ビットコインが過熱している。

 2020年の年末から21年にかけてビットコイン価格が急騰、最近では10月20日に日本円で約760万円(約6万6000ドル)と最高値を更新した。これは米国でビットコインETFが10月19日に上場したことが大きなきっかけだ。

 過去にもビットコインETFの上場はたびたび話題に上ったものの、そのたびに却下されてきた歴史もあり、今回ようやく上場が承認されたことになる。

 米国初のビットコインETFであるプロシェアーズ・ビットコイン・ストラテジーETF(証券コード・BITO)は上場初日に売買代金が10億ドル近くに上り、ビットコインの、そしてビットコインETFへの注目度の高さを改めて示した。

 その後もプロシェアーズ社に続いて、ヴァンエック社、ヴァルキリー・インベストメント社とビットコインの先物ETFの上場が相次いだ。

 そもそもビットコインETFが米国で上場したことにどういう意味があるのか。さらに、ビットコインを含めた仮想通貨に大きく影響を与えた要素として、フェイスブックが「メタ」へと社名変更したことも挙げられる。

 今回はビットコインETFとフェイスブックの社名変更という2つの側面からなぜビットコインが価格上昇をしたのか、仮想通貨を専門とする税理士・会計士の立場から考えてみたい。

●ETFとはなにか?

 ビットコインETFの名前に含まれているETFとは「Exchange Traded Funds」のことで、日本語では上場投資信託と呼ぶ。ETFは日経平均株価やダウ平均、株以外にも資産運用で使われるさまざまな指数と連動するように運用される投資信託のことを指す。

 ETFは証券口座を開設すれば購入でき、さまざまな資産を株や投資信託と同様、手軽に投資できるのが特徴だ。

 ETFの特徴の一つに運用の透明性が高い点が挙げられる。例えば日経平均株価に連動するETFであれば、日経平均株価が上昇するとETFの価格も同様に上昇するためパフォーマンスを容易に把握できる。ETFには他にも多くのメリットが存在する。少額から投資できる点、多数の銘柄に投資するETFでは分散投資がしやすいくリスクヘッジにつながる点などがメリットとなる。

 通常の投資信託との違いとして、上場とある通り上場株と同じように取引時間中は売買によって刻一刻と価格が変動する。

 なお、ETFの税金と仮想通貨の税金は異なっているのも重要なポイントの1つとなる。ETFの税金は株式と同様となっており、申告分離課税の対象で税率は一律20%となっている。

 一方、仮想通貨の税率は雑所得の総合課税となっているため、利益が多ければ多いほど税率が高くなる仕組みになっており、最高税率は55%となっている。ビットコインETFもETFの一種であるため、仮に日本で投資できるようになったとすれば税率は20%となるだろう。

●仮想通貨の役割

 仮想通貨と聞くと、17年の価格急騰で発生した仮想通貨ブーム、そして仮想通貨の運用で資産が1億円を超えた「億り人」など、博打のようなイメージを持たれることも多い。ただ、実際にはギャンブルのために存在しているわけではなく、以下のような役割がある

1. 送金の手段となる

2. 商品の決済に使われる

3. 投資資産として投機に使われる

 仮想通貨は単なる投機的な商品ではなく「デジタルで使われるお金」の役割を持っている。ビックカメラをはじめとして、仮想通貨で身近な決済に使われるケースもある。また、インターネット上の取引でも仮想通貨による決済を検討しているという記事をよく見るようになった。

 実際には、PCゲームの販売を行っているSTEAMのように、ビットコインでの決済を導入したものの、手数料の高さやビットコインの価格乱高下によりサポートを終了するケースも見られるが、仮想通貨の役割を生かそうとする動きが見られている。

 中央アメリカに位置する国家、エルサルバドルは、ビットコインを法定通貨にすると報じられた際には大きな話題となった。エルサルバドルは自国通貨を廃止して米ドルを法定通貨として採用しており、9月からはビットコインと米ドルの2つが法定通貨という異例の体制となっている。

 ビットコインのような仮想通貨を法定通貨として扱うことは、法律や税金などの面で多くの課題があると思われるが、ビットコインを実社会に進出させようとする動きは他にも多数見られる。

●ビットコインETFとはなにか?

 ビットコインETFとは、ETFの投資先にビットコインが含まれるものを指す。すなわち、ビットコインの価格に連動する上場投資信託だ。これまではビットコインへ投資するには仮想通貨の取引所に口座を開設し、そこで売買をする必要があった。しかしビットコインETFの登場で証券会社の口座から投資が可能にる。

 これはただビットコインへの投資がしやすくなったことにとどまらず、巨額の年金資産などを運用する機関投資家がビットコインに投資をする可能性も示している。

 ビットコインはデジタルゴールドと呼ばれることもあるが、現在では金もまたETFを通じて証券会社で購入が可能となっており、実物の金を買って保有する手間やコストを考えれば投資のしやすさではETFが格段に優れている。ビットコインETFもビットコインを直接購入する場合と比べて同様のメリットがある。

 ETFは低コストかつ分散投資ができるというメリットがあるために、機関投資家のETF投資額は増加傾向にある。結果として、機関投資家が持つ巨額の運用資金がビットコインETFへ流れ込む可能性がある。

 なお、今回上場したビットコインETFはビットコイン先物ETFとなっている。そのため、正確には「ビットコインの先物取引の価格を用いる指標に連動する上場投資信託」という説明になる。先物取引とは、あらかじめ定められた期日(満期日)に特定の商品(今回であればビットコイン)をあらかじめ決められた価格で売買することを約束する取引を指す。

 この点について、米国のSEC(証券取引監視委員会)のゲンスラー委員長は、ビットコインの現物に投資をするETFではなく先物ETFが望ましいとコメントしている。

 なお、今回のビットコインETFの承認は、米国におけるものである。国内の証券取引所で取り扱う海外ETFは、金融庁への届出などが必要になっており、執筆現在(2021年11月8日)においては未承認のままとなっている。すなわち、日本の証券取引所においてビットコインETFは購入不可能となっている。

●ビットコインETFが承認された背景

 ビットコインETFが承認された背景の一つに、ビットコイン自体の安全性が認められ、社会的に認められた存在となりつつあることも示している。

 もちろん、相変わらずビットコインの変動は非常に高く、ビットコインの投資で大もうけする人がいる一方で大損する人も絶えない。そのため数年前までビットコインは、ネット上の架空のお金として賭博的な資産と見られていた。おそらく今もそのような見方を変えていない人は多いだろう。

 ETFとして認められるにはビットコインの安全性が担保される必要があった。今回のETF承認を受けて、ビットコインを始めとした仮想通貨全体の信頼性が一段階向上したことは事実であり、ETFを通じて機関投資家などがビットコインへの投資を始めるきっかけとなるだろう。

 ただし、いくらビットコインETFが承認されたからといって、ビットコイン自体の安全性がが確保されたと断言することはできない。

 そもそもビットコインはハッキングによるリスクや、取引所から流出するリスクを抱えている。日本でもコインチェックの流出事件が大きな話題になったように、過去に取引所からコインが流出したことが何度もあり、多くの投資家が損失を被っている。

 日本でビットコインの名前が知られるようになった最初のきっかけも、仮想通貨の取引所を運営していたマウントゴックスからビットコインが流出し、その後破綻した事件だ。

 ビットコインの流出事件が起これば直接的な被害はなくともその価格に大きな影響を与えることもある。コインチェックでネムという仮想通貨が流出した事件は、当時価格が急騰しビットコインバブルと呼ばれていた状況が崩壊するタイミングとほぼ一致しており、仮想通貨全体の価格にマイナスを与えた可能性も十分にある。

●フェイスブックが期待するメタバースの世界

 現在、ビットコインの投資を語る際に欠かせない話が旧フェイスブックの社名変更である。10月29日、社名を「メタ」に変更すると公表した。メタはメタバースのことを指している。これは社名を変更するくらいメタバースに期待していることを表しているといえる。

 そもそもメタバースとは何か。メタバースはインターネット上の仮想空間でオンライン上の交流の場を指している。

 フェイスブックは今までもオンライン上の交流の場だったが、主にテキストをメインとしていた。メタバースではさらに一歩進んでテキストや画像、音声のみならず、自身のアバターを作成し、メタバースの世界の中で多くの人と交流することが可能になる。

 例えば対面の会議のように、1つの会議室に多くのアバターが集まって発言したりメモをしたりといったことをメタバース上で行うことを想定している。

●メタバースとビットコイン

 実はこのメタバースとビットコインは相性が良いといわれている。メタバースの世界でビットコインなど仮想通貨が使われる可能性があるためだ。

 仮想通貨は商品の決済や送金の手段となり、国境も関係ないためインターネットでのやり取りに適している。仮想通貨が持つ特性とメタバースが想像する世界は親和性が高い。

 メタバースで使われるコインは仮想通貨になるのか、もしくは日本円やドルのような法定通貨になるのかは決まっていない。ただ、仮想通貨がメタバースの世界で使われる可能性があると期待している人が多いことは間違いない。

●仮想通貨は依然としてハイリスク

 ここまでビットコインを含めた仮想通貨について良い話ばかりを書いたが、リスクが極めて高い資産であることは間違いがない。

 米下院の公聴会でゲンスラーSEC委員長は「現在発行されている数千の仮想通貨が継続的でないことは歴史が示している。一部の仮想通貨は銀や金と競っているかもしれないが、大半は投機的な資産である」とコメントしている。

 日本でも仮想通貨を使った詐欺が非常に広く横行しており、消費者庁は暗号資産(仮想通貨)を使った詐欺には気を付けるようにと警告を出している。筆者も仮想通貨を使った詐欺の紹介を受けたことがあり、そういった詐欺の手法が横行していることを実感している。

 仮想通貨は価格の変動が激しいこともすでに説明した通りだ。17年の仮想通貨バブルからの推移をみる限り、仮想通貨の正しい価格を推測することは非常に難しく、投機的資産としての今後も乱高下する可能性がある。これは仮想通貨への評価がまだ定まっていないことも影響している。

 リスクと期待をはらんだビットコインが今後どのように利用されるのか、そして価格はどうなるいのか、今後も注目したい。

(税理士・公認会計士 村上裕一)

企画協力 シェアーズカフェ・オンライン