量が変わらず、密度の観点で「ただ給与の下がった週休2日制」となる可能性もある。出社日が減少することや従業員のリソースの20%が副業などの他に出ていくことでいわゆる“愛社精神”が疑われ、昇進に支障をきたすのではないかという疑念も制度利用の心理的ハードルになり得る。

 従業員と企業の間に信頼関係があればそのような穿(うが)った見方をされる可能性は低いものの、みずほFGのように早期退職や人員削減を掲げる中での収入が下がる週休3日制の導入については、そのようにみられても仕方ないのかもしれない。この場合、副業などで得た人脈やスキルが、自社に還元されるのではなく転職などのキャリアアップのためにライバル含む他社に流出する懸念もある。

 休日での副業解禁は、確かにイノベーション促進という観点で経営学上でも有効であるといわれている。しかし、それには前提として従業員の心理的安全性確保が重要だ。従って、このパターンの制度導入にあたっては、労働日数と収入が下がることによる従業員の不安払拭と、会社の目的を明確化して伝えることが重要なのだ。

●パターン(3)週の就労時間を縮小して、実質的に1日分時短するパターン

 これは厳密には週休3日制とはいえないものの、週のいずれかの労働時間を減らすことで週トータルでは1日分の労働時間を短縮するパターンである。この場合も労働時間は減少しているためパターン(2)と同様、収入が減少する可能性が高い。また、週休自体は2日のままであるため、原則毎日出退勤が発生するパターンでもある。

 社会人大学院などの夜間コースをより余裕がある状態で受けたい従業員や、収入よりも生活のゆとりなどに重きを置く従業員にとっては有効だが、まとまった時間の増加ではないため、活用シーンも限られてくる。企業にとってはより、支出の圧縮に重きを置いた施策となるが、業務外でまとまった活動ができない以上、イノベーションの観点でもどっちつかずの状況に陥るリスクもある。

●「骨太の方針」で22年は週休3日時代となるのか

 厚生労働省の令和2年就労条件総合調査によれば、完全週休2日制の目安となる年休129日までの労働者は全体の97.1%を占めていた。週休3日制以上の労働者が含まれる130日以上の年間休日を設定する企業は全体の2.9%にとどまっているなど、依然としてその割合は低い様子がうかがえる。

 しかし、今から5年前の平成28年調査結果で「130日以上」の企業割合が0.9%であったことからすれば、じわりと裾野が広がってきていることもまた事実だ。

 週休3日制には労働生産性を上げる効果も期待されている。日本における労働生産性はOECD加盟国37カ国中21位と底ばい基調から抜け出せていない。1時間あたりに生み出せる付加価値は47.9ドルと、米国の77ドルと比較して37.8%も格差が開いている。これは単純計算だが、米国が“週休4日”になってやっと日本の“週休2日”に等しくなるということだ。

 裏を返せば、週休3日制にしたとしても労働生産性が20%上昇すれば十分に穴埋めが可能であり、米国がそれをはるかに上回る労働生産性を生み出せていることからすれば、その伸び代も十分にあるということである。

 国内外の大手企業がアイコンとなり導入が進みつつある週休3日制であるが、今回紹介した3つのパターンの特徴・メリット・デメリットを踏まえておけば、会社の経営や従業員のキャリア・人生プランにプラスの効果が発生していくことだろう。

(古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士)